第2話 抱きしめあえる夜だから 12
*-From 1-
二人並んで食事をとる。
いつもの食堂の部屋の広いダイニングテーブルじゃなく自分たちの部屋のテーブルに道明寺が食事を準備させた。
それでもテーブルは8人掛けだけど。
「離れて食べると食べた気がしない」
対面より近いって並んで座って食事をとる。
今日はいったいどれだけくっついていたいのか。
触れ合ってない時間が見当たらない。
まとわりついて離れない道明寺がうれしくて・・・
うれしくて・・・
見つめられて・・・
そして照れる。
テーブルの上のブドウを一つ口に含む。
「俺にも」
ブドウの皮をとって道明寺の口元に近づけた。
道明寺の口元が開いて私の指ごとブドウを包む。
指が抜けないように手首をギュッとつかまれた。
道明寺の舌先が指に絡めて動いてる。
「うまい」
ようやく指を離して道明寺がニンマリと笑う。
「バカ・・・」
心臓の鼓動の響きを鎮めるためにつぶやいた。
「やっと、一息ついた」
お腹一杯だと思い切り手を伸ばして背伸びする。
「相変わらず色気より食いけだな」
道明寺が機嫌よく笑い声を上げる。
「そっちの方もお腹いっぱいだもの」
言ってる最中から道明寺の腕が伸びてきた。
「・・・もういっぱいだってばッ。満足してないなんて言わないでよね」
「言ったらどうする?」
甘いささやきが吐息のように耳たぶをかすめる。
「逃げる!」
道明寺の腕から抜け出てテーブルの反対側へ逃げ込んだ。
「おい!」
「こら!」
笑いながら道明寺が私を追う。
子供の遊びみたいな鬼ごっこ。
「逃げんなぁ!」
しびれを切らした道明寺がテーブルの上に乗って私の側に飛び降りる。
逃げた先がべットでお決まりのように倒れ込んだ。
「バカみたいだね」
「ガキみてぇなことさせやがって」
仰向けのまんま道明寺の胸が息を整えるように上下する。
天井を見つめてる私の唇からクスッと小さく笑いが漏れた。
「この俺様にバカなことさせるのお前くらいのもんだろうな」
「もともとバカじゃなかったけ?」
「バカじゃねぇ!」
怒った先から道明寺の顔がゆるみだす。
「この馬鹿さ加減も幸せだ」
道明寺の唇がそっと優しく私の唇を包んだ。
-From 2-
「ギャーーーーァ!時間ない!」
さっきからバタバタと走りまわるつくし。
スーツに腕を通しながら口にはロールパン突っ込んでいる。
どちらか一つにしたらどうなんだ。
優雅な朝食には程遠い今日の朝。
「あんたは重役出勤だからいいけどねッ」
最後はすねた目で睨まれた。
「別に休んでもいいぞ」
そしてまた睨まれる。
「大体ねぇッ、目覚めてすぐまた襲うようなこと止めてよね」
「お前、嫌がってなかったけど」
「うっ・・・」
膨らませた頬は真っ赤になって口ごもる。
近づけた唇に食べかけのパンを突っ込まれた。
しょうがねぇからそのままパンをかじって苦笑する。
「くれるならもっといいものくれ」
「帰ってからね」
バックの中になにやら必死で詰め込みながら手を止めずに出勤の準備を継続してる。
今は俺にかまう余裕はないらしい。
それに不満がないのは今の俺の満足度。
「俺も一緒に行くから」
連帯責任とかいうやつ?
何の責任か・・・・
つくしを抱いて目覚めた朝。
思い浮かぶのは夢中で俺にしがみつくあいつの顔。
離れていた時間をしっかり取り戻して充電できた。
二人一緒に車に乗り込む。
久しぶりの一緒の出勤。
会社につくまでのわずかな時間も愛しむようにつくしの手を握り指を絡める。
「なぁ」
「ん?」
「帰ったらなにくれるんだ?」
「パンよりいいものならいっぱいあるよ」
夕ご飯はなにかなぁなんて悪戯っぽい視線を向けられた。
朝から夕食思い浮かべる奴がどこにいるんだぁぁぁぁぁぁ。
「俺が欲しいものは他にあるんだけど」
知っているのに知らないふり。
気がついてるのに言葉にしないのは気がついてる。
だからそれを責めたくなる。
いじめるように唇を奪う。
「これ以上のもん欲しいんだけど」
離した唇は誘う様に色づいてまた唇を重ねた。
「道明寺」
「なんだ」
止まった車から出ようとする俺のスーツの裾をつくしがつかむ。
「唇・・・・ついてる」
「あっ?」
自分の唇を拭きあげた手の甲にピンクのルージュ。
「そのまま行かないでよね」
焦ったように取りだしたハンカチでつくしから唇を拭かれてた。
「お前も取れてるぞ、ルージュ」
「このままキスしたら移って元に戻らないか?」
実行しようとした俺をつくしの両腕が伸びてきて押しとどめる。
「バカ」
小さく動いた唇がしょうがなさそうにクスッと笑った。
ちょっとしたたわいない二人の時間書いてみました。
仕事出来るのかぁ~
拍手コメント返礼
マリエ様
>超ラブリーなんですけどぉー、
ちょっと楽しく甘あまで書いてみました。