進の姉貴夫妻観察日記 4(抱きしめあえる夜だら 番外編)

 *

「NYってどんなところですか?」

「僕、海外って行ったことなくって・・・」

先に風呂場から出てきた道明寺さんにどうでもいい事を聞いている僕。

「お風呂どうでした?」

なんて普通の質問することができずに引っ込めたのは姉貴と道明寺さんの邪な妄想が浮かんだせい。

「狭くて窮屈だ」

そんな返事をされただけで赤面してしまいそうでたまらない。

二人の入浴していた時間は短くて、たいしたことはしてなさそうなんだけど・・・

それでも、やっぱり気になる健全なる男子。

饒舌になって道明寺さんと会話が途切れないように喋っている僕は完全にいつもの僕を見失ってる。

しばらくして姉貴も風呂場から戻ってきた。

バスタオルで頭を覆う様にして激しく髪の毛を拭いている。

表情はタオルで隠れて見えない姉貴だが照れを隠してる感じは歪めない。

おふくろと一言二言やりとりした後、姉貴視線が道明寺さんに移る。

耳まで真っ赤なのはお風呂のせいなのか・・・

おふくろとのやりとりか・・・

どちらにしても道明寺さんが絡んでいることは間違いない。

「あー俺、眠い!」

「時差があるからなぁ~」

姉貴に見つめられてすぐに道明寺さんがあくびをする。

そこまで眠そうには見えないが必死に演技する道明寺さんはほほえましい。

姉貴と二人っきりになりたいのが見え見えでしょうがない。

道明寺さんて・・・

こんなに分かりやすい人だったっけ?

「あっ、そうだね、NYから帰って来たばかりだものね」

笑いをこらえて手助けする。

進!脅す様な目でにらむ姉貴も恐くなんかあるもんか。

気がつかないふりで「気の効かないお姉さんですいません」と姉貴にベタ惚れの義兄貴の味方をする。

男は男同士だ!

目に見えない連帯感て自然に生まれるものなんだ。

この充実感は姉貴をやり込められる達成感。

姉貴が嫌がってても本気じゃないのが解かるから強気で義兄貴に味方できる心地よさ。

いいもんだ。

「それじゃ、お先に失礼します」

僕の言葉に後押しされた様に道明寺さんが立ち上がる。

姉貴の腕をつかんで引き寄せた。

逃げないように片腕は姉貴の首に巻きつける用意周到さ。

姉貴が照れて突っぱねるのは了承済みの構えを見せている。

慣れてるんだと関心する僕は姉貴には未だにかなわない。

「まだ、髪が乾いてない」

「そんなのどうとでもなる」

どうとでもさせてやった方がいいぞ姉貴!

心の中で声援を送る。

僕は見ないふりしててあげるから。

「ほら、部屋まで案内しろ」

喜々とした表情の道明寺さんと対照的な困惑気味な姉貴の顔。

僕・・・

今日は居間で寝ようかな・・・

悶々として眠れなくなったら困る。

本気でそう思えてきた。