第2話 抱きしめあえる夜だから 13

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-From 1-

「代表・・・機嫌悪そうじゃないですか?」

俺の後方で西田に耳打ちする第二秘書。

「機嫌はいいはずだから心配ない」

しっかり俺の耳に届く西田の声。

気を入れて頬を引き締めないとどうにもならない機嫌のよさを隠す様に顔を作る。

喋るとぼろが出てしまいそうだから自然と受け答えも単語のぶっきらぼうなものになる。

周りから見ればいつもより気難しさを張り付けた顔になってるはずだ。

西田だけには通じないのは相変わらずなようで癪に触る。

「いい休みをとられた様で」

言った先からドンと机の上に書類の山を持ってきた。

「休日明けの軽い仕事じゃねえな」

「出張の分本社の仕事は残っています」

変わり映えのしないおもしろくない表情で紙に書いたまんまの様なセリフを返される。

「今日の予定は?」

書類に目を通しながらつぶやく。

「残念ながら、ご帰宅までつくし様に会う時間はございません」

先手を打たれていきなりチェックメートの状態。

「そんな予定は聞いてない」

冷静に装って不機嫌になっていく。

「そうですか?」

「最初に伝えておいた方がよろしいかと私は思ったのですが・・・」

「早く仕事を終わらせること肝心がです」

完全に目の前にニンジンぶら下げられた競走馬状態を作られている。

「10時からリゾート開発の報告会議が予定されています」

「本社に帰ってくるのは16時を予定しています」

最初からそう言わない西田の人の悪さ。

ここぞとばかりにチクリとやられるのは俺への嫌がらせか。

つくしを餌に遊んでいるのが最近特に目立って仕方ない。

「代表もようやく人間味が出て来てうれしく思います」って・・・

周りからアンドロイド西田と呼ばれる仕事人間には言われたくねえよな。

その西田もつくしと知り合って時々見せる緩んだ表情、滅多にねぇけど俺は知っている。

つくしと知り合って変わった自分を実感する。

俺じゃだけじゃなくて類にあきらに総二郎、西田もおふくろも影響を受けている。

すげ~女だろ!

俺の嫁さん!

自慢したいが誰にも見せたくない矛盾した感覚。

他の奴が惚れたら困ると本気で焦る。

あいつが俺以外の男に心を奪われるとは思ってねえけど。

「コホン」

西田の咳払いで緩みかけた頬を引き締め直した。

プルッとなる愛しいあいつからの携帯音。

俺が思い浮かべてたのが以心伝心で伝わった様な仲の良さ?

西田にこれ以上表情を見られないようにクルッと椅子をまわして背を向けた。

「なんだ」

緩んだ気持ちとは裏腹に低い声で対応。

「今日帰り遅くなりそうだから」

「なに!」

つくしの声に思わず椅子から立ち上がり素っ頓狂に声を上げる。

横でククっと小さく笑って顔を元に戻した西田が見えた。

 

-From 2-

「おはようございます」

明るい声がオフィス内に響く。

「元気いいわね。朝からご機嫌?」

クスクスと笑う玲子さんが意味深な笑いを向けられる。

「別にいつもと変わりませんよ」

言って頬が熱くなる。

「朝からいいもの見せてもらったんだけど?」

「な・なんですか?」

「一緒に出社してきたでしょう?口紅つけた代表と」

「見てたんですか?」

「偶然ね」

「唇がピンクの代表も艶ぽくていいわね」

玲子さんがウインクしてクスとまた笑う。

「ピンクがどうした?」

横から何気に甲斐さんが割って入る。

「甲斐さんには関係ありません!」

これ以上からかわれる対象を増やしたくないと私は必死となった。

「そう言えば代表は帰って来たんだよね?」

「もう!代表の話しは忘れてくれませんか」

「ごめん」

謝りながら「プッー」と甲斐さんが拭き出した。

「玲子さんみたいにつくしちゃんをからかう趣味は俺にはないから安心して」

代表にどうやって口紅が付いたかなんて興味ないからってニンマリされた。

全部ばれてるじゃないかぁぁぁぁぁ。

そして耳まで赤くなる。

「今日の夜、大丈夫かなと思って聞いただけなんだけど」

「夜ってなにかありましたっけ?」

「事務所のみんなも出るんだけど、弁護士連中の学習会があるんだ」

「都内の弁護士の顔合わせも兼ねている」

「つくしちゃんも連れて行きたいって所長が言っていたから」

「大丈夫だと思います」

言って道明寺の不機嫌な顔がチラッと浮かぶ。

今日の朝まであんだけ密着してたんだから少しぐらい大丈夫だよねって、なにを思い浮かべるのか。

仕事だからしょうがないと割り切りたいが割り切れない。

機嫌が悪くなるとか・・・

遠慮だとか・・・

後が怖いとか・・・

そんなことを気にしてる訳ではない。

・・・が・・・

一緒に帰れる時のあいつの子供みたいに無邪気に喜ぶ顔を見てるのが幸せなんだけど・・・

なんて思ってる私もあいつ以上に側に一緒にいたいのだろう。

一緒に帰れないことに落胆する気持ちをグッと閉じ込める。

短縮ボタンを押して道明寺の携帯を鳴らす。

呼び出し三回で響く不機嫌そうな声。

こんな時って誰か側にいるんだよね。

西田さんかな?

「今日帰り遅くなりそうだから」

「なに!」

思った通りの不機嫌そうに驚く声が携帯から聞こえてきた。

続きは抱きしめあえる夜だから 14

新ドラマの話題もちらほら。

日曜日のTBSでは旬君と真央ちゃんが~

イメージ変わりそうだから見るの我慢しようかな(^_^;)

拍手コメント返礼

リゲル様

>どんなドラマでも旬ちゃんは類に見えてしまい、真央ちゃんも同じく。松潤も他の人もです

ドラマの中で私も類、司につくし探しています。

でもやっぱりちがう~と思ってしまう瞬間分かっていてもがっくりすするんですよね(笑

でもドラマは見たいかな♪

レイラヒメ様

松潤も真央ちゃんも結構他の女優、男優さんとラブシーンやってますもんね。

見たくないと思っても目につくし(;o;)

小栗真央コンビは私もちょっと楽しみなんです。