第12話 ないしょ?ないしょ!ないしょ!? 8

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-From 1-

すっきりしねぇ。

取ってつけたような2日間の支社への出向。

わざわざ無理やり作った様な内容。

突然の視察なんて必要ある状況には思えない。

本社の仕事の方が重要に思える。

なにかほかに理由がある様に思えてならない。

「今日からは本社でお願いします」

いつもの変わらぬ無表情で西田が予定を読み上げる。

分単位のスケジュールにはもう慣れた。

だが・・・

このムシャクシャする気持ちはなんなんだ?

分かんねェーーーーーッ。

本社ビルのエントランス。

鼠色の作業着。

じっと見つめてあのおばはんか・・・とがっくりする。

西田の姪は見当たらない。

「西田さん~」

あのおばはんがすっ飛んで俺らの前を遮る。

俺の歩みを止めさせる奴がこの会社にいたとは驚いた。

普通みんな邪魔しねぇように道を開けるぞ!?

俺を無視しておばはんは西田に夢中で喋ってる西田の表情が困惑気味にゆがんだ。

「突然移動させるなんてひどいじゃないですか!」

俺からおばはんを離す体制に西田が動く。

「移動ってなんだ?」

すかさずおばはんに疑問を投げかけた。

「西田さんの姪御さん急に移動させたんですよ。せっかく気に入っていたのに」

西田に食ってかかる奴を俺以外に初めて見た。

おもしれぇ~

「代表も知ってるんでしょう?」

「なにを?」

「西田さんの姪御さんは花沢物産の御曹司と付き合ってるんだってね」

花沢物産の御曹司・・・

類のことか?

類と西田の姪・・・

そんなの聞いたこともねぇーーーッ。

あいつが誰かと付き合ってるなんて想像ができない。

牧野ならありえるかもしんねぇけど。

そんなことありえるはずはない。

どこがどうなってんだ?

「私は自分の息子の嫁にと頑張ったんだけどね」

「諦めて二人を応援することにしました」

「つくしちゃんは本当にいい子だから」

思わずおばはんと西田を交互に見つめる。

つくし・・・

つくしって牧野だよな?

そんでなんで類の名前まで出て来て、その二人が付き合ってるんだ!

西田もそれに絡んでる。

西田の姪がつくしって名で・・・

別人?

そんな言い訳通じねェぞ!西田!

SPを西田が視線で指図しておばはんを遠くへ引き離す。

遅せぇよッ。

「どういうことか説明してもらおうか?」

低めの声には怒の響き。

まずいぐらいに身体の震えが止まらない。

側にあったゴミ箱を蹴り返していた。

ガシャーッ

響く音に辺りがシーンと静まり返ってた。

 

-From 2-

「こんなところで話せる内容ではありません」

当たり前の様な表情で俺の怒りに動ずる気配は見せず西田がエレベーターに乗る様に示す。

周りがどう俺を見ようが知ったこっちゃねぇ。

ムシャクシャする気分は隠しようがなく俺を高揚させている。

「牧野はどこにいる?」

西田のネクタイごと引っ張って顔を近づけた。

「それもまとめてお話します」

俺の手を振りほどいた西田はそのままエレベーターに乗り込んだ。

仕方なく西田の後を追ってエレベーターに乗り込む。

無言のエレベーターは最上階を目指し上昇。

そのまま俺のオフィスへと向かった。

「話してもらおうか」

ドアを閉めた部屋には西田と二人っきり。

西田の反応を待つ。

「今回の事は申し訳ありません」

「すべて私の責任です」

お前の責任なんてものは聞いちゃいない。

問題は牧野がどうしてお前の姪になって俺に内緒でバイトして類の恋人になってるかということだ。

思いだしてまた気分が悪くなりそうだ。

「つくし様に会社を裏から見てもらおうと会長の御命令なのです」

余計なことを考えるおふくろだ。

西田が勝手に一人で画策する内容じゃないのは分かってた。

「それがなぜ俺にはナイショなんだ」

「坊ちゃんの婚約者とばれたら周りのつくし様に対する反応が代わりますから」

「ばれなきゃいいんだろうが」

「坊ちゃんの態度を見れば特別な関係であることはすぐにばれますよ」

「分かる訳ねえだろう」

普段の態度と充分違和感があります。

すごくやさしい表情が張り付いて、つくし様から視線を外さずにずっと追っていますから。

崩れた顔でいつものクールさはまったくなくなる。

自覚がないから困るんですと最後に付け加えた西田の牧野が側にいる時の俺の観察項目を序列された。

思い当って言葉に詰まる。

いったいどれだけ俺を観察すればそれだけのデーター集めるんだ。

バイトを内緒にしたのは最低限許そう。

だが牧野が自分以外の女に興味持つなとか言って俺を喜ばせたのはどうなんだ!

これはこれであいつをとっちめられそうだとそれで納得する。

突発的に類と牧野が付き合ってることに発展する内容は理解できない。

「類と牧野がなんで付き合ってることになってるんだ」

これだけは許せねェぞぇーーーッ!

「類様につくし様のご様子を見てくれるように頼んだのは坊ちゃんでは?」

牧野の様子が気になってしょうがなく類に連絡を入れたのは3日前。

確かに言われてみればそれはそうで・・・

「きっかけは坊ちゃんでは?」

とどめの様に西田が言い放つ。

全部責任は俺?

釈然としない。

だが・・・

西田に反論できそうな余地は見つけられそうにもない。

怒りを押し殺しても不機嫌さは収まらずそこから抜け出せそうもない。

「牧野を連れて来てくれ」

「責める様なことをなさらないと約束していただければ」

いったいお前は誰の秘書だ!

言いたい気持ちを押し殺し「分かった」と一応は頷いた。

つづきはないしょ?ないしょ!ないしょ!? 9

拍手コメント返礼

kobuta様

ばれちゃいました。もう少し引っ張ろうとも思ったのですが・・・

類の恋人がつくしじゃねぇ。 そりゃ暴れてますよね司君。

西田さんどうするのでしょう?

けいさ☆様

ごれんらくありがとうございます。

続きがすごく楽しみと言ってもらえると励みになりますね。

そしてまた、書いてしまう。

時々このペースで大丈夫かと思う時もあります。

旬くんと真央ちゃんのドラマ楽しみですね。

旬君の役の設定だと類には程遠い設定みたいですけど真央ちゃんはつくに見えそうな気が・・・

こう様

展開が好きだと言ってもらえてうれしいです。

問題はこの後ですよね。

はげ常務もまだですし。(ちゃんと的場常務という名前があるのに禿で定着)

もうちょっとひねって登場させる予定です。