第12話 ないしょ?ないしょ!ないしょ!? 7
*-From 1-
目に飛び込んだ喫茶店で花沢類とテーブルにつく。
つかんでた花沢類の腕をパッと離して赤面したまま向かい合っていた。
「久しぶりだね、二人っきりで会うの」
道明寺以外の男性と二人で会うなんてあいつの機嫌を損ねる以外の何物でもない。
それが花沢類でも・・・
あっ・・・
花沢類ならなおさら機嫌が悪くなるか。
損ねた機嫌を戻すのは泣きじゃくる赤ん坊をあやすより手がかかる。
キスだけじゃ済まなくなる要求度に欲求度。
最後は道明寺の好きなようにさせられ行きつくところまで流される。
なんだか最近このパターン出来上がってないか?
花沢類の前でなにを思い出しているのか急激に体温が上昇した。
「ごめんなさい、変なことに巻き混んじゃって・・・」
顔を隠す様に頭を下げる。
「うれしいよ、嘘でも牧野の恋人役なら」
「司はいい顔しないと思うけど」
さらっと何でもないように軽くつぶやきながらグサッと私の心に鋭く針を突き刺す最後の言葉。
「バイトの先輩に息子を紹介するとか言われて困ってたの」
加川さんとのやりとりを最速短で説明する。
「バイトの話しを聞くつもりで来たらその場面に出くわしたと言う訳か」
「・・・・・で、どうして道明寺の本社ビルでバイトしてるの?」
軽くほほ笑んだままのその顔を私に向ける花沢類。
気まずさを張り付けたままにことの成り行きをぼそぼそとしゃべる。
「道明寺のお母様に会社のことを裏から知るのは大切なことだからと言われて始まった花嫁修行の一環」
「道明寺には内緒って言われてるの」
言いながらハーアーと深いため息が出てしまった。
「司が知ったら邪魔しそうだね」
「司にはうまいように言っておくよ」
ククッと花沢類が小さく笑い声を立てる。
「実は少しばれそうなんだよね」
「たぶん疑ってるから花沢類に連絡したんだと思う」
少し驚きを見せる花沢類に西田さんの姪とのふれこみでのバイトのいきさつを語った。
その後柔らかい微笑を浮かべる花沢類。
もう完璧に笑われちゃってる。
「会ってもいない西田さんの姪を牧野と疑っている訳だ」
「司すごいな」
本気で感心してまた笑う。
「牧野もよく出来たね、その姪に関心持つのは許さないって言ってる訳でしょう」
「まあ・・・西田さんの指示だけど・・・」
「以前なら絶対そんなウソは司につけなかったと思うけど?」
だから悪者になった気がして落ち込んで苦しくって、そしてまた自分を責める。
ホントに嫌なんだからッ。
道明寺にする隠し事も・・・
嘘も・・・
会えないことも!
道明寺のお母さんの重圧が絡んでくるとどうも身動きが取れなくなる。
肩を落として落ち込んだ。
「ごめん、牧野を責めているつもりはないから」
「あ・・・私の方こそゴメン」
落ち込んでいる気持ちを隠す様に目の前のジュースを飲み込む。
「ところで恋人役いつまでやればいいのかな?」
「えっ?」
加川さんが諦めればいい訳だからこの作戦はあれでお終りだと思うのだけど・・・
もう必要ないはずだ。
「さっきのおばさんそこにいるんだけど」
花沢類が示した視線の先。
喫茶店の窓ガラスの向こう側で手を振りながら加川さんが立っていた。
-From 2-
待っていたように加川さんが私たちのテーブルへとドカドカと入り込む。
満員電車の人を押しのけて進んでくるような威力。
当り前の様に私と花沢類の真ん中の空いている席に腰を据えた。
「つくしちゃん面食いだったのね」
「でも若くていい男は気をつけなきゃね」
「遊ばれるのが落ちだよ」
花沢類をじっと見つめたまんま私を守るように加川さんに抱きしめられた。
花沢類を目の前によく言えるものだ。
私が花沢類に遊ばれてるというのが前提と言うのがなんともすごい。
これが道明寺ならテーブルがひっくり返っている気がする。
「俺は牧野と真剣に付き合ってますけど」
花沢類の声に「キャーッ」と卒倒しそうな黄色い声が外野から上がって思わず見渡してしまった。
F4のとか、花沢さん?なんて声もチラホラ上がってる。
花沢類が若者の多そうな店で注目を浴びないはずはない。
すっかり忘れてしまってた。
それに加え、若い男女の間に保護者乱入みたいな状況は注目をいやがうえにもひいている。
「もしかしてこの彼、芸能人?」
周りの雰囲気を察知して加川さんは前にもましてじっくりと花沢類をなめるように全身に視線を落とす。
「芸能人じゃないですよ」
それなりに有名ですけど・・・
「あっ思い出した!うちの会社のボンボンとよくいる人だよね」
「お金持ちの御曹司じゃない」
「知ってるんですか?」
「確か花沢物産の跡取りだよね?」
「あっ分かった!」
考え込んだ加川さんが突然パッと表情が明るくなって叫んだ。
「えっ?」
「今度のバイトと関係あるんでしょう?」
な・・・なにが?
ますます疑問符が増えて行く。
「花沢さんとうちの御曹司は友達な訳だ」
「ついでにつくしちゃんは西田さんの姪だろう?」
「道明寺のビルで働いてもらって大会社の内情を見せてみる。いわゆる花嫁のテストみたいなもんじゃないの?」
西田さんなら考えそうなことだって、加川さんにどんな評価をされてるんだ西田さん。
「そこまで話が進んでるんじゃうちの息子の出る幕はないね」
やっと諦めたか・・・
・・・と安心するには雲行きがあやしすぎる。
加川さんの考え当たらずとも遠からずの状況。
花沢類が道明寺じゃないことが大変な違いなのだけど。
「全面的に応援してやるよ」
なにをどう応援するのか分からないまま加川さんがドンと一つ自分の胸を叩いた。
「忙しくなるねぇ~」
・・・って・・・
なにが忙しくなるんだ!?
嫌な予感・・・
暗雲が立ち込める気配に身をひそめたいけどその場所が見つけられずに花沢類を見つめてた。
「このことは秘密ですから」
困惑気味の私の横から花沢類がにっこりと加川さんにほほ笑んだ。
「わかっているわよ。極秘なんでしょう?」
加川さんはポッと頬を染めてやけにうれしそうに花沢類に笑顔を返す。
息子を紹介すると言った時よりも喜々としてパワーがUPしている様に見えるのは気のせいだろうか。
西田さんに連絡したほうがよさそう?
そんな考えが頭をよぎった。
加川のおばさんいったいなにをやる気だかぁ~
それは次回のお楽しみ♪
そろそろ話の展開が見えてきたのでは?
禿の常務はどう絡む~
拍手コメント返礼
MANA様
初めまして拍手コメントありがとうございます。
ファイナルのその後は弁護士の設定のままお話を描いていますがなんとか無難にお話を今のところは作っています。
この先はどうなるのか~
ショボショボの目は大丈夫でしょうか?
これからもよろしくお願いいたいます。