玲子さんの婚活物語 16

今日は一段と蝉の声がうるさく聞こえてくる中でPCに向かっております。

日中は暑くなりそうです。

物語も熱くなりそうな予感!

がんばれ~ (誰に声援を送ってるのか分からない♪)

 *

「結婚相談所入会?」

玲子さんに頼まれて断り切れなかった。

「名前まで偽って?」

道明寺つくしと書けるわけがない。

「駿がいることは隠さなかったわけか」

条件的にはマイナスだと思った。

さっきから人の説明をオウムのように繰り返すのは西門さんと美作さん。

繰り返すたびに楽しそうな表情が増長しているのが解かる。

花沢類は黙って静かに聞いているだけ。

それがなんとなく私には気まずさを生む。

「そこにあのバイトの時知り合った加川ってやつが現れたわけか」

説明が一段落くしたあとでようやく花沢類が口を開く。

そして私の彼氏が花沢類だという誤解がそのままでそれがまた別な誤解を生んでしまった。

「俺は、牧野に子供産ませて責任も取らない最悪な男に勘違いされてるってこと?」

花沢類の表情からは不機嫌な色は全く感じられない。

いつでも柔かい雰囲気の中に包み込む居心地の良さを花沢類は生み出してくれる。

「ごめんなさい」

すまない気持ちはそのまま声になる。

「もちろん司は知らないよな?」

「知ってたらその結婚相談所もうなくなってるんじゃないか」

ばれたら私もどうなるかわからない。

私を感情のままに叱咤するのは司の特権みたいなものだ。

分かっていて玲子さんの口車に乗せられた私の単純さが今は恨めしい。

「それよりさ、駿の父親が類だって思ってるやつが現れたってだけで司ブチ切れるよな」

「本当に、駿が類の子だとか疑いだしたりして~」

・・・

ったく!

絶対この二人はそれを楽しみにしてる。

「まあ、それはないか・・・」

駿の父親譲りの天パーをクシャクシャにして美作さんがククッと笑う。

文句の一つでも言ってやろうと口を開きかけた瞬間に美作さんの緩んだ表情が固まった。

背後に感じる冷気。

後ろを振り向くのをためらう。

目の前の6つの視線は完全に私を通り越して1点に集中してるのが解かる。

震える様な気分に陥ったのは何年振りだろうか。

「あれは餌を咥えて引きずって来たライオンッて感じだな」

「完全に動脈を食いちぎってるよな」

小さく囁くような西門さんと美作さんの声がはっきりと私の耳に届く。

ドクンと飛び出しそうになった心臓を飲み込んでゆっくりと振り返った。

司の後ろに加川拓斗ッ!

考えてもなかったツーショット。

司が加川拓斗の首根っこを押さえこんで引きずってる様な錯覚。

「こいつから全部聞いた」

地獄の底から聞こえてくる冷淡な声。

「全部って・・・」

「いつから牧野つくしになった」

すごみのました声はゆっくりと私に接近する。

「花沢類!」

加川拓斗の声にみんながいっせいに振り返った。

「みんなそろってるから都合がいい」

いきなり花沢類に掴みかかる加川拓斗に怯む様子もなく花沢類はひょうひょうとしてる。

「子供が出来たら責任取るのが普通だろ」

まだ加川拓斗は駿を花沢類の子供と勘違いしてるのか?

私の目の前の司はこめかみをピクピクさせたまま私から加川拓斗と花沢類に視線を移した。

「俺なら喜んで責任取るけどね」

「おい、こら、類!」

「お前なに言ってるか分かってるのか」

司が今度は花沢類に食いついた。

その勢いで加川拓斗は数メートル後方に投げ出されて蚊帳の外の状況だ。

私の横で「ハーァ」と一息ついた美作さんが駿を抱いたまま二人の側に歩み寄る。

「どう見たって駿は司の子だ」

花沢類と司の間に駿を入れるように美作さんが位置をとる。

「牧野が駿のパパになってって頼んだら俺らみんな立候補するよな」

西門さんが駿をあやしながら軽いノリでにっこりと笑みを作る。

「そんな必要ねえだろうがぁーーーーー」

相変わらずの不機嫌さを示してるのは司だけだ。

「・・・えっ、どうなってるの?」

困惑気味に加川拓斗が呆けた顔で私を見つめてた。