第12話 ないしょ?ないしょ!ないしょ!? 9
*-From1 -
経理課の次は広報部そんで秘書課か・・・
3階から6階次は最上階って結構ハード。
階段じゃないだけましだけど。
秘書課はやばくないか?
今日から道明寺は本社出勤のはずだしね。
念のため西田さんに連絡を入れてから最上階は行くとしよう。
小包を抱えて広報部のドアをたたく。
「重そうだねッ」
横からひょいと小包を横取りされた感じ。
ニコッとほほ笑むのはただいま社員人気一番と言われてる男性社員。
「仕事を取らないでください」
不機嫌に小包を取り戻した。
「そんなにしかめっ面しなくてもいいでしょう、かわいい顔が台無しだ」
結構女性を口説いている場面を目撃してる。
自分がもてると自覚してる男ほどうぬぼれが強い。
誰もが愛想よく相手すると思ったら大間違いだと心の中で舌を出す。
失礼しますとさっさと小包を置いてうぬぼれ過剰男は無視して広報課を後にした。
次は秘書課・・・
西田さんに連絡しなくっちゃ。
携帯を片手に持ってボタンを押そうとした瞬間「つくしちゃん」と肩をたたかれた。
「探したよ、連絡くれないし仕事変わってるし」
声をかけてきたのは的場常務。
「お久しぶりです」
会ったのはおとといの昼間だから久しぶりって言う訳でもないけれど少しおかしかったか?
的場常務も考えは同じようでククと笑ってる。
「掃除婦はやめたの?」
「いろいろ体験させてもらってるんで今はメッセンジャーをやってます」
この仕事もいつまで安全なのだろうかと胸の奥でため息が一つ。
コンテを押しながら長い廊下を常務と並んで歩く。
やけに目を引くコンビ。
すれ違う女性職員の視線に聞こえないよう小さな声での内緒話。
ここ数日で的場常務の好感度はなぜかUPしている。
自信がみなぎってカッコイイという声がちらほら聞こえてた。
今では禿もチャームポイント、個性で別にかまわなくなってきている評価。
市民権を得たようだ。
ここの御曹司は婚約者がいるし的場常務は独り者。
方向転換した玉の輿狙いの話が私の耳にも入って来てた。
社内の噂を収集するには掃除婦とメッセンジャーって同じ威力がありそうだ。
あんまり目立ちたくないのにッ!
今の状況では道明寺と歩くより視線を受ける可能性が大。
噂になったら困る!
そんなうわさが道明寺の耳にまで届くとは思えないけどマイナス要素は少しでも少ないに限るはず。
頭を下げて上目使いでコンテを押す歩幅を大きくする。
これで少しは顔がばれないかな?
無駄な抵抗にも思える対応。
「あの・・・注目浴びてるんで離れてもらえませんか?」
「えっ?」
「僕は構わないけど」
的場常務がニコリとほほ笑む。
私が困るんです!
目立たず2週間を過ごしたい想いとは正反対に動いてる。
これって・・・
高校時代目立たないように、F4と接点を持たないように生活しようとしてとんでもない方向に行ってしまった状況と似てないか?
「私仕事が残ってるんで失礼します!」
「次はどこに行くの?」
的場常務の指が私の腕をしっかりとつかんで放さなかった。
「最上階の秘書課ですけど・・・」
「良かった。僕の行くところとも最上階」
そう言ってほほ笑む的場常務をマジマジと硬直気味に眺めてしまってた。
-From 2 -
二人で乗り込むエレベーター。
行き先は最上階。
暗雲突き抜けて登っていくような感覚。
西田さんにも連絡をとることができず不安は募る。
数分の密室空間。
・・・・・間が持たない。
私から話しかける言葉も浮かばず、ただ黙って運ぶ書類の束を見つめてた。
「つくしちゃんは玉の輿ってどう思う?」
偶然思いついた様な雰囲気に的場常務がつぶやいた。
玉の輿・・・って・・・
女性が金持ちの男性と結婚する事で、自分も裕福な立場になる事・・・。
あの玉の輿だよな。
ここで的場常務の口から玉の輿って出てくるのは意外としか思えない。
どういう意図だと考え込むこと数十秒。
私も散々道明寺とのことでは玉の輿って言われてきている。
平成のシンデレラなんて書いた記事が躍ったことも・・・あった。
私と道明寺のことは的場常務は知らないはずだから、気になる女性でも出来たのだろうかと考えをまとめた。
「大変そうだけど頑張るかな」
「その人が本当に好きでついていきたいと思ったら玉の輿って言われても我慢できると思います」
道明寺の事を考えながら口にする。
あいつを前にしたら絶対言えないと思いながら。
「常務、好きな人でも出来たんですか?」
「えっ?」
「いや玉の輿なんて聞くから、常務の恋人になるって人もやっぱり玉の輿でしょう?」
驚いた様に目を見開いた常務が次の瞬間「プッー」と噴き出す様に笑った。
エレベーターは最上階に着いたようでスッーと扉が開く。
「あっ」
コンテを押して外へ飛び出す。
的場常務はまだ笑いが収まっていなかった。
「つくしちゃんて思った以上に鈍感だ」
「俺、つくしちゃんを玉の輿にのせたいのだけど」
「こんなこと言ったら失礼かな?」
そしてまた、的場常務はクスと笑った。
玉の輿にのせる?
のせたい・・・って・・・私!
思わず後ずさりして壁に張り付く。
その身体の横に的場常務の両腕が伸びて来て壁に手のひら吸着して挟まれた格好。
目の前には常務の顔が私を見下ろしている。
どうみても迫られている。
「常務・・・ここ会社ですから・・・」
「返事はいつでもいいから考えておいて」
「考えなくても答えは決まってます!」
間髪いれず叫んでた。
断るに決まってるでしょう!
ゴクリと唾を飲み込んでフーと深呼吸。
「私・・・ 」
「なにしてる!」
次の言葉を言う前に地獄の底から聞こえる様な怒の響きがこもった低い声。
普段より数倍冷酷さが交ってないか・・・・・
声の方向を確かめられないのは防衛本能?
目をつぶって覚悟を決めてそっとまぶたを開ける。
半開きしか開けない私の視線の先に負のオーラ全開の道明寺。
最悪だぁぁぁぁぁぁぁ。
あ~あ見つかった。
最悪な状況だぁ。
類だけじゃなく別な男にもくどかれてるとこ見られたら、西田さんにもどうにもなんないかも♪
拍手御礼
nanako様
佳境です♪
そろそろと~
この後もまだmだ問題は山積みで頼りはやはり西田さんかな(^_^;)
banana2855様
応援ありがとうございます。