第13話 愛してると言わせたい 2
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気がつくとそこは病院で・・・
トラックが私の乗っていた車にぶつかって救急車で運ばれたらしい。
トラックとぶつかってそのくらいの怪我ですんだのはさすがは外車の高級車でっすねって看護師さんがほほ笑んだ。
ベットの横で「事故って聞いて生きた心地がしなかったわ」とママが涙ぐむ。
「心配掛けてごめん」と謝った。
高級外車と私。
猫に小判みたいな組み合わせ。
なんでそんな車に乗っていたんだ?
記憶がないんだけど・・・
どこに行くつもりだったのか、大事なことをすっぽりと忘れてる。
思い出そうとしても霧の中に迷い込んだみたいにおぼろげな闇が広がっている。
高級車に無理やり押し込められて道明寺のバカ息子に知らないうちに1億かけられたとか着飾れたことあったよな?
何か関係あるとか?
いやなことを思い出したと頭をブルった。
「ママ・・・」
「なに?」
わけを聞こうとしたところで「食事です」の声。
ギュッとおなかかが鳴ってママにクスッと笑われた。
まあ・・・
後でいいかと早速、目の前の食事に箸を動かした。
バタン!ドン!
ノックもなしに飛び込んだ人影に箸を口で噛んだまんま固まった。
・・・なんで・・・
なんで!
こいつがいるのよ!
「お前、丈夫じゃねぇか。心配させやがって」
息を切らせて途切れとぎれに言葉をつぶやく。
何をあわてているのか・・・。
心配!
なんであんたが心配するんだ?
どちらかといえばけがをさせたのはあんたでその具合を確認しに来たというのならわかるけど。
「左手の骨折と少しの打撲程度で済みました」
心配掛けてすみませんと頭をさげるママ。
「ちょっと出てきます」
何を考えてるんだーーーーッ。
ここにきて玉の輿狙いじゃないよね。
それがあり得そうでグッと唇をかんだ。
「俺があんまりいい男だから見とれて言葉忘れたか?それとも頭打ったか?」
何を言い出してるのか傲慢男。
「冗談」って言ったら間の抜けた顔になった。
「なんであんたがここにいるのよ」
私の言葉に返事を詰まらせ考え込むそぶり。
考え込むことなのだろうか。
私のほうが考えがまとまらないぞッ!
「トントン」
病室に響くノックの音。
ドアを開けて入ってきたのは花沢類。
「事故のこと聞いてびっくりしたよ。大丈夫なの?」
「元気そうで安心した」
火照り出す頬が熱い。
道明寺が横にいるのはどうでもいい気分。
花沢類の温かく包み込むような雰囲気はやっぱり落ち着ける。
好きだなぁ。
心に思ってまた身体が熱くなる。
「・・・お前、類と何かあったのか?」
突然!突発的に何を言い出すのか失礼な奴!
「な・・・な・・なんもあるわけないじゃない」
どもって焦ってまた赤くなる。
「類!てめぇ!牧野に何かしたか!」
花沢類の襟元をつかむ道明寺に大声を上げていた。
「あんたのその乱暴なとこ大っ嫌い!」
また赤札貼られても後悔なんかするものか!
にらんだ先のその先で道明寺の顔が曇る。
なんか悪いこと言ったか?
道明寺の顔が気になってそれ以上の言葉を発することができなくなった。
「牧野、大丈夫?」
「大丈夫・・・明日は退院できそうだし、学校行かなきゃね」
「講義は休みって言ってなかった?」
「えっ?講義って・・・明日からテストだよ」
「テスト受けないと3年にあがれなくなる」
「3年・・・」
「お前4年だぞ」
きょとんとした顔で道明寺を見つめた。
「ぎゃははは、なんで高校に4年があるの?」
道明寺と花沢類が二人顔を見合わせてその視線を私に向ける。
「牧野、今いくつ?」
不安そうな花沢類の表情。
「16才だけど・・・」
年齢をいまさら聞かれる関係ではないと思うのだけど・・・
「嘘だろう・・・」
茫然とした表情のままの道明寺に凝視されていた。
-From 2 -
「よく聞け牧野。お前は高校なんてとっくに卒業してる」
「英徳大学の法学部に通う大学4年生だ」
俺の説明にも眉ひとつ動かさず牧野はにらみつけたまんま。
「・・・本当?」
確認したのが俺じゃなく類ってところは気に食わない。
「事故で記憶がなくなったみたいだね」
「そのうち思い出すよ」
やさしく牧野を慰める類。
その役目俺だろうッ!
俺を拒絶する牧野の冷たいまなざしで、牧野に近づくことも類を追い払うことも躊躇させる。
「それじゃ一番楽しい青春覚えてない状態なの?」
「楽しいかどうかは別にしていい恋愛してると俺は思うけど」
類やっぱお前はいいことを言う。
その相手は俺だからな!
期待を膨らませ牧野を見つめる俺。
牧野が視線を絡めてポッとなった。
牧野が見詰めている相手は類。
何勘違いしてんだ!
お前の相手は類じゃねっ!
「牧野お前の彼氏は俺だ!」
「高校の時から付き合って来年お前が卒業したら結婚っ・ブッ!」
言い終わらないうちに牧野の投げた枕が顔に命中。
「信じないから!意地悪男!」
完全に病室にいられる状態じゃなくなって類とともに追い出された。
俺だけでなく類も追い出されたのは何となく気分がいい。
「牧野は大丈夫なのか?」
「お前らか・・・」
あきらと総二郎、さすがに二人とも心配そうな顔では駆け付けてくれたようだ。
今の俺にはこいつらに話す気にもなれない。
「今行かねぇほうがいいぞ牧野気が立ってから」
「司何かしたのか?」
「俺は何もしちゃいねぇよ!」
そばにあったゴミ箱に蹴りを一発入れた。
「まあまあ」肩を寄せて話を聞き出す体制を作るあきらと総二郎。
連れだって話せる場所へと変えた。
「えっ!なに?牧野は自分が16歳だと思ってて司とのこと全く覚えてないんだ?」
類の説明を不機嫌なまま聞いていた。
「それより完全に嫌われてるって感じかな」
類の言葉にさすがの二人も言葉を失ったようだ。
なにより牧野は類に好意を持っている。
牧野の初恋が類だったことは承知しているが、目の前で惚れた女が違う男に熱い視線を送っているのは嫉妬をはるかに通り越して苛立っている。
「以前、司が記憶失ったことあったろう?」
「あんときは牧野のこと完全に忘れて結構辛そうだったよな牧野」
「案外その時の仕返しとかじゃぁ・・・」
俺のにらみで総二郎が言葉を絶った。
「忘れられるのと嫌われるのとどっちが楽なんだろうね」
ひとりごとみたいにつぶやく類。
どっちも楽なわけねぇだろう!
「牧野の気持ち体験できるいい機会じゃないの」
3人とも俺に協力する気があるのかないのか怪しい気配。
「また牧野を惚れさせればいいだけだろう」
「そうだよなぁ」
総二郎とあきらがささやいてにんまりしやがった。
「「自信ないのかぁ」」
二人声をそろえて完全に俺をあおってやがる。
「惚れ直させてやるよッ」
完全にこいつらに踊らされていた。
でもどうやってあいつに惚れられたんだッけ?
俺が惚れてるって言いきっていたのは覚えてるんだど。
普通の付き合いしないまま別れて俺がNYに旅立って・・・
牧野と別れると決心して、色々あったけど何とかあいつの卒業式でプロポ-ズして今に至る。
簡単すぎる俺らの歴史。
来年の春を迎えれば結ばれる運命共同体のはずだよなッ。
輝かしい未来!
今まで積み上げたものが積み木のように崩れさる。
また積み上げるしかない。
最初の頃って、まともな付き合いしてねぇぞ!
16才の記憶しか残ってない牧野と付き合えるのか?
口説けるのか?
その前にどう口説く?
いまさら出来ねーーーーぇ!
続きは 愛してると言わせたい3で
記憶喪失というよりもつくしは自分が高校2年生と思っている設定にしてみました。
そのうちF4も大人になっているということを気がついて・・・
なんてことも考えております。
つくしだけ見た目は全然変わってない!
ありそうなんだけどな(^_^;)
結局毎日更新してしまってる・・・
この辺で一休み。
息切れが・・・
拍手コメント返礼
ささ様
今回のお話は類が重要な役どころになると思います。
つかつく推奨派の方に今回はるいつくでも!と思ってもらえるとこのお話は成功!という感じなのです。
心がゆらいじゃうお話で最後まで行けるといいのですが(^_^;)
ここからが至難~