HAPPY LIFE 7
*-From 1-
つくしのお腹も随分と張り出してきた。
この中に赤ん坊がいるんだと納得できる大きさ。
「これでも小さい方なんだから」と優しい表情でつくしがほほ笑む。
時折愛おしそうにお腹の中の赤ん坊に話しかけるつくしは一人だけ先に母親の表情を作りだす。
こんなに満たされた表情のこいつを見ると自然に俺の頬も緩む。
まあ・・・
少しだけ俺に対するつくしの愛情不足は感じるが我慢しよう。
明日から産休にはいるつくしと一緒に出社する。
お腹の目立つつくしとのツーショットはなかなか目立つらしい。
「かわいい赤ちゃん生んでください」
行きかう社員が笑顔で声をかける。
かわいいに決まってるだろう俺の子だぞ!
そう思いながら緩む俺の頬。
今日はいつもより頻繁に声をかけられる。
それは全部つくしとお腹の子供に向けられた優しい言葉。
「なぜか社員のみんな私が今日までだって知ってるみたい」
「なんでだろう?」
笑顔の下で不思議そうに俺に顔を向ける。
俺が知るわけねぇだろう。
「次会うときは赤ちゃん連れてきてください」
つくしと変わらない年齢の女子社員を捕まえた。
「なあ、みんなつくしが明日から休みに入ること知ってるみたいだが?」
「ハイ!たぶん社員みんな知ってるいると・・・」
「なんでだ?」
「あの・・・言っても大丈夫ですか?」
困ったような表情を作ってつくしと俺の顔を交互に眺める。
「私も知りたい」
わくわく感を顔に張り付けたまんまのつくしの声。
そこまで好奇心丸出しにする必要あるのかよ。
「奥さまが会社に来なくなると見られなくなるねってみんな残念がっているんです」
「何が?」
「社員食堂で二人分の食事を持ってうろうろする代表」
「奥さんのコップにお茶をついでやる代表」
「仕事では見られない優しい表情が見られるって人気が一番あるんです」
そんな人気いらねぇッ。
社員食堂でつくしの世話をやくのが日課みたいになってたこの2カ月を思い浮かべる。
つくしに箸以外持たせないように徹底してたもんな俺。
こんなことつくし以外には出来ないはずだ。
普段は俺が言う前に誰からやってくれるのが当たり前だから。
確かにいつもの俺じゃない!
あの食堂でしか見られないものだろう。
「写真もいっぱい携帯メールで回っていましたよ。何を食べたかも一緒に」
「代表の食べたものがその日の定食の1番人気だったんですて、知ってました?」
げらげらと俺の横でつくしが遠慮なく笑い声をあげている。
「それに・・・」
まだあんのかよッ。
「一緒にいらっしゃる時、代表が奥さまをいたわるように腰を抱いて寄り添ってらっしゃる姿・・・」
「注目の的で・・・1度でいいから奥さまと変わりたいなんてみんな思ってるほどです」
キャーと叫んで真っ赤になる女子社員。
「そんな姿が見られるのも今日までってことで・・・」
「みんな残念がってます」
「それじゃ失礼します」
しゃべるだけしゃべって女子社員は遠くで傍観してた仲間のなかへ溶け込んでいく。
すぐに「キャー」「ワーッ」の歓声が聞こえた。
普段なら最初の社員食堂の話で青筋が立ってきそうだが、なぜだかにんまりしてしまってる。
会社全体で子供の誕生を祝ってくれる感じは気分がいい。
「もっと大事にしなきゃな」
「えっ?」
俺を見上がるつくしの身体を横抱きに持ち上げる。
「何やってんのよ」
さすがにつくしも暴れはしない。
「お姫様抱っこ」
「最後にサービスしてやろうと思ってな」
そのままエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターのドアが閉まるまでの数秒間。
携帯のシャッター音と歓声に送られた。
「子供じみたことしないでよね」
「俺たちのこと見られないくなるって淋しがってたろう」
「俺もさみしいかも」
いたづらっぽく笑ってた。
「どこまでこの状態でいるつもり」
観念したようにつくしの腕が俺の首元にまわされる。
「ずっと・・・」
「バカ」
小さく動いたつくしの口元が照れくさそうにほほ笑んだ。
rann様のコメントでいただいた『お腹の大きいつくしを見て、会社でアタフタする司がもうちょっと見たい』
ということで産休前の最後の1日を書いてみました。
あたふたはしてませんがこんなものでどうでしょう?
でも普通妊婦のお姫様だっこはお腹が邪魔して出来ないでしょうが(^_^;)
そこはさすがは司&つくしということでお見逃しを~
絶対に真似しないでね。← 出来るかぁぁぁぁ