第2話 抱きしめあえる夜だから 18

 *

-From 1-

仕事を途中で邪魔されて・・・

これなら最初から一緒に出社したほうが楽だった。

「強引なんだから」

「好きだろう」

「何が?」

「強引な俺も、キスも・・・」

自信に満ちた表情が少し唇の端を持ち上あげる。

離したばかりの唇にまた薄く閉じた艶めかしい唇が近づく。

もう・・・。

これ以上は耐えられない・・・。

「もう駄目ぇッ」

顔をそむけて両手を道明寺の顔に押し付けた。

「仕事に戻らないと」

絶え間なく降りそそぐ欲情に耐え忍ぶのはどれだけ酷なことか・・・。

なじんだ肌が教えくれる。

「まだ30分経ってないんだけど」

「私はもう充分」

とぎれとぎれに答えるのが精いっぱいで・・・

「私の仕事が終わんない」

何とかそう答えた。

「あいつとか?」

道明寺の表情がムスッと変わった。

「あんまり妬かないで・・・」

「妬いてねぇ、気に食わないだけだ」

「どう違うの」

「・・・っるせ!」

「あんまりごちゃごちゃ言うとまた口をふさぐぞ」

不機嫌と照れが一色たんになった道明寺の表情は私の口元をほころばす。

「今日は昼も帰りも一緒だからな」

「スケジュールは大丈夫なの?」

「西田がどうとでもするさ」

西田さんすいませんとドアの向こうにいるはずの剛腕秘書に心の中で頭を下げる。

「あんまり西田さんに世話かけないのよ」

道明寺のネクタイを直しながらつぶやく。

「それも仕事ですから・・・」

「ノックをしたのですが反応がなかったもので」

西田さんの姿にあわてて道明寺から飛びのいた。

「見慣れてますからお気を使わずに」

そんなこと表情変えずに言われたら余計に羞恥心が吹き出してしまう。

せめて少しでも笑うとか・・・

口調を冗談のぽく改めるとか・・・

西田さんには無理だろうなぁ。

「そ・それじゃ私は帰るから・・・」

「後はよろしくお願いします」

西田さんに頭を下げて逃げるように部屋を出ていく。

「あいつ・・・照れやがって」

表情を崩した感じで背中に響く道明寺の笑いを含んだうれしそうな声。

あんたに照れてたわけじゃないッ!

西田さんの一言でいたたまれなくなっただけだぁぁぁぁぁ。

言いたい気持ちを呑み込んで足早にエレベーターに乗り込んで10階のボタンを押した。

勢いよく事務所のドアを開け甲斐さんに詰め寄る。

「甲斐さんのせいですからね」

「道明寺に言われたからって簡単に了承しないでください」

「そうおっしゃいますけど代表に拒否の態度示すのは自殺行為ですから」

いつもと感じが違う丁寧な甲斐さんの口調。

音色はからかい気味に響いている。

「つくしちゃんに任せるのが安全策だ」

横で玲子さんも頷いて同意を見せる。

「代表に奥さん、猫にまたたび」

「本社じゃ常識だよ」

そんな常識いつからできた?

「そのうち代表の機嫌を損ねるたびに呼び出しがじゃんじゃんつくしちゃんにきちゃうのも時間の問題かもね」

玲子さんの言葉の意味・・・・

ありそうで笑えない冗談。

一番大きな声でげらげら笑い声を上げている公平を思い切り睨みつけた。

 

-From 2-

「相変わらずだな、お前のとこ」

笑いのおさまらないままの公平。

「相変わらずって何よ」

「惚れられてると思ってね」

「俺のつくしに近づくなって強力な威圧ムービー向けられる。命が縮みそう」

「それにつくしが気がつかないからまたすげー目で睨まれる悪循環」

おどけて言う公平の顔はニヤケ気味。

「公平!勉強に来てるの?それとも私をからかうため?」

「両方とか?」

言ったそばからげらげらと公平が腹を抱えて笑う。

「もう仕事に戻る」

公平を無視するように自分の席に戻った。

「思ったより早く解放されたわね」

今度は玲子さんがクスッとした表情で話しかけてきた。

今度は玲子さんかよ。

「あんまりからかわないでください」

ふてくされ気味に言っていた。

「いつもいいもの見せてもらって感謝してるんだけど」

そんな玲子さんに感謝される覚えはないんだけど・・・

「会社に来る楽しみが一つ増えた感じだよな俺たちには」

甲斐さんまで参戦してきた。

「仕事じゃ統率力、判断力抜群で容赦ない冷血な態度の代表でお偉方の重役も縮みあがると評判の代表なんて

つくしチャンの側じゃ見たことないもんね」

仕事以外で発揮さる威圧感はつくしチャンに向かう虫よけ。

すご~く優しい、いかにも愛してる~って視線。

穏やかな表情はつくしちゃんを見てる時だけ。

これ以上緩まないくらいに緩んでる時もある。

「私たちが一番見れるもんな代表の意外性~」

甲斐さんと玲子さんに交互に列記される道明寺。

聞いていられんなくなるぐらい恥ずかしい。

「もうわかりましたから終わりにしてくださいッ」

「うらやましい」

最後に玲子さんにそう付け加えられた。

朝のことは忘れよう。

そんな気持ちで仕事に専念。

「おい」と背中をたたかれるまでその存在を忘れてた。

完全に忘れることなんてできない相談だけど。

「あっ・・・来たの・・・」

「来たのじゃねえだろう!折角俺様が誘いに来てやったのそのテンションの低さはなんだ」

私たち二人を面白がった眺めてる連中がいるこの部屋でテンションが上がるわけがない!

遠慮なんていらないからって感じの視線を送られてるよ。

「まだ昼休みじゃないのか?」

私じゃなく甲斐さんに確認をとる道明寺。

「どうぞ遠慮なく」

甲斐さんが道明寺にさからうわけないでしょうがぁぁぁぁぁ。

こんなところは悪知恵がすぐに働くんだからッ。

「1時間借りるからな」

朝より30分延長されている。

借りなくていいよと思うのは心の叫び。

前のめりにつんのめりそうになりながら道明寺に腕を引っ張られ歩いてた。

本社ビル前に乗りつけられた運転手つき高級車。

車のドアの横には西田さん。

「お手数掛けます」と頭を下げられた。

「どこいくの?」

「時間ないからさっさと乗れ」

反論する間もなく車に押し込められていた。

続きは"抱きしめあえる夜だから 19

さてさて二人はどこへ行く♪

イムリミットは1時間、それですむのかなぁ(^_^;)

「八日目の蝉」の映画に真央ちゃんが出るらしいです。

原作は読んだけれど・・・

誘拐犯に育てられて不倫相手の子供を妊娠してしま役どころ。

今までのイメージ脱出?

見たいけど見れないかも(^_^;)