PHANTOM 16
レア度☆5つの道明寺HD本社ビルエントランスの話題はもちろん道明寺夫妻の目撃談。
この後自分たちの部署に戻った社員さん。
休み時間を利用して激写した画像を持ちより時間を追ってつなげて分析。
社内追跡ゲームの決定版!
『代表の狩の行方』
と題したスライドショーの出来上がり。
もちろんしっかり社内広報の目玉として採用決定。
あとは秘書室長西田さんの確認印をもらうだけとなったのでございます。
なんてことになってたら面白いかも。♪
「もう・・・今日は社員食堂は無理だよ・・・」
ぶつぶつと口の中で小さくつぶやいて俺を見ようともしない奴。
心配がなくなった俺はこいつが何をぼやこうがまったく気にならない。
不機嫌な表情を俺に見せて文句しか言わなくなっても可愛いって思えるから遠慮なんていらねぇぞ。
逆に俺の機嫌を取るつくしのほうがあぶねぇよッ。
俺の存在を忘れられない程度の距離を保ってつくしの後を歩く。
こいつの首に見えない首輪をつけて鎖でつないで散歩させてる気分の余裕。
その俺の後ろからまじめについてくる影一つ。
邪魔だ。
つーか、ここで護衛される必要なんてねぇし。
「千葉、先に帰ってろ」
「はぁ・・・」
一瞥した俺の視線を通り抜けて千葉はつくしの背中に視線を送る。
「なに、つくしを気にしてんだよ」
「別に気にしてなんていません」
緊張感漂う声。
振り向いた俺の目を見ずにぐらついて周囲に漂う千葉の視線。
挙動不審丸出し。
めちゃくちゃ気にしてるじゃねぇか。
「千葉さんに威嚇してどうするの。
千葉さんが私たちについてくるのは仕事でしょう」
俺のことを無視してたんじゃねぇのかよ。
俺が誰かに噛みつくと慌てて仲裁に入るのは慣れたこいつの対応。
「俺のこと忘れてるんじゃないかと心配してたぞ」
「心配なんてするの?」
信じてない表情が俺を見つめる。
「俺がいつも気にかけてるのはお前のことだけだって、今ここで証明出来るぞッ」
言い終わったと同時につくしが背伸びをしながら腕を伸ばして手のひらでガシッと俺の口を抑え込んだ。
「証明なんてしなくていいから」
茹で上がったタコ。
手のひらまでいつもより熱を帯びて熱く感じる。
「まだ、照れるの早いだろ」
まだこれからってとこで俺はなんもしてねぇし。
「上で待機してます」
いたたまれないような表情を浮かべてるやつがもう一人。
頭をしっかりと下げて千葉はくるりと背中を向けて俺たちから離れた。
数歩数んで徐々に速足になって行く千葉。
どたどたと走る足音がおかしくてしょうがね。
そこまで慌てる必要はないだろう。
つくしの事務所の部屋の前。
ドアノブを回して開いたドア。
ガチャリとした金属音に重なるように「あら」って女性の声が重なった。
「帰ってくるの昼休みが終わってからだって思ったわ」
「玲子さんありがとうございます。しっかり公平から受け取りましたから」
「誤解は解けた様ね」
くすっとした微笑みを浮かべて俺からつくしに移った視線。
「玲子さん知ってんですか?」
すっとんきょうな声を上げるつくし。
「ごめんね。誤解を解こうにも代表に話せる雰囲気じゃなかったの」
俺に説明する時間あったんじゃねぇの?
そんな疑惑が頭に浮かぶ。
「そういや甲斐もいたよな」
お前でも俺の誤解解くことで来たんじゃねのか。
90度首を横に向けてデスクの前に座る甲斐に顔を向けた。
「俺が代表の勘違いに気が付いたのは玲子さんより後ですよ」
慌てて椅子から立ち上がった甲斐は今にも腰が抜けそうな表情で俺を見つめる。
「あの、食事に行ってきますから」
俺と甲斐を仲裁するように割ってはりこむつくし。
「こいつ、このまま退社させるから、あとはよろしく頼む」
グイと伸ばした腕をつくしの腕に巻き付けて腕をしっかりと組んで引き寄せた。
「わかりました」
にこやかな表情で松山は軽く腕を上げて了解の意思を見せる。
「礼子さん!」
まだなにか言いたりなそうな焦った声をつくしが上げる。
「ちょうど、今日のつくしちゃんの予定はキャンセルの連絡があったから問題ないわよ」
「え?」
「だから、心配いらないから今日はもう大丈夫よ」
「大丈夫って・・・・っ」
ちらりと俺に見上げる視線。
本気で焦ってやがる。
普通はそこ喜ぶとこだろうがぁぁぁ。
「それじゃ、遠慮なく」
「えっ!おっ!」
「私、まだやらなきゃいけない仕事があるの。食事終わったら帰して」
抵抗しても俺の思惑通りに事務所を一緒に出て進む。
「休め」
「休めって言われて休めるわけないよ」
「何か問題あるか」
今日一番の凄味で言い放つ。
「俺はお前のおかげですげー勘違いさせられたんだ責任は取ってもらう」
「そっちが勝手に想像したんでしょ」
俺が悪いと非難する強気な瞳。
「お前が悪い。俺は悪くねぇし」
「とに、その自己中心何とかしてよね」
膨れた頬に尖らせる唇。
「そんな俺に惚れてんじゃねぇのかよ」
両腕をつくしの両肩越しに壁につく。
つくしの身体はすでに壁に張り付けるように追い込んで、逃げる隙はすでに塞いでる。
「言うとおりにしろ」
耳たぶに唇が触れる距離でつぶやいた。