ANSWER 25
つくしと司の一コマから本編に戻します。
恭介君と佑 の一夜と早くいきたいところですがなかなかなそこに行きつけない。
もうしばらくお待ちくださいませ~
え?待ってない?
「えっ?舞をかばってくれたのって佑 君じゃなかったの?」
落ち着きを取り戻した病室は温度差の違う二つの表情が並ぶ。
意外そうな表情のママとなんだかうれしそうな表情のパパ。
見舞いに駆けつけてくれたみんなはなぜか佑 の病室に行ってしまった。
そしてこの病室に残されたのはママとパパと翼の三人。
もうしばらくしたらお兄ちゃんも来るって連絡が入ったからそれまではここで待つらしい。
F4襲来の噂は病院中を駆け抜けて病室の前は熱気のたまり場となっていた。
それを引き付けたまま病室を出ていったおじ様たちの人気はいまだに健在。
それでもまだ病院がいつもの冷静を取り戻すには時間が必要だって思う。
お兄ちゃんがやってきたらさらにその熱気はヒートアップしそうだけどね。
「舞を守れないって佑 も案外だらしねぇな」
「佑 は本城をかばったんだよ」
佑を擁護する翼に言いようのない感情が胸の奥にくすぶる。
確かにあの時佑 は私に危ないって言葉をかけてくれた。
上から崩れ落ちてきた瓦礫が上げる砂ぼこりで視界は遮られて、気が付いたら私のそばには大内先輩がいた。
先輩ってそんなに私の近くにいたのだろうか?
佑 しか見えてなかったのは私が佑 だけを見ていたから?
いつも私のそばにいるのは佑 だったのに、今そばにいるのがどうして佑じゃなかったのと思うのは私のわがままなのかな?
このまま死んじゃうんじゃないかって恐怖と、いつもそばにいるって思っていた佑 がいない不安。
すごく泣きそうな私をしっかりと支えていてくれたのは確かにあの時は大内先輩だった。
「なに、喜んでるのよ」
じろりとパパをたしなめる口調のママ。
「危険なときに守られるっていう展開に女は弱いだろ?
ほら、昔、俺が身体を挺してお前を守って怪我したときは、すげー心配そうな顔をしてけなげに俺の世話をしてくれたよな」
「そんなことあった?」
「高校の時に、桜子に騙されて腕を折った事があったろうがぁ」
パパの声は少しずつ音量を上げて必死になってママに説明してる。
この状況になるといつもママのペース。
「あそこから俺への愛が深まったはずだ」
「あの時は、まだ、好きじゃなかったから」
「テレんじゃねぇよ」
「テレてないから」
もっ。
病室で両親の愛の履歴を聞かせないでよ。
って・・・。
我が家と全く変わらないじゃない。
「これで少しは安心だな」
「何が安心なのよ」
呆れた表情のママにほくそ笑むパパ。
二人の心の温度差は相変わらず対照的だ。
「父さんの考えで行けば舞を助けた大内先輩を舞が好きになるって可能性があるってことになるな・・・」
黙って聞いてたはずの翼が楽しい悪戯を思いついた子供みたいな目の輝きでそうつぶやいた。
「となると・・・本城は佑 に好意を持っても不思議じゃないってことになるよな・・・」
私は大内先輩に助けられて、佑 は本城さんを助けてるからパパの原理で行けばそうなるって流れは分かる。
でもそんなに人の感情は単純じゃない。
現に私だって・・・
佑 が助けてくれなかったことに不満だ。
この心のもやもやはたぶんそれだって思う。
「いや~それはないか」
翼が頭を掻きながらそうつぶやいた。
翼・・・
もう、パパには聞こえてないって思う。
「大内って誰だ?」
一瞬でピンと張りつめた空気に一番ギクッとなってるのは言いだした張本人の翼。
「ほら一度お母様に紹介されたことがあるじゃない」
「大内って代議士の大内か?」
「助けてもらって好きになるんだったら、司より花沢類のほうが何度もキュンとなるくらい助けてももらってるんだから」
「ここで類の名前を出すって随分と俺も舐められてるものだな」
パパの興味が私からママに移った。
「静かにできないのなら、もう帰るわよ。ここは病院なんだから」
「誰も俺に命令できないってこと忘れんじゃねよ」
「へぇ・・・そうなんだ・・・」
例外はある。
それがママ。
たぶんこの病室のいる4人全員そのことは分かってる。
ママの余裕の表情にパパは自信を無くしかけてる。
「舞だって軽症でも怪我してるんだら、休ませないと。
それに、きっと怖い思いたくさんしただろうから」
この絶妙な空気の変化に一番救われてるのはパパ?
限りなくやさしい瞳のママがそのまま私を抱きしめて耳元で「大丈夫だから」って声が聞こえた。
翼の「大内先輩を好きになる」
その言葉が文字になって頭の中に浮かんで消えない。
事故に巻き込まれて一人じゃなかった幸運。
今まで一番先輩と会話した記憶。
薄らぐ不安と恐怖は大内先輩が私をささえてくれたから。
今までの先輩に対するイメージが良くなったのは確か。
助け出されるまでの時間が悪くないイメージで脳裏に焼き付いてる。
大丈夫だから・・・
ママが私にかけてくれた言葉の意味が必要以上に重く私には感じられた。