第12話 ないしょ?ないしょ!ないしょ!? 15
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「もうバイトなんてさせねぇ」
右手を私の首に巻きつけて左手は腰回りに巻き付いて完全に道明寺の胸の中へ埋め込まれてしまってる。
「誰も取りませんから・・・」
ため息混じりの西田さんの声に私の顔は火照り出す。
「こいつに色目使う奴はぶっ殺す。たとへ西田お前でも」
「・・・」
「色目など使っておりませんが・・・」
「私の趣味はおしとやかで純和風の女性で」
少しの間は西田さんの驚きか?
相変わらずの無表情で言われてもそれが好みとはどうも説得力がない。
西田さんて和服美人が好きなのかな?
周りにいたか?
私もバイトなんてしなくていい。
この件では道明寺に賛同したい。
「代表の会社での存在感、カリスマ性、必要性をしっかりつくし様には見てもらいたかったのですが・・・」
「まだたいしてお見せできないうちに辞めさせられるのもったいないですなぁ」
「きっと惚れ直していただけたと思いましたのに」
残念そうな西田さんの言い回し。
道明寺は考える仕草を見せ「フッ」と笑う。
惚れ直すの意味をどうとらえてるのか・・・
私が道明寺を押し倒すとか考えてないだろうなぁぁぁぁぁ。
「それなら俺のそばに置くのが一番だろうがぁ」
「つくし様に気が散って仕事が進まなくなる恐れがあると・・・」
「そんなわけねえじゃないか」
「そう言い切れるものかどうか・・・」
二人の会話に中に私の存在、感情は全く入ってない。
道明寺の側にいるなんて絶対ヤダ!
最初は掃除婦で外から道明寺の会社を見る
始まりはこれだった。
道明寺にばれそうだからとバイトを変えメッセンジャー。
その間に花沢類に、的場常務、ついでに掃除のおばさんに見染められた。
それが道明寺だけでなくお母様にもばれてそして今の状況。
今度はなんなのよーーーーーッ。
「・・・と決まりましたから」
西田さんの言葉が途切れて私の耳に届く。
「えっ?」
「何が?」
私の頭の中がぐるぐる回っている間に判決は終わってた。
「坊ちゃんの要望は無視できませんから」
「少しでも坊ちゃんの気が緩んだらここでつくし様のバイトは終わりということで」
ということってなんだ?
「そういうことだからよろしくな」
「しばらくは一緒だぞ」
緩んだ顔でにんまりする道明寺。
この顔・・・
高校の時、道明寺の屋敷で「司坊ちゃんの専属の召使にすればよろしいじゃないですか」とタマ先輩に耳打ちされたときの道明寺とそっくりな反応。
それも体勢は道明寺に抱きつかれたまんま。
あの時よりさらに悪いよ。
道明寺のテンションの上昇がそのまま私の体に伝わってくる。
「・・・もしかして道明寺専属ですか?」
恐る恐る西田さんを見る。
「申し訳ありません」
頭を下げる西田さんに途中で目を閉じた。
ヤダ――――ッ
-From 2 -
「本当に道明寺のそばで仕事するんですか?」
これで何度目だろう。
西田さんの側について回っている。
道明寺の隣の部屋は西田さんの室長室でその先が秘書室で数名の女性秘書が待機中。
その中に平気な顔で行っていく面の厚さはもち合わせてはいない。
「難しいことは考えなくていいですから」
考えても出来るはずがない。
「坊ちゃんのそばでにっこりと・・・それだけで充分です」
表情の変えない顔が私に笑顔を注文する。
それが一番難しいんだぁぁぁぁぁぁ。
「牧野」
「お呼びです」
ドアを開けて手招きする道明寺はご機嫌が服着て歩いてる状態だ。
冷たいよ西田さん。
恨めしく見つめながら西田さんの室長室から道明寺の代表室へ居場所を移した。
「お前どこ座る?」
「俺の横?前?どっち?」
椅子を抱えてどこに置くか迷ってる。
いったいどこのお偉いさんが秘書の椅子を持って歩くのか・・・
「どっちもヤダ」
「私はそのソファーでいい」
「あっ」
道明寺の声には怒の響き。
いきなり最初からいたらぬ方向に進んでいる。
「仕事する気はないのかよ」
「する気はあるけど道明寺の側に近寄らなくてもできる仕事頂戴」
「お前俺の専属だろうがぁ」
道明寺のこめかみがヒクヒクしているのがわかる。
にっこりと・・・
にっこりと・・・
・・・・笑えない・・・。
「仕事教えるからとにかく座れ」
苛立ったままの道明寺の隣に椅子を並べて座る。
もう一人は並んで座れそうな広いデスク。
ここにいつもは一人でふんぞり返っているんだろうなぁ道明寺。
私が素直に座ったとたんヒクヒクが消えて笑顔になった。
単純だ。
もしかして西田さんの狙いはこれだとか?
これって私には重労働だよ西田さん。
これで社員が助かります何っていうんじゃなかろうか。
不安になった。
会社の平穏が私にかかってるなんて言わないでよねぇーーーーッ。
「俺はサインするだろう、その横にこの印を押せ」
「・・・それだけ?」
「そんなの一人でやってるんじゃないの?」
「お前にさせる仕事はいまんとこないから」
「大事な書類に印を押させるなんて俺意外には出来ないことなんだぞ」
感謝しますとで言ってもらいたいのだろうか。
確かに大事な書類に私が代表の印なんて普通押せないだろうけど・・・
っていうか普通自分以外に押させないだろう。
それを私に押させて大丈夫なのか?
「流れ作業もたまには良くないか?」
いいだろうと言って書類を私の前に置く。
やたら道明寺が楽しそうにペンを走らせるのを呆れるように眺めてた。
仕方なくて言われたとおりに朱肉にぺたっと印をつけて書類へとギュッとそれを押しつける。
ぺた。ぺた。ぺた。
「上手じゃないか」
何ほめてんのよ!
小学生じゃないッーの
続きは ないしょ?ないしょ!ないしょ!? 16 で
坊ちゃん専属秘書。
最後はこうなってしまったか・・・
秘書までやらせるつもりは書き始めた時はなかったんだけど(^_^;)
ところで類は?
なんて突っ込みはご容赦を~