第13話 愛してると言わせたい 7
*-From 1 -
「情けない」
一言で切り返された。
坊ちゃんおかわいそうにとか・・・
大丈夫ですこのタマにとか・・・
つくしが坊ちゃんのことを忘れるなんてとオイオイと泣く。
ねぇのかよ。
タマの反応はすべて俺の予想外。
「つくしの苦労が経験出来てよかったですね」
タマが不敵に笑う。
「つくしがどれだけ坊ちゃんに惚れてるかこのタマがよく知ってますから」
「坊ちゃんの方がつくしに惚れこんでますけどね」
そう言ってニンマリ。
貶してるのか、慰めてるのか、どっちだよ。
「牧野、タマのことも覚えてねぇぞ。猫だと思っていたくらいだし」
反抗するみたいなガキの対応。
「大丈夫ですよ、私はつくしとはすぐに仲良くできるでしょうから」
「坊ちゃんみたいに警戒されることもない」
「なんで知ってんだ!」
「いじめられた記憶しか残ってないなんて坊ちゃんも哀れだねぇ」
皮肉るような言い方で反撃されていた。
「しっかりおやりなさい」と背中を押されてタマの部屋を出る。
しっかりって・・・
どうやんだよーーーーーッ。
「つくしにこの部屋にくるように言ってくださね」
タマ!俺に命令すんじゃねぇ!
戻ってつくしにタマの伝言を伝える素直な俺。
「わかった、会ってみる」
二つ返事で俺の前から去っていく牧野の背中を見送った。
1時間程度で戻ってきた牧野。
「この屋敷に畳の部屋があるって意外だね」
「なんだか落ち着いていっぱい話してきた」
「おばあちゃんって呼んだら先輩とお呼びって怒られちゃったよ」
俺ン時とはえらい違いの楽しそうな反応。
タマの予想通りじゃねぇか。
「なんか思い出しそうなんだけどね」
「ホントか?」
「タマ先輩のこと」
すっかりタマを受け入れてる牧野。
俺じゃねぇのかぁぁぁぁぁぁ。
ガクッと首が落ちた。
「どうしたの?」
心配そうな瞳を久しぶりに向けられた。
それだけでうれしさがこみ上げる。
「なんでもねぇよ」
強がってみても言葉の中にさみしさが滲んでしまってる。
タマの言い分じゃないが情けない。
「らしくないね」
牧野の口元がかすかに笑う。
笑顔を向けられるだけで舞いあがりそうな感覚。
どうしようもない。
我慢できなくなって牧野を背中からギュッと抱きしめてしまってた。
-From 2 -
「好きだ」
耳元を掠めるように流れる声。
抱きしめられた腕を振りほどこうとした指の動きが反射的に止まる。
乱暴で・・・
強引で・・・
横暴で・・・
身勝手なイメージとはかけなはれた優しい響きを含んだ声。
この腕の・・・
身体の温かさを知っていると身体の細胞が教えてる。
流されちゃダメ!
心の片隅で誰かがそう叫んだ。
「アッ、ちょっと」
「離したくねぇ」
身体を包み込むように道明寺の腕が、指先が動く。
「ス・ストップ!」
「今・・・どこ触ってる?」
胸のふくらみを包むように動く指に上ずるような声を発してた。
「あつ・・・違うんだ。手が勝手に・・・いや!無意識っていうか・・・」
胸に手のひらを触れたまま道明寺の声が裏返る。
「早く離してッ」
叫び声と同時に道明寺を投げ飛ばしていた。
「イテッ」
腰をさすすりながら仰向けに転がる道明寺。
恨めしそうな視線を投げられる。
「あんたが悪いんだからね。急に抱きついて、胸なんて触って、このスケベ!」
「わざとじゃねぇって言ってるだろう」
「記憶がなくても凶暴さは変わんねぇなぁ」
腰をさすりながら立ち上がる道明寺。
「以前これと似たようなことなかった?」
コマ送りみたいにとぎれとぎれの映像が浮かんで消える。
「何か思い出したか?」
道明寺の表情がパッと明るくなった。
「俺を投げ飛ばして思いだすことってあるのか?」
「普通反対じゃねえのか?」
小さく笑った顔が私を覗き込む。
「少し黙って!」
「考えてるんだから」
会えない・・・
別れ・・・
婚約者・・・
少しづつ形をあらわすように頭の中に色が映りだす映像。
「道明寺・・・私と別れて他の人と婚約したんじゃない!」
まさかこいつ結婚しても私と付き合おうとかしてたんじゃないよな?
「はぁ?」
間の抜けた表情で穴のあくほど道明寺に見つめ返される。
「思い出したのか?」
「全部じゃないけど何となく」
「おーッ」
延びてきた腕を避けるように飛びのいた。
「他に婚約者がいるのに私に近づかないでよね」
「何のことだ?何言っている?」
「私以外に婚約した人いるでしょう!」
「あぁ、滋のことか?」
道明寺の顔が不安げに表情を変えた。
「・・・まさか、お前、そこから先は思い出してないのか?」
「もう、思い出さなくても十分、最低、馬鹿男」
滋って誰よ!
あっ・・・婚約者か。
「おい待て!違う!」
「確かにそうかもしれないけど、全然違うぞ」
言いたいことが見つからない感じに慌てている道明寺に無性に腹が立つ。
「言ってることむちゃくちゃだよ」
はき捨てて睨みつける。
くるっと道明寺に背を向けて大股で歩く。
「とぎれとぎれに思い出すんじゃねぇーーーッ」
道明寺の叫び声を無視するように部屋のドアをバタンと閉めて出て行った。
なんかムカムカする。
何が私のこと好きだ。
婚約者がいるのになんで私を抱きしめる。
アーーーッ腹が立つ。
・・・これって嫉妬。
私、道明寺が好き?
そんなわけないだろうと否定してそしてまた苛立つ。
「どうかした?」
目の前ににっこりほほ笑んで立つ花沢類がいた。
続きは愛してると言わせたい8で
ドラマリターンズであった一こまを思い出して書いてみました。
ボロアパートで道明寺を投げ飛ばして床に穴があいて、そこから道明寺の使用人になるお話に流れて行きましたよね。
このつながりからどうなるのか。
とぎれとぎれで嫌なことばかり思いだされたらどうなるんだろう~
けして司君をいじめて喜んでいるわけではありません。
でも楽しいですよね(^_^;)
拍手コメント返礼
nanako様
旅行は楽しかったです。
絶叫マシーンが好きじゃなければ三井グリーンランドの方が楽しめると思いました。
来年は三井グリーンランドにしようかと考えています。
つかれ・・・
あるかも(^_^;)