第12話 ないしょ?ないしょ!ないしょ!? 17
*-From 1 -
週末・・・
なし崩し的に一緒に過ごす予定が頭のなかで書き加えられている。
服から始まって靴にバックと一揃い道明寺にプレゼントされた。
「エステまでやっておくか?」
プレゼントされている私より道明寺の方がヤケにうれしそうだった。
道明寺の機嫌がいいと御屋敷で出迎える使用人の人たちが安堵のため息を漏らす。
そして感謝のまなざしと頼みますの哀願を一身に受ける私。
それで身動きが取れなくなる。
確か最初の予定では2週間道明寺と会わないはずじゃなかったか。
その予定はどこに行った?
バイトはあと1週間。
それも道明寺のそばでというおまけ付き。
道明寺に内緒。
会社を裏から見る。
全部どうなった?
もうどうでもいいのだろうか?
考えながら道明寺の背中を見詰めてついて歩く。
後ろからはSPが荷物持ちとなってぞろぞろと付いてくる。
荷物の多さが道明寺の機嫌のよさに比例している感じだ。
道明寺の部屋に荷物を置いて去っていくSP。
ポツンと取り残されたように感じてしまってた。
このまま帰りたい・・・。
言えるはずない機嫌のよさを振りまく道明寺。
顔・・・崩れてるぞ。
「私の泊まる部屋はどこなのかな?」
我ながら馬鹿な質問をする。
「決まってるだろ、俺の部屋」
「最近俺の部屋以外泊まったことなんかないだろうが・・・」
ネクタイを片手で緩めてもう片方の腕は私の腰にまわされる。
フェロモン撒き散らして迫るな。
腕を押さえた手をそのまま伸ばすことをためらわせるに十分な息使い。
道明寺の鼓動が手のひらに響くたびに高鳴る私の鼓動。
一つに重なるにはさほど時間は必要じゃないようだ。
「結婚を我慢してやるから、朝まで一緒に過ごす約束したよな?」
「・・・それは、勝手に・・・」
「勝手になんだ?」
耳元で響く道明寺の甘い声。
「道明寺が言っただけで・・・」
「でもお前は俺についてきた」
「一緒に車に乗ってたのだからしょうがないでしょ」
途切れそうになる言葉を必死で並べる。
頭で考えて言葉を探す。
考えが追いつかない。
逃げようと思うと追いつかれ絡み取られる。
「帰ると言えば送って行ったぞ」
「それは・・・嘘でしょう」
それは絶対にないと言いきれる自信。
結局道明寺の言いなりになってしまってる。
もう十分だ。
くっと喉の奥が鳴った。
「まあなっ。お前を俺のそばにとどめる自信はあるけど」
道明寺の瞳が優しく見つめて熱を帯びてきているのがわかる。
クスッと笑う笑顔もいつもより心を握って離さない。
しゃべるたびに道明寺の顔が近づいて二人の密度は増すばかり。
だめだ・・・。
声を発するたびに道明寺の腕から逃れるすべを失って流される。
魅かれるように重なった唇は何もかも呑み込むように形を変えて深みの中におぼれだす。
明日は帰れるのだろうか・・・。
そんな思いが頭をかすめた。
-From 2 -
「もう、やだ!なんで一緒に出社しなきゃいけないのよ」
ブッブツと不満げに口をとがらせる。
「俺と一緒でうれしいくせに素直じゃねぇな」
「今朝までず~と仲よかっただろう」
「だっ・・・だからもう十分でしょう」
肩にまわした手を振りほどいて身体ごと車の窓に方向を変えて俺に背を向ける。
顔が真っ赤に色づいてるのは丸わかり。
ククと喉元からこぼれるのは機嫌のいい笑い声。
楽しくてしょうがねぇ。
俺の選んだ服を着て靴を履いて化粧して・・・。
大学で見る牧野より数段に大人っぽくて色っぽい。
このまま公衆の乗り物使って行かせられるか。
お前を見るのは俺だけでいい。
掃除婦にメッセンジャーの格好でうろうろさせてた方が安心だったか?
あんときだって的場のはげ常務にあのおばさんの息子に類がちょっかい出してたぞ。
今の牧野じゃその時より視線を集めるじゃねぇか!
俺が側で目を光らせておかないとあぶねーぞ。
「怒ってる?」
牧野が俺の顔をしたから覗き込むように視線を向けた。
「怒ってなんかねぇよ」
完全にぶっきらぼうな言い方。
「機嫌悪くなってる?」
お前を心配して機嫌損ねたなんて言えねぇよ。
「牧野、あれだ、お前は絶対俺から離れんなよ」
「・・・まあ、名目は道明寺の秘書だからね・・・」
「でもいつも一緒にというわけにはいかないでしょう」
「・・・で、なんで怒ってんの?」
いい加減にしつこいやつ。
それも俺が一番キュンとくる無邪気な表情で攻めてくる。
これが無意識だから嫌なんだ。
「お前がキスの一つでもしてくれたら機嫌は直るぞ」
牧野の顔の前で迫るように顔を突き出した。
こいつが一番嫌がりそうなことで攻める俺も相変わらずのガキだ。
願望もあるのは確かだけどな。
「そんなことするわけないでしょう」
「なんで?」
「昨日はあんなに積極的に・・・プッ」
言い終わる前に口を牧野の手のひらが塞ぐ。
「息できねぇよ」
わざと言って緩んだ手のひらを俺の手の中にしまいこむ。
「これで抵抗できねぇぞ」
「うっ」と言って堅く口を閉ざす牧野。
こじ開けるのは簡単だぞ。
昨日のことを思い出させればいいだけだ。
ガチャ
突然開く後部席の車のドア。
車が止まるのも気がつかないままのこいつとの空間。
終わった・・・。
「そこまでで」
素知らぬ顔で頭を下げて感情のない声が逆効果。
牧野が真っ赤になって慌てて俺を突き飛ばす。
西田、お前も少しは慌てろ!
「社内ではほどほどに」
その声に慌てるように車から飛び出して牧野は西田の背中に姿を隠す。
ほどほどが我慢できれば苦労しねぇーーーーーッ。
お話が違うとこんな展開もあるさ。
いろんな司クンバージョンで楽しんでください。
どれが一番楽しめるのだろう(^_^;)
会社ではほどほどに~♪