HAPPY LIFE 10

 *

陣痛の始まるつくし。

俺は腰をさすってやりながら陣痛の間隔を時計で測る。

「大丈夫だ、俺がついている」と、励ましながら病院に向かう。

何度も頭の中で繰り返したシュミレーション。

なんにもならねっ。

突然生ま温かい透明な液体が足へとかかった。

かかったというよりは足元はびちゃびちゃ。

どっからこんな量の液が漏れてくるだ。

「道明寺、破水したみたい・・・」

はすい?

破水ってなんだ?

そんなこと新米パパの出産の心得には載ってなかったぞ。

つくしの真っ青な顔を見ればただ事でないのはわかる。

産まれるのか?

ここで?

どうすんだーーーーー。

「病院、病院、そうだ医者!」

どっから手をつけるかわかんねぇ。

まずは落ち着こう。

「大丈夫だから」

深呼吸して、ソファーに座るつくしに寄り添ってそっと抱きしめる。

「大丈夫じゃない、誰か呼んできて」

結構きつい顔で睨まれる。

「車!病院行くから、それとバスタオル、出そう」

「出るって子供か!?」

「そんなにすぐは生まれない」

なら、出そうなんて言うなよ~

苦しそうに顔をゆがめながらつくしに指図されて動き回る。

「大丈夫だ、俺がついている」

何とか準備できたつくしと一緒に車に乗った。

「早くしろ」

病院について威圧感丸出しで叫ぶ俺。

まだ生まれませんからと診察した医師の言葉。

焦って損した気分。

陣痛室でとベットに寝かされたつくしの手を握る。

「びっくりした」

落ち着きを取り戻してホッとほほ笑む。

「あんまり動転しないでよね」

女のほうがとっさのときは強いってホントだと実感。

実感してる場合じゃない。

最初の父親の威厳見せないとなっ。

もう地に落ちてるか・・・。

「つっ」

時折痛みを我慢するように顔をゆがませるつくし。

「大丈夫か」と手を握る。

つかまれた手が痛いほどに握り返された。

陣痛ってどのくらい痛いんだ。

経験できないからなおさら見てられない。

「まだ我慢できるから」

そう言って歯を食いしばる。

見てらんねぇ。

その間隔が徐徐に狭まって、額に粒上の汗まで浮かびだした。

手を握り返すしかない自分に歯がゆい思い。

こんな気持ちに落ちるのははじめだ。

自分の力無さを恨みたい気分。

男ってみんなこんなものなのだろか。

「そろそろですね」

分娩室へとつくしが移る。

歩いて行けるってすごくないかと感心して見つめてた。

「立会されますか?」

「アッ、ハイ」

慌てて返事した俺にこれを着てくださいとガウンと帽子を渡される。

分娩台の後ろに回ってつくしの顔を覗き込む位置に立つ。

つくしの下半身は布に覆われて見えない状態。

呼吸法を指示されるたびにつくしと一緒に息を吐く。

「もう少し」

「力んで」

言われるたびに俺が力んでどうすんだ。

つくしのうめき声が大きくなるたびに力を入れてしまってる。

「頭が出てきましたよ」

おーーーッ!見えねぇよッ。

背伸びして覗き込んでもわからなかった。

見に行きたい衝動。

つくしが俺の手を握りしめたまんまだからどうにもならないかった。

つくしが握りしめていた俺の指が折れるかと思った瞬間に聞こえた「オギャー」の啼泣。

安心からかうれしさからなのかわかんない涙がポロっとこぼれおちた。

「男の子ですよ」

つくしの胸に抱かれる赤ん坊。

ちっせー。

これがさっきまでお腹の中にいたかと思うとすげー感動。

「やっぱ、俺が思った通り男だったぞ」

「うん」

ほころぶつくしの顔は今までのどんな表情より輝いて、誇らしげで、美しい。

「ありがとう」

その言葉しか浮かばなくてつぶやきながらつくしの手を握り返した。

「産まれた、男!」

分娩室を飛び出して、待合室にいたつくしの両親、タマ、西田にまで抱きついてしまってた。

は~あ

やっとここまで来ました(;O;)

ここから先のお話は子育て編になるのかな?

終わりなし

拍手コメント返礼

yumiko

授乳中の大きくなってるつくしのおっぱいにドキドキですか?

この大きさのままか!なんて喜んでいそうですけどね。