第12話 ないしょ?ないしょ!ないしょ!? 18
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最上階に続くエレベーター。
俺の後ろには西田、その後ろに隠れるようにSPに周りを取り囲まれた牧野。
外から見えやしない。
いまSPが警護してるのは俺じゃなく牧野。
西田は大々的に牧野の存在をばらすつもりはないらしい。
エレベーターに乗り込むまで牧野に注意を向けるやつは見当たらなかった。
つまんねぇ。
「いつも注目を一身に受けていただけるので助かります」
西田のやつ本気で言っている。
俺が牧野の腕でもとって歩けば別な注目浴びるぞ。
目立つことすると牧野のバイトは終了とくぎを刺されてるから我慢する。
最後の日にはやってやると心に誓う俺。
小せぇー。
オフイスのドアを開けると数人の秘書たちが「おはようございます」と出迎えるいつもの風景。
西田に牧野のことは説明されてるのはありありでだれも表情を変えない。
俺の婚約者とか説明されてるのだろうかと考えたら顔がゆるむ。
崩れないように頬に力を必要以上に入れる。
心と反対の不機嫌な顔に仕上がった。
西田と牧野と俺の3人で奥まった俺の執務室に向かう。
「いつ来ても必要以上の広さだよね」
緊張気味につぶやく牧野。
その牧野がもっている紙袋に目がとまった。
「お前、何持ってきてるんだ?」
「あっこれ?」
紙袋を大事そうに胸に抱え込む。
「お弁当作ったんだ、お昼一緒に食べようかなと思ってね」
「さすがに道明寺の屋敷には良い材料そろってるわ」
照れを隠すようにつぶやいてオフィスの上に3段重ねの重箱が袋から姿を現し俺のデスクに置かれた。
書類以外の物ここに置いたやつこいつが初めてじゃねぇか?
あっけにとられた感じで見守る俺。
朝いないと思ったら俺の為に弁当作ってたのか。
引き締めた顔がまた緩む。
「牧野・・・」
伸ばした腕で牧野をとり込むの失敗して空振り。
この腕どうすんだッ。
気がつかないままに牧野が身体を西田に向ける。
「ハイ、西田さんにも」
こじんまりとした弁当箱が西田の手の中へ。
「私にもですか?」
少し声のトーンが珍しく上を向いたぞ。
「いつも世話かけてるから」
初々しい感じで牧野がほほ笑む。
そんな顔を俺以外に見せるなとわき上がる思い。
「西田になんかやる必要ねえぞ、俺が食う!」
ぶつけるように言い放つ。
「折角のご厚意ですから」
「坊ちゃんにはさし上げれません」
俺の視線から弁当箱を隠すように両手で覆う西田。
「渡せ」
「駄目です」
こんな睨み合い今まで何度あったことか。
中身は仕事のことだったけどな。
牧野の作った弁当を取り合うなんて馬鹿げてるが負けられない。
西田も大人げない。
ムキになるなッ。
「ブーッ」
吹き出すような笑いに動きがとまる。
「こんなとこで弁当の取り合いしてる道明寺と西田さん嘘みたい」
ケラケラ膝を叩いて喜んでいる。
「天下の道明寺の総帥と沈着冷静で有名な西田さんが・・・あり得ないよ」
腹抱え出した。
「他の秘書さんにも見せたい」
とどめを刺された。
いつもの西田に戻って「コホン」と咳払いをひとつ。
弁当抱えたまま即座に退散しやがった。
あれで結構西田のやつ照れてるぞ。
「ここの屋上ね、お昼お弁当食べると気持ちいいんだよ」
「道明寺と食べれたら楽しいかなっていつも思ってた」
「でも無理かな、目立つもんね」
さびしそうに笑う牧野の口元。
俺のいないところで俺を思う牧野。
どうしようもない愛しさが俺を包む。
グッとくる思いを胸の奥へ押し込める。
そのまま受け入れたら歯止めがきかなくなりそうだった。
「この部屋でも楽しめるかな」
今度は明るい調子で声が響く。
「いいんじゃねぇ、屋上でも」
「騒がれても楽しめそうだし」
今度は空振りせずに牧野を抱き寄せた。
*このお話の秘書西田の観察日記はこちらです
-From 2 -
「いろいろ説明する必要がりますから」
牧野を西田に持っていかれる。
結局だだっ広い部屋に一人ってどういうことだぁぁぁぁぁぁ。
不満な顔を見せたら「坊ちゃんじゃ秘書の仕事は教えられません」と能面はしゃべる。
「つくし様は坊ちゃんの世話係じゃありませんから」
痛いとこをついてくる。
この前みたいなハンコ押しでも充分な戦力に牧野なっていたんだけどな。
それだけで1週間楽しめるぞ俺。
初めての二人の共同作業はケーキ入刀じゃなくてハンコ押し。
うれしかったんだけど、それじゃダメか。
「仕事覚えなきゃ」素直に西田についていく牧野をしぶしぶ見送った。
「昼は一緒に弁当食べるんだからなぁ」
何のごり押ししてるのか。
俺と食事したいお偉方は列をなしているのにそれを断って牧野と1週間の昼食の時間を確保した俺。
「夕食は無理ですから」
西田に嫌な顔されてもどうってことない。
こんな機会ニ度とねぇかもしんねぇし。
あいつの作った弁当を二人で並んで屋上で食べる。
昼の時間はなかなか来ない。
遅せぇーーーーーッ。
「12時を過ぎたころ、西田の部屋に顔を出す」
「代表今日はこれで何度目ですか?」
「落ち着いて説明もできませんよ」
「今度はしっかり理由がある、そろそろ休憩だろう」
牧野が気になって用もないのにドアをあけていたさっきまでの俺。
3度目からは完全に西田にも牧野にも無視されてしまってた。
「今屋上に行ったら人が多いからもう少し後のほうがよくない?」
「別にいいじゃねぇか」
「俺は腹がすいたんだ」
「どちらでもかまわないと思いますが」
横から西田が口をはさむ。
「人が少なかろうと多かろうと目撃者の人数に比例することなく、代表が女性と屋上で弁当を広げられていたという情報が夕方にはビル内を占領してることでしょうから」
「困る!」
牧野が目ん玉飛び出すぐらいの表情で俺を見つめる。
「面白い」
「おもしろがってる場合じゃないでしょう」
俺のネクタイをつかむような勢いで牧野が迫る。
せがまれるのならネクタイを緩める方向に持っていきてぇ。
そんなこと考えてるって牧野にわかったら呆れられるだろうけどな。
「西田さん、私のことばれたら困るんじゃないんですか?」
「代表に婚約者がいらっしゃるのは周知の事実ですから、問題にはなりません」
「西田さん話が違ってきてますよ」
牧野は半ん泣き状態だ。
「西田の許しも出たし行くぞ」
牧野の襟をつかんで引きずるような状態で俺の部屋にと連れて行く。
「ほら弁当持っていくぞ」
「本当に行くの?」
「お前が食べたいって言ったんだろうがぁ」
「それはそうだけど」
煮え切らない態度のまま牧野に笑いがこみ上げる。
「俺はうれしいだけどなぁお前が俺のもんだとばれたら」
「覚悟決めろ」
牧野の腕を強引につかんで歩きだす。
まだ何か言いたそうな口元は無視して非常階段へと引っ張って歩いてた。
*このお話の秘書西田の観察日記はこちらです
そのまま押し倒したら駄目だぞ~
一言ご忠告を♪
余計なお世話と言われそう~
誰に?
拍手コメント返礼
RICO様
観察日記リクエストに貴重な1票ありがとうございます。
うっ・・・
ドンドン逃げ場をなくしている私(^_^;)
kobuta様
照れてる西田アンドロイド内面の感情はどう変化?
面白い題材ではあります。