ハロウィンの夜に 6

 *

「牧野」

類の差し出した椅子にちょこんと座る牧野。

相変わらずのミイラ状態。

その周りを取り囲んでいる花の四人組。

総二郎の差し出したカクテルグラスから一口ごくりと喉を鳴らす。

あきらの指先からは果物の果実をついばむ。

一歩出遅れた俺。

「牧野ぐるぐる巻きで身動きとれずにかわいそうだから」

類!俺に説明すんなぁッ。

それはまるでホストにかしずかれて世話をやかれているよう。

周りから上がる感嘆の声に嫉妬の混じった視線。

会場のざわつきが一段と激しさを増す。

「貸せッ!」

「俺が全部やってやるよ」

グラスも皿も全部とりあげた。

「司、お前が人の世話やけるのか~」

「お前がやけるのは嫉妬ぐらいのもんだろう」

うるせえよあきらに総二郎。

牧野のことなら俺の方が詳しいぞ。

牧野に近づけないようにこいつらの目の前に立ちはだかる。

「道明寺、マントから両腕だけでも出してもらえたら楽になるんだけど」

「そしたら自分で出来るし・・・」

「これじゃ楽しくないよ」

周りの女どもは代われるものなら代りたいって羨望のまなざしだぞ。

ぐるぐる巻きは俺もやり過ぎだとは思う。

腕を自由にするためにはマントを一度脱がないと無理だ。

少し見える足元の網タイツ。

それだけでもドキッとする俺。

俺意外のやつにお前のバニーの姿を見せるのは絶対ヤダ。

「無理!」「駄目!」「ヤダ!」

牧野の目の前で宣言する。

ふくれっ面で見つめられても動じる気はない。

「牧野あきらめな、司は独り占めしておきたいんだよ君のこと」

俺と牧野の合間にひょこっと顔を差し入れる類。

てめえが一番牧野に近いじゃねぇかぁぁぁぁぁ。

「どけっ類!」

俺に押し戻された類がほらねっというように首をすぼめる。

わかってんだったらちょっかい出すな!

「もう、帰るぞ!」

「えっ?」

「まだパティー終わってないよ」

「お前そのぐるぐる巻きのまんまでいる気かよ」

「絶対俺はこのマントをとらせる気はないからな」

詰め寄るように言って牧野を抱き上げる。

「構わねえよな」

「牧野は司に落札されたんだからいいんじゃねぇ」

「俺らも付き合ってもいいぞ」

からかい気味の総二郎とあきら。

そんな野暮なことお前らがするはずねえくせに。

「それじゃ、好きにする」

牧野を抱いたまんま歩きだす。

人込みは左右に分かれて進む道も簡単にできている。

「頑張れよ~」

背中に聞こえるあいつらのおせっかいな声。

何をがんばるのか。

意味を考えたら照れくせえよな。

「ちょっと、ヤダ」

「暴れんな、あんまし暴れるとここでキスするぞ」

「ウッ」

唇をかみしめてわずかな抵抗が影をひそめる。

「二人っきりのほうがいいだろうが・・・」

「微妙につかれそう・・・」

ポッと牧野の頬が染まった。

この後は~

これで終わりです。

今日がハロウィンだし・・・

間に合わないし・・・

ダメですか?

やっぱり続きは必要?

よく考えればハロウィンでもなんでもいいんです。

イベントを二人でいちゃいちゃ楽しめれば。