第12話 ないしょ?ないしょ!ないしょ!? 27
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「あっ西門さん、お茶!お茶立ててよ」
「はぁ?」
いいこと思いついた見たいに急に明るく表情が輝く牧野。
「国際交流!世界に茶道を広めるんでしょう!」
「ジョンも日本の文化に触れられるめったにない機会だし。
西門さんはこう見えても茶道の次期家元なんだよ」
「へぇ」
意外そうな表情で俺をチラ見。
チラチラ視線を合わさない感じで見られるのは女性だけに限る。
人の返事も聞かないでギュッと車に押し込める牧野。
俺の横に金髪の外人まで無理やり押し込んできた。
「牧野、お前こいつを俺に押し付けて逃げようなんて思ってないよな」
「そんなこと・・・」
ぶるっと横に振る顔はしっかり考えてる表情を隠してる。
相変わらずウソの付くのが下手すぎる。
牧野の腕を引っ張って車の中に連れ込んだ。
「逃がすわけねえだろう」
観念したように牧野が車のシートに腰を下ろした。
車は静かに走り出した。
つまんねぇと思っていた昼下がり。
思わぬ拾い物に期待感が高まる。
牧野が司を裏切るわけがないということが前提の好奇心、悪戯心。
これを逃がす手はない。
「・・・で、どう言うことだ?」
牧野をはさんで左に俺、右にジョン。
司が見たらこれだけでも相当機嫌が悪くなるぞ。
牧野が司の会社でバイトしてることから説明が始まった。
二人の男に言い寄られ、類を偽の恋人に仕立てた!?
そんな面白いこと今までよくも類も内緒にしてたよなッ。
そして残りの日数は司の秘書。
司の有頂天なフヤケ切った顔が浮かぶぞ。
そして今日、金髪のイケメンとデートしている理由。
「それじゃ、司は女性と牧野は一緒にいると思ってるわけだ」
「そう言うこと、私が騙したわけじゃないからね」
それなら今日の展開も納得できる。
「ばれたら大変だろうな」
「ばらさないでよ」
必死の形相に変わる牧野。
「でもこれも仕事なんだろう?」
「司が自分で付き合うように指示を出してるわけだし・・・」
「牧野を責めることなんて司には出来ないと思うけどな」
「それはそうなんだけど・・・」
不安げに牧野が口を閉ざす。
正論を言えば牧野は上司の指示を守っただけのこと非難を受ける筋合いはない。
理屈はそうなんだが・・・
理屈どおりに動かないのが司だ。
頭では理解できても感情が抑制効かねぇからなあいつの場合。
こと牧野に近づく男たちに関しては・・・と注意書きがつく。
「僕と一緒だったこと知られたら、昨日の様子じゃ、僕もただじゃ済まない感じだよね」
余裕な感じでつぶやいているジョン。
言葉の内容の割には危機感なんてゼロだぞこいつ。
「昨日の様子ってなんだ?」
「会食の席ででいっぱいつくしとのラブロマンスの話を聞かさたんだよね僕」
高校での運命の出会い。
別れ、再会、プロポーズの話。
自分の心を捉えて離さない運命の女。
健康しか自慢する様な事がないが自分は好きだ。
こいつも俺にべたぼれだ。
「俺はこいつしか目に入らないだったかな」
指を折りながら丁寧に考えるようにゆっくりとジョンが口にする。
牧野は少しずつ血のめぐりがよくなって今にも沸騰しそうな状況だ。
「目の前でそう説明された女性に興味を持つなと言われても無理ですよね」
世界でも名だたる道明寺の御曹司のハートを射止めた女性。
それだけでも好奇心を煽る。
そしてその女性がどんなに大事で愛してるかを照れもせずに喜々として自慢したんだろうな、司のやつ。
自分で災い迎え入れてる様なものじゃねぇか。
「つくしはおおらかで明るくてチャーミングな女性だよね」
「僕を特別扱いしない」
牧野を見つめる視線は熱い感情を秘めている。
完全に敵に塩を贈った状態に陥ってるぞ~ 司!
「牧野、このまま黙っておくと面倒なことになるぞ」
きょとんとなった顔はどうして?みたいな疑問符が大きくはりつてる。
ドンくせぇやつ。
ジョンの様子を見ればお前にしっかり興味持ってるじゃねぇかぁ。
「俺もついてってやるから」
そんな気になったのは・・・
司の反応が見たいから。
俺!結構面白がっている。
-From 2 -
「まさか会社に行くつもりじゃないでしょうね!」
それが一番困るパターン。
「イヤ、会社じゃ面白くないだろう」
「司も自分の立場を理解してるだろうしなぁ」
それに俺一人じゃ勿体ないって・・・
完全に道明寺で遊ぶ気満々だ。
会社のほうがよくないか?
結局西門さんの屋敷に茶室でお茶を点ててもらって時間をつぶす。
ジョンと二人でいるよりは三人のほうがイイだろうって、ホントにそうだろうか。
夕方近くには美作さんに花沢類まで集合。
イケメンに周りを取り囲まれた状態。
「つくしって・・・もてたんだ」
ジョンはこぼれそうな満面の笑み。
この状況で私に笑う余裕なんてあるわけない。
「ドタッ」「ドタッ」「ドタッ」
地響きを鳴らしながら近づく足音。
ヒィーッ
声にならない叫び声をあげてしまう。
突然開け放たれた障子。
「総二郎!牧野が男と二人でいたってどういうことだ!説明・・・・・」
道明寺の手前には美作さん、花沢類、ジョン、そして私が並んで座り。
対面して西門さんがお茶を点てている。
道明寺が最後の言葉を呑み込んで固まった。
いったいどんな説明を道明寺にしてるのよッ!
1点に道明寺の視線が集中して思案げな表情。
「誰だこいつ?」
やっぱわかるわけないよね。
「今日の私の接待の相手です」
なるべく明るく装っておどけた感じに言ってみた。
「はぁ~、男じゃねぇか!」
そうです昨晩の金髪女性はこの人の変装です!
説明する前に美作さんと花沢類を飛び越してジョンの襟首つかんでしまってる。
「道明寺さん、有意義な時間を作っていただいて今日は楽しかったです」
道明寺の凄みにも引くことなく対抗するようにジョンがしゃべった。
「その声・・・」
「アッ!おとこ・・・なんで?」
道明寺の腕から力が抜けてジョンから離れた。
「男性には女性の方が交渉はスムーズにいきますから」
悪びれずに私に話した内容を繰り返すジョン。
「今回の場合その手が使えなかったのは予想外でしたけどね」
軽く片目を閉じて私にウインクを送る。
道明寺が緩んだ表情で言った私への思い・・・
思いだして赤面してしまってた。
「こら!顔赤くすんな」
「えっ?」
ジョンの目の前から私を遮断するように道明寺の両手が私を覆うように抱きしめる。
もしかしてジョンに赤くなったと勘違いしてないか?
「牧野にジョンに付き合うようにって言ったのは司なんだってな」
口角を少し上げ鼻で笑て道明寺の肩にポンと手を美作さんが置いた。
「牧野は司の指示に従っただけなんだ~」
西門さんの点てたお茶を飲みながらのんきな調子は相変わらずの花沢類。
「ジョン、牧野が気にいったんだって」
爆弾を西門さんが落とした。
道明寺の顔がヒクヒク引きつている。
「道明寺がつくしに夢中な理由少しわかったような気がします」
ジョンまで火に油を注いでる。
このまま気絶したい気分。
目を覆いたくなるような状況が近づいてないか?
道明寺の顔が信号みたいに青から赤に変わった。
「言いたいことはそれだけか」
「こいつは俺んもんだ!ちょっかい出すな」
久々に聞く威嚇。
グルッ!って唸り声まで聞こえてるのは空耳か?
「・・・って、私は物じゃない!」
「誰のものでもないからねぇッ」
道明寺を突き飛ばして囲みから逃げる。
「大体ねぇ今回のことは仕事がらみなんだから問題ないでしょう!」
「お前自覚ないな」
道明寺の瞳があやしく光る。
獲物をとらえたような閃光。
「俺意外の男がお前の側にいるのは許せないんだ」
「いいか、俺意外の男とは会うな!見るな!しゃべんな!」
息つぎもせずに一気に怒鳴るようにしゃべられた。
鼓膜が破れそうだった。
「それは無理だと・・・」
「あっ!」
「いえ・・・」
反論できずに身を縮じめる。
ここはまずは落ち着かせよう。
「お前は俺のもので、俺はおまえのものだから・・・」
「よく覚えとけ」
背中から抱きしめた力強い腕の中、天上から静かに耳元に小さく届く甘い声。
何も言えなくて・・・
体中が火照る。
「つまんねぇ」
囁いたのは西門さん?美作さん?
どうでもよくなった。
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