第13話 愛してると言わせたい 14

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-From 1 -

夕暮れ時。

部屋の窓辺で西日の陰りを見つめてる。

そしてため息一つ。

ガキくせぇーデート。

それに喜んでいた俺。

体は正直だ。

すぐにでも欲してる相手は同じ屋根の下。

簡単に手に入れていたのはそんな前のことじゃない。

すべての感触をこの手が・・・

唇が覚えてる。

思い出すな!

変わったのはぽっかり抜け落ちた俺との記憶。

高校の頃の潔癖の守りをしいているあいつを押し倒すわけにはいかねぇし。

押し倒したら相当な抵抗に嫌われかねないよな。

あいつがその気になるまで、俺どんだけ待たされた?

ここにきてこんなことになるなんて・・・。

俺たち来年結婚すんだぞ。

出来るのかよーーーッ。

トントン

部屋のドアをノックする音。

不機嫌のまんまドアを開ける。

ひょこっと現れた顔に慌てて飛びのく俺。

「何慌ててるの?」

「なんでもねぇよ」

欲情している相手が急に現れればやべぇだろう。

「あのね・・食事だって」

「あぁ・・・今日はいいや」

「食べないの?」

「腹すいてねぇし」

「どこか悪い?」

眉をさげて背伸びをして華奢な腕が伸びて俺の目の前を素通り。

手のひらが俺の額にそっと触れた。

「熱はないみたいだけど・・・」

その手を思わず握りしめる。

ビクッとなった表情。

こわばる身体。

ギクッとした瞳が怯えてる。

手を握っただけじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁ。

俺の手の中から慌てて抜き取るように牧野の手が消えた。

「ごめん」

「ちょっと、今、頭の中がごちゃごちゃになっていて・・・」

「何考えてるんだよ」

「えっ?何って・・・」

「大したことは・・・」

奥歯に物が挟まったようなもの言い。

らしくねぇ・・・

おどおどした表情。

俺はまだ何もやってねぇぞ。

「お前、顔真っ赤だぞ」

頭の先から湯気が見えそうな感じに茹で上がってる。

「私たち・・・」

「んッ?」

「その・・・恋人同士だったんだよね?」

「何か思い出したのか!?」

「そう言うわけじゃないんだけど・・・」

わずかな期待感が一瞬で完全にしぼんだ。

ガクッとうなだれる。

「やっぱりいい!無理だわ。忘れて」

「無理って、何が?」

「途中でやめるな、気になるだろうが」

言わなきゃ帰さない。

その思いを知らしめるためにドアを閉めてドアの前に立ちはだかる。

「はっきり言え」

意を決したようにギュッと唇を結んだまま真っすぐな強気な瞳を向けられた。

その瞳に弱いんだけど俺。

少しの沈黙の後ゆっくりと牧野の口が開いた。

「私たちどこまでいってる?」

どこまっでって・・・

俺んちまで?

婚約まで?

どんな意味?

えっ?

あっ?

うっ?

つられるように俺まで体中が熱くなってきた。

今の俺の状況でそんな質問すんなぁぁぁぁぁ。

それとも渡りに船か?

 

-From 2 -

えっ?

ウッ?

なんだぁ?

どう説明すればいい?

こんな状況考えてもねぇぞ?

「それ聞いてどうなる?」

「・・・どうなるって言われても・・・」

「心構え」

キッと結んだ唇は意を決したような鉄製の構え。

「最後まで行ってるって言ったら・・・」

・・・。

・・・・・?

・・・・・・・・!?

「どうしよう・・・」

本気の困惑のぎみの表情。

どう答えればいいのか・・・

最後までやっちゃってます。

まだそこまで行ってねぇ・・・

(おまえの記憶の上では・・・)

どう言えばいい?

どっちだ?

答えかたがわかんねぇーーーーーッ。

「俺がホントのこと言ってるは限らねぇぞ」

「道明寺がウソつく必要はないと思うけど・・・」

相変わらず男の心理解ってねぇ返答。

どうしようもない気持ちを押しつけられるって考えないのかよ。

詰め寄った牧野は壁際に張りついて後がねぇ。

俺・・・お前にベタぼれなんだぞ。

「なんなら、確かめてみるか・・・・・」

わずかな沈黙。

少しの戸惑いとぎこちなさを合わせて唇を重ねた。

このまま唇を離すには勿体なくて・・・

わずかに漏れる吐息の先から舌を差し入れたのは男の欲情。

抵抗を拒むように腰を抱き寄せ頭を掻き抱く。

今までの経験の成果。

これで牧野の反撃は抑制されてるはずだ。

「・・・もう」

「あっ?」

離した唇がわずかに動く。

「こんなんじゃ答えになってない!?」

ごまかさないでって・・・

睨まれた。

別にごまかしてねぇぞ。

俺のキスに反応してたじゃねぇかぁぁぁ。

ここはうるんだ瞳で見つめ返すとか出来ねぇのか?

もしかして・・・

気がついてないとか?

こいつの場合あるかもしんねぇーーーーーッ。

本当に面倒くせーの好きになったもんだ。

本当にめんどくさい!

さっさとーーーーーって・・・

どうなるんだ・

この先は来週のお楽しみ♪

はたして二人の運命は♪