第12話 ないしょ?ないしょ!ないしょ!? 28
*-From 1 -
「最初から知ってたわけじゃないよな?」
あくる日の朝一番の執務室。
西田が今日の予定を俺に告げるいつもの日課。
「何がですか?」
相変わらず無表情の声。
「ジョンのことだよ」
「骨抜きにして自分たちに有利な条件を推し進めるという情報はつかんでいましたけどね」
「代表の場合は心配はしておりませんでした」
「つくし様意外の女性に対しては相変わらず冷淡でいらっしゃる」
予定の合間に軽く付け足された。
それ・・・
全然ほめてねぇ。
「さすがに女装までして入れ替わってるとは思いませんでしたが・・・」
俺は女装のことは喋ってねぇぞ。
いったいいつから知ってんだ?
「入国の時から解ってましたよ」
完全に俺の表情を読んで先回りされている。
「どうですわが社も女性の時は坊ちゃんが、男性の時はつくし様で充分対抗できるかと・・・」
笑えねぇ冗談。
「おい!まさか、ジョンが牧野を気にいると最初から思ってたんじゃねえよな!?」
椅子から身を乗り出すように西田に食い下がる。
「つくし様は人の心をつかむのがうまい、いい戦力になると思います」
メガネの奥がきらりと光ってねぇか?
「女装のこと黙ってたのは俺に邪魔させず牧野に接待させたかったから?」
最初から西田に仕組まれた?
「長い付き合いになりますからね、あちらの会社とは」
予定を言い終わりパタンと閉まる黒い手帳。
その中には他の情報もびっしり書かれてるのだろか。
「手の込んだことすんじゃねぇ」
「牧野を巻き込むな」
「いずれは坊ちゃんの奥さまとなられる方、いろんな経験を積むのも必要では?」
そうか奥さまか・・・
俺の奥さん。
牧野は俺の奥さんになるんだよなぁ。
西田に奥さまとなられるお方なんて言われるぞッ牧野。
緩みかかる頬に力を入れた。
これ以上西田に乗せられるのは癪に障る。
俺のそばでにっこりとほほ笑んで会社の為の何らかの対応はあいつにも求められる。
これも経験。
だからって男の相手なんてさせらっかぁぁぁぁぁ。
「今回のバイトもその一環の一つです」
「思ったよりもオモテになるものだ」
目元が優しくなってんぞ!西田。
当たり前だ俺が惚れた女だぞ。
同調してる場合じゃない。
「これ以上、貸さないからな」
威圧的に発する。
「申し訳ありません。ジョン氏の見送りにつくし様には行ってもらってます」
はぁ?
「ジョン氏のたっての希望で」
悪びれぬ態度で当たり前のように頭を下げる。
全然俺に悪いなんて思ってねぇだろう。
牧野が言っていた今日の午前中の仕事ってこれかよ。
「俺も行く」
「行き違いになりますよ」
「では・・・失礼いたします」
何事もなかったように秘書室へと引き上げる西田。
償いは必ずしてもらうからな。
西田じゃなく牧野になッ。
ギョッとなる牧野の表情を浮かべてニンマリとなった。
-From 2 -
自家用ジェットでご帰還。
ジョンもやっぱり半端ないお金持ちだった。
「一緒に行かないか?」
吸い込まれそうなコバルトブルー瞳。
それをふちどる長い睫毛。
柔らかそうな金髪が完璧なバーツを引き立たせる。
睫毛も金髪なんだ・・・。
まるでそれは映画のシーンを見てるようで見とれてた。
気がついたら抱きよせられて鼻先が触れ合いそうな距離。
「本気なんだけど」
わぁぁぁぁぁぁぁッ
映画じゃなかった。
「お・・・お断りします」
上ずる声。
身体を引き離すように両腕を突っ張る。
「残念」
「道明寺より先に会いたかった」
周りにいる誰もが魅了されそうな頬笑み。
やっぱ映画だよ。
洗練されたスマートな何気ない仕草。
女性を喜ばす感性は別格だ。
西門さんタイプだ~。
率直な道明寺の雰囲気のほうが私は好きなんだけど。
ここで比べてること道明寺が知ったら・・・
不機嫌な顔が浮かんで怒鳴り声まで聞こえてきそう。
ジェットに乗り込むジョンを見送って安堵のため息。
どこかでカメラが回ってるなんてことないよなぁ。
昼前には会社に戻れそうだ。
西田さんも何を考えてるのか。
「お見送りお願いします」
そう言われた時はなんのことかわからず面食らった。
「接待された方がお見送りされた方がよろしいでしょうから」
西田さんあの金髪女性がジョンだとは知らないだ。
私がいたらぬ心配しないように配慮してるとか?
あれほどの美人が道明寺のそばにいたら確かに落ち着かないかも。
自分なりに納得して了承する。
「ジョン氏によろしくお伝えください」
えーーーッ!
知ってんの?
いたらぬ心配するのは私じゃなく道明寺のほうじゃん。
西田さんの考えが見えない・・・。
今日のジョンの見送り道明寺は知ってるのだろうか?
出勤したら「何してた?」聞かれるだろうけど。
「無事に見送りました」
上司への業務報告で乗り切ろう。
・・・てっ・・・・考えは甘かった。
「お疲れさまでした」
いたわりの言葉の裏に何があるのか・・・・・
教えてはくれませんよね西田さん。
す~と席を立って道明寺の部屋へ続くドアを西田さんが開ける。
「どうぞ」
どうぞって言われても完全に道明寺の回りはどす黒い闇が広がってるのが見える。
この状況でこの中に一人で入れと本当に言ってるのだろうか。
「よろしくお願がいします」
よろしくお願いされたくないーーーーーッ。
一歩踏み入れた途端にパタンとドアが閉められた。
暗黒の魔境に踏み込んだような冷気。
「無事に見送りました」
「口説かれなかったろうな?」
最初から業務報告では終わりそうもない展開。
「えっ・・・まさか!」
「目・・・泳いでるぞ」
ゆっくりと近づいてくる暗雲と冷気。
「社交辞令みたいなもんだよ」
「向こうも私と道明寺の関係知ってるんだし・・・」
「何にもないからッ!」
束縛するように道明寺の腕が伸びて私を捉える。
観念したようにギュッと目をつぶった。
ガブッ
鼻・・・かまれた。
「ったく」
「西田にいいように扱われるぞ俺たち」
これで落ち着いて仕事ができるって道明寺の指先が私の頭を抱き寄せる。
「怒ってないの?」
「ば~かぁ、気分は良くねぇけど、お前が俺意外の男になびくわけねぇだろうが」
「この埋め合わせはしてもらうけどな」
「埋め合わせ?」
「もち、お前にな」
悪戯っぽい笑いを道明寺が浮かべる。
なんで私なのよーーーーッ。
続きは ないしょ?ないしょ!ないしょ!?29で
西田さんがやりすぎるとつけはつくしに♪
そんな法則が出来上がっていたりして・・・
どんな埋めあわせ♪
その前にお仕事だよ司クン。
拍手コメント返礼
ぞえこ様
人を引き付ける魅力があるからこそ面白くなると思っています。
花男の登場人物ってそれぞれに魅力的ですよね。
西田さん最近登場人物から離せません(笑)
道明寺家の平和維持は安上がり♪