第13話 愛してると言わせたい 18

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-From 1 -

「どうかしたの?」

牧野の異変には敏感すぎる反応を見せる姉貴。

「結婚・・・まだ考えられなくて・・・」

遠慮がちに言って俺に視線を投げる牧野。

こいつの口からの初めて聞いた結婚拒否的言葉。

俺も茫然となっている

確かに俺と婚約してることすっかり忘れている牧野。

でもしっかり記憶を取りもどさせるつもりでいた俺。

結婚は予定通りするものと思い込んでいた。

これ以上延期なんて出来るものか4年も待ってんだぞッ!

「司ッ!」

姉貴の顔が近づいて迫力半端でない圧力。

「つくしちゃんに何したの!?」

「おねえちゃんはつくしちゃんを義妹と呼べるのどれだけ楽しみにしてると思ってるのよ」

それ言うならこいつの結婚すること一番楽しみにしてるのは俺だぞ。

絞殺されそうな姉貴の勢い。

「俺は何もしてねぇって」

声をしぼるように何とかそれだけ言えた。

「つくしちゃん、司のこと嫌いになったってことはないわよねぇ」

牧野に哀願するような姉貴。

「嫌いというか・・・婚約したことも知らなくて・・・」

「えっ?」

姉貴の顔がキツネにつままれた。

「どう言うこと?」

答えをせかすように姉貴の視線が俺に訴える。

「事故で記憶が抜けてるの」

「なんで!」

理由聞かれても俺が答えられるわけがない。

「こいつの記憶16歳の頃に戻ってて俺にいじめられていた頃のことしか覚えてねぇの」

半分やけ気味に叫ぶ俺。

「最悪じゃん」

姉貴の視線が同情に変わった。

「でも私のことは覚えてくれてるんだ」

それだけでもうれしいって・・・

それが実の弟に対する態度かよ。

姉貴に慰めてもらうつもりなんてねぇけどなッ。

「この状況じゃ司と二人って言うのも苦痛よね」

姉貴・・・何言い出した?

焦り気味に姉貴の顔を眺めた。

「だって司のこと嫌いな状況なんでしょつくしチャン」

イヤ・・・

記憶なくした最初の頃よりは俺のこと受け入れてると思うけど。

なんせさっきまでのキスの余韻。

甘く反応していた牧野・・・。

俺のこと受け入れてるとしか思えない吐息。

姉貴の言葉にコクンと頷く牧野。

それはねぇだろうがぁぁぁぁぁぁ。

矛盾してんぞ。

姉貴の前で牧野を責めることなんてできるわけなかった。

「こんなバカほっといて私に付き合って、つくしちゃん」

えっ?

あっ?

寄り添うようにつき従った姉貴が目の前から牧野をさらっていく。

「おい!姉貴!」

「たまには女同士も必要なの」

「任せなさい、悪い様にはしないから」

あんたは邪魔!的視線で抑制された。

冗談じゃねぇーーーーーーッ。

「俺もついていく」

ハ~ア~

しょうがないとでも言うように長い溜息をつく姉貴。

結局・・・

逆らえない俺。

取り残されて閉められるドア。

「ドン」

思い切りそのドアを蹴りあげる。

「バキッ」

靴の跡がしっかり残された。

 

-From 2 -

「こんなに食べられません」

目の前の高級お寿司を見つめてつぶやく。

「似たような反応だね」

「記憶なくしてもつくしつくしちゃんはつくしちゃんで安心した」

人を魅了してやまない極上の頬笑み。

向けられて照れるのは何となく道明寺と似ていると思うからか。

ふとした横顔・・・

やっぱり姉弟だよなぁ。

「食べて、食べて、今日はなんでもごちそうしちゃうから」

勧められるままにお寿司を口に放り込む。

「おいしい~」

心の底から絶賛。

いくらでも入りそうだ。

「ホント、つくしちゃんて幸せそうに食べるよね」

「今度いつ食べれるかわかりませんから」

口を動かしながらつぶやいてまた一つスシをつかむ。

「前もこうやって一緒にお寿司食べたことあったんだけど覚えてる」

口の中のスシが邪魔して口が開けずに首を左右へと振った。

「司が好きで好きで大好きだって私に言ってくれたんだけどなぁ」

「ゴフッ」

お寿司がのどに詰まった。

慌ててお茶を流し込む。

眼が白黒になってないだろうか?

「大丈夫?」

「そんなにびっくりした?」

私の顔を覗き込みながら背中を優しくさすってくれている。

びっくりするに決まってますよ。

大っきらいで出来れば接点を持たずに過ごしたいと思っていた相手。

それが恋人同士だと知らされて信じられず・・・

道明寺と過ごした数日間で好きなのかもと思って・・・

そしたら私たちの関係行きつくとこまで言ってるみたいだし・・・

動揺して、動転して、落ち込んで、受け入れるには私の記憶はあいまいで・・・

今度はお姉さんに道明寺のこと好きだって私が告白!?

思いもよらない反撃。

海の向こうから突然ミサイルが飛んできた気分。

「全く覚えてません」

「そうか・・・告白の状況は最悪だったからねぇ」

「でも私はすごくうれしくて、感動して、つくしちゃんの味方になろうってますます思っちゃったんだけど」

「司のことは抜きにしても私はつくしちゃんが大好きだからね」

素直に喜んでいいのだろうか?

最悪の状況での告白って何なのだろう?

喧嘩して・・・

ケンカして・・・

別れる寸前とか?

スキって告白した状況を考えると私がふった展開は・・・薄い。

「気になります」

「えっ?」

「どんな気持ちで私道明寺のことスキってお姉さんに告白したのかなって思って・・・」

「ここまでくるのに紆余曲折いろいろあったからあなたたち」

「それでもここまで来たんだもん、記憶がなくても大丈夫よ」

大丈夫って・・・

その楽観的展開はやっぱり道明寺との血の濃さを物語っている。

「今日は何もかも忘れてパーッと楽しみましょう」

あの・・・

私・・・

記憶を・・・

取り戻したいんですけど・・・

私の気持ちなど問題ないように椿お姉さまはにこやかにほほ笑んだ。

続きは愛してると言わせたい 19

拍手御礼

nanako様

起爆剤的要素高いかもしれません椿お姉さま。

いつも重要なところで登場しますものね。

善意に満ちた破天荒ぶりはいいですよね。

3Dは怪盗グル―を見てきました。

3Dは頭が痛くなるので苦手です。