第2話 抱きしめあえる夜だから 26

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-From 1 -

ベットから離れるのが億劫になる目覚め。

腕の中にすっぽりと収まる裸体を確かめるように抱きしめる。

肌に直接感じる体温のぬくもりをむさぼるように顔をうずめる。

・・・

・・・・・

・・・・・・・?

気がついたら枕を抱いて眠ってた。

「もう昼だよ」

くしゃくしゃにほころんだ顔が鼻先で弾ける。

「先に起きたのか?」

身支度を完全に整えてしまってる。

さっきまでの手触り・・・

もっと感じていたかった残念な思い。

押し倒すつもりで自分の胸元へ押し込めるように腕をとる。

「キャッ」

短めの悲鳴を発してすっぽりと愛しい体は膝の上へと収まった。

「食事・・・作ったんだけど」

悪戯をたしなめるような口調。

愛しむように背中から回した腕に力を込める。

「ねぇ、今日は海で泳ぎたい」

腕にもたれるように上目使いの甘える視線。

なんでもかなえてやりたくなる瞬間。

どうしようもなくなる。

「プライベートビーチあるぞ」

俺たち以外誰も立ち入らない白い砂浜。

「その前に水着!買わないと」

「たぶん準備してあると思うけどな」

じーっと俺の顔を覗き込きこむ強気を込めた瞳。

「ショッピングもしたいの」

ハワイに来てまだ観光地以外はどこにも行ってない俺たち。

勝手に俺が準備してトランクに放り込んだつくしの荷物。

必要なものがまだあるって愚痴られてた。

「それに水着を道明寺に選んでほしいし・・・」

頬を染めながらしおらしくつぶやく声。

その声が心に甘く響く余韻。

緩んでくる口元。

隠しようもなくなった。

「買い占めるか!水着」

「そんなに必要ないでしょう」

「道明寺の場合本当にやりそうで怖い」

「こっちの水着がお前に合うかな?」

つくしの全身に視線を走らせからかう俺。

「どうせ子供用だよ」

拗ねて膨らんで弾ける笑い。

笑い声を残して俺の腕から離れるつくし。

追いかけるようにベットから俺は飛びした。

「キャー」

「もう、早く服着てよね」

背中を向けて恥ずかしがるつくし。

いつも見てるだろうが。

今さらだろう。

「プライベートビーチなら水着もいらねぇぞ」

「それはヤダ」

「目のやり場に困る」

これ以上には無理なくらいにつくしの顔が真っ赤に染まった。

 

-From 2 -

車庫の中には数台の車。

たまにしか滞在しない別荘にも車を所有してるって呆れるほど贅沢だ。

「これでいいか?」

その中から道明寺が選んだのは銀色のクーペ。

リムジンよりは目立たないがイタリアのマセラティ

どう見てもやっぱり高級車?

「運転手もSPもなしだ」

「行くぞ」

「うん」

道明寺の笑顔に誘われる様に私の頬も自然と緩む。

「わ~あ」

広いオープンエアのショッピングモール。

すれ違うのは日本人?

時々混じる外国人。

ハワイだということを忘れてしまいそう。

さわやかな風が吹き抜け、明るい陽射しが降り注ぐ広々としたモール内は南の島の雰囲気。

並べられた服のサイズを見て日本じゃないんだと痛感できる。

「好きなの選べ」

目移りしてなかなか決められない。

服を見ながら悩みぬく。

欲しいの水着なんだけど・・・

しばらくして本来の目的を思い出した。

店内を歩いて水着を探す。

やっぱり子供サイズか・・・

「これ、すげーぞ」

一つの水着を見つけて目の前に広げる道明寺。

表情が悪戯っぽく変わる。

布なんてごく少量のビキニ。

Tバックに胸の面積なんて数センチ?

水着の意味はなさそうだ。

「こんなんじゃ泳げないじゃん」

プライベートビーチじゃ俺しか見ないって、緩む頬。

つけてないほうがましな様な水着。

誰が着るもんか。

「普通のビーチでも泳いでみたいもん」

拗ねたようにつぶやく。

「じゃこれな」

見つけてきたのがウェットスーツ。

水着じゃないよーーーッ。

他のやつがお前の水着姿見るのはイヤだとマジな理屈。

これなら安心だって、ビーチでウェットスーツなんてこっちの方がよっぽど目立たないか?

あの・・・

そこまで人目を引くプロポーションはしてないと思うのですが・・・。

あれやこれやと言いあいながら無難に何とかまともな水着に落ち着いた。

「きゃあ~牧野さん」

突然声をかけられてギクッとなる。

だ・・・だれ?

もう接点はなくなったと思っていた「ジュンちゃん」「アイちゃん」のお気軽カップルの片割れが一人。

「ホテルにいないから心配しちゃった」

別に心配される様なものではないと思うのだけど・・・

「いまどこに泊ってるの?」

Loa Ridge。

高級住宅地の別荘ですなんて言えるはずもない。

「・・・まあ・・・そこそこなところに・・・」

歯切れが悪い対応。

「おい、行くぞ」

私の横の道明寺は不快感丸出しで次に言葉を発したら怒鳴りだしそうな雰囲気だ。

「ごめんなさい急いでるから」

穏便なうちにここから離れよう。そう思ったら、1歩踏み出して身体が止まった。

アイちゃんにバックをつかまれている。

「何?」

「ジュンちゃんとはぐれちゃって」

今にも泣き出しそうな表情に変わる。

「ホテルに帰ればいいだろう」

冷たく言って道明寺が私のバックを取り戻す。

「帰り方わかんないもん」

「ここであなたたちに会えたのも神様のお導きでしょう?」

「見捨てないで、お願い」

にじり寄って腕を掴まれる道明寺。

なんだか少し嫌な感じ。

自分がお願いすれば聞いてくれる的な光線を道明寺に向けたのが気にくわない。

嫉妬心がフッと浮かぶ。

が・・・

道明寺のこめかみに浮かぶ青筋がその嫉妬心を押し込める。

「さわんな!ブー」

ブスまでは言わせないように口を背伸びして塞いだ。

「ホテルまでは送ってやれば・・・

知らないところでと一人は心細いよ」

「ったく」

道明寺に舌打ちされてしまってた。

このバカ!

言われてるような気がした。

続きは抱きしめあえる夜だから27

なんだかな忘れかけたころにバカカップル再登場です。

まとまりがつかなくなってきそうな展開が少し心配ですが・・・

大丈夫なのだろうか・・・

拍手コメント返礼

kayoko

早朝からのご訪問ありがとうございます。

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メール返信させていただきました。

b-moka

何やらもっとやらかしてもらいていと考えての再登場です。

ここからまた試練?