第13話 愛してると言わせたい 19

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-From 1 -

姉貴に任せておけば大丈夫だ。

いつも俺のことを本気で考えてくれる姉貴だから・・・。

ホントにそうか?

最近の一番のお気に入りは牧野だし・・・

俺が嫌がることはしても牧野が嫌がることは絶対しないって鉄則持ってるもんな姉貴の場合。

ついてくるなと念を押されてそれに素直に従うのは断じて姉貴が怖いからじゃねぇ。

単なる言い訳。

いつまでも頭があがんない。

ねぇチャンの睨み・・・

今でもビビる時あるんだ。

何するつもりだ!

牧野連れだして・・・

まずは記憶を取り戻す算段。

どこ連れまわしてる?

何してる?

考えてもわかんねぇーーーーーーッ。

部屋の中を飽きるほど歩きまわっている。

ドアからソファーまでの距離15歩。

ベットまでそこから20歩。

覚えちまったぞ。

テーブルまでは10歩だったか・・・

今の牧野は牧野であって牧野じゃない!

頭の中は高校生。

俺のキスの反応はあのころよりも柔順だぞ。

余計なこと思い出してしまってた。

これなら・・・

ついて行った方が落ち着けた。

「アーーーッ」

叫んでエネルギー発散。

そのくらいじゃ間に合わねぇよッ。

あいつが事故に遭わなければ・・・

欲望を情熱に変えて久しぶりの逢瀬を満喫。

出来たはず・・・

それでも姉貴には邪魔されていただろうけど、俺がここまで悶々とすることはなかったはずだ。

艶やかな黒髪。

熱を帯びて色づく白い肌。

重ねるごとに漏れる熱い吐息。

想像すんな!

思い出すな!

自分で自分の首を絞めている。

部屋の外から感じる人の気配。

聴覚は必要以上に冴えている。

「いいんですか、こんなに」

「気にしないで」

バタンとノックもせずに開いた扉。

先頭には姉貴。

その後ろに牧野。

そして・・・数名の荷物持ちと化したSP。

「全部司の支払いだから」

にっこりとほほ笑む姉貴の後ろでギクッと牧野の身体が固まった。

道明寺に買ってもらうつもりはありませんと言いきる牧野。

姉貴は良くてなんで俺じゃダメなんだ。

「気にしない、気にしない」

「いつも迷惑かけられてるだろうから迷惑料だと思いなさい」

そんなに迷惑かけてるつもりはねぇぞ。

好きな女にプレゼントするのは男の喜び!くらいの事を言ってくれ。

結婚準備のための買い物・・・

じゃ・・・・・なさそうだ。

「何やってたんだ?」

「お寿司を食べて、二人でショッピングを楽しんだの」

「なかなか有意義だったわよね」

「いろんな話をしてやったわよ」

「司の小さい頃のわがままぶりや、動物がてんでダメな臆病者だとか」

「お姉ちゃんと寝るって私のベットに入ってきてたのっていくつまでだったけ?」

姉貴!それ以上しゃべるな!

「ガキの頃の話だろうがっ」

面白い話が聞けたって心の底からの笑顔が牧野の表情に浮かぶ。

俺で笑うな!

言いかけた言葉を緩む頬で呑み込んだ。

牧野が笑えるんなら道化でもなんでもやってやろう。

そんな気にさせるやさしいほほ笑み。

見られるんなら何にもいらない。

「司が好きで好きで大好きだって昔は私に告白してくれたんだけどな・・・つくしちゃん」

「「えっ!!!!!」」

牧野と思わず視線がぶつかる。

「さすがに今日は聞けなかったわ」

姉貴の顔がニンマリとなった。

 

-From 2 -

何となく・・・

ただ何となく・・・

流れる気まずい思い。

それはきっと牧野の方。

司が好き

好きで好きで 

大好きでーーーーーッ

間違いなく俺のことだよな。

今じゃなくてもかまわねぇ気分。

姉貴に告白してたなんて、可愛とこあるじゃねぇか。

「でれーっと、しないの」

いつの間にか俺の隣に寄ってきた姉貴にポンと肩をたたかれた。

「好きって聞いたの・・・」

「あんたがつくしちゃんを振った後だからね」

「・・えっ?俺は牧野を振ったことなんかねぇぞ」

姉貴が呆れたように強い視線で俺を凝視。

「なっ・・・なんだよ」

「忘れちゃったんだ・・・。」

呆れたように溜息。

「それとも全くそんな気はなかったって・・・事はないよね。大河原と婚約寸前までいってたんだしねぇ」

「あ~ッ!」

大声でごまかして牧野の様子を盗み見る。

聞こえてないようだとホッとする。

「それは今は関係ないだろうが」

「それにそのことだけは思い出さなくてもいい記憶じゃねぇの?」

牧野に聞こえないように小さい声で姉貴にしゃべる。

パカッ!

「テッ」

姉貴の腕が頭に降ってきた。

「そんな自分の都合がいいように記憶が復活するわけないでしょう」

「本当に情けないんだから」

「まあ・・・この馬鹿さ加減が可愛いのよねぇ」

フッって・・・鼻で笑われた。

そこで笑われる状況ってありなのか?

これでも世界を相手に駆け回わる道明寺ホールディングスの代表だぞ!

いつまでたっても姉貴には子供扱いされている。

「まあ、こんなやつだけど、つくしちゃんお願ね」

にっこりと極上の姉貴のほほ笑み。

コクリと牧野がうなづくのがスローモーションのように見える。

笑顔の下には拒否できない凄みがある。

それに牧野は気がついているだろうか?

やっぱお袋の血をひいてるよ。

「司、つくしちゃんに夜這いなんてかけるんじゃないわよ」

「えっ?」

俺より牧野のほうが真っ赤になってんぞッ!

姉貴の考え見えねぇーーーーッ。

茶化されてねぇか?俺たち。

「じゃあまたあとで」

出ていく姉貴を牧野と見送る。

そして・・・

何となく・・・

ただ何となく・・・

流れ出す気まずい雰囲気。

「姉貴のやつ馬鹿言ってやがる。気にすんな」

雰囲気を吹き飛ばすように大げさに動く。

これも何か変だ。

「何も・・・しない?」

何もって・・・

牧野のもじもじした雰囲気、察しはすぐにつく。

さっきまでの一人での妄想をグッと押し込めて頭の奥から放り投げる。

そのままキャッチしそうだ。

今は出来ねえよな・・・。

「ああ」

気のねぇ重たい返事。

邪な思いを1メートル先に追いやった。

「キスも、抱きつくのも禁止だからね」

少し牧野の口調が強くなっている。

そこまでしたら押し倒しかねない。

うなづきながら抱きしめたいと思う心。

あぶねぇ・・・。

「なあ、一つだけ聞かせろ」

心を切り替えるための問いかけ。

「なに?」

「俺のこと今は好きか嫌いか、どっちだ」

牧野をじっと見つめたまま視線を外せない俺。

「たぶん嫌いじゃないと思う」

愁いな表情がはにかむ様に変わった。

嫌いと返って来ると思っていた。

嫌いじゃない・・・

ってことは俺のこと好きだってことだよな?

えっ?

おっ?

へっ?

頬が緩む。

墓穴を掘ってしまった・・・。

続きは愛してると言わせたい20

拍手コメント返礼

b-moka

椿お姉さまはいつもいいとこどりですからねぇ。

見せ場になるのかな?

ルール様

ご連絡ありがとうございます。

まだまだお付き合いのほどをよろしくお願いたします。