第13話 愛してると言わせたい 20

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-From 1 -

「微妙に怖いんだけど・・・」

手をのばしても届かなそうな距離から牧野が覗き込む。

「怖いってなにが?」

緩んだままの表情で問いかける。

「道明寺・・・変」

お前が仕向けてるんだよ!

言っても気がつかないだろうな、こいつの場合。

「お前が俺のこと好きって言うからだろう」

「嫌いじゃないと言っただけだよ」

膨れかける両側のほっぺ。

「ちょっとは道明寺のこと見なおしたから最初の頃よりは嫌いじゃなくなったっていうか・・・」

「それだけのこと」

「それ以外のことは何もない!」

「うん、たぶん、そう言うこと」

俺から慌てた様に視線を外す牧野。

しどろもどろ気味で、なに自分に言い訳してるんだか。

それがおもしれぇ。

プッと思わず吹き出す笑い。

「やっぱ見てて飽きねぇなぁ、お前」

ククッと笑いが止まんなくなる。

「笑わなくてもいいでしょう!」

強気な視線も心地いい。

「タコになってんぞ」

そしてまた声がこぼれた。

「だから笑うなって」

突然俺の口元を牧野の手のひらが覆う。

本気で怒ってねえぞお前の瞳。

緩んだ表情のままの俺が黒い大きな瞳に映る。

このまま吸い込まれそうだ。

無意識で見せるあどけない表情。

たまんなくなる。

それじゃ警戒してないと言ってるようなもんだ。

最初の「怖い」はどこ行った?

そっと両手で牧野の手のひらを包みこんで口元から外した。

「やっぱ俺のこと好きだろう」

「だから嫌いじゃないって」

「好きに近い嫌いだろう?」

牧野が嫌がらないのを良いことに手を握ったまま離さない俺。

「嫌いに近い好き・・・」

拗ねる様な色合いを含む声。

「結局好きじゃねぇか」

俺のこと好きだと認めたほうが楽だと思うけど。

主導権は握ってると解る本能。

牧野が俺のこと嫌いになれるはずねえもんな。

きっともう細胞の中にしみ込んでるはず。

「全然重点が違う!」

「嫌いが70%の好きが30%みたいな・・・も・の・・・」

触れ合いそうな鼻先き。

それを引っ込めるように牧野が首を後ろに動かす。

「すぐに反対にひっくり返してやるよ」

「そして100%になる」

かすかに触れる唇。

「嫌いな奴とキスすることなんてできないだろ」

「お前の場合」

みるみる赤く染まる頬。

「だっ・・・」

唇を塞いで言葉ごと呑み込んだ。

呑み込んだ言葉は大嫌いだろうか?

そんな考えが頭をよぎる。

素直じゃねぇやつ。

-From 2 -

「どさくさにまぎれて、キッキキキスなんてしないでよね」

キキキキって・・・

キスが発音できねェでやんの。

キツツキが木を突っつく音の様に繰り返される吃音。

唇を離したまま眼が泳いでどこかに行きそうな牧野。

さっきより顔が茹で上がってる。

やっぱおもしれぇ。

「嫌じゃねえだろ俺とのキス」

俺もさっきからいい加減にネチッこい。

あたふたとしながら言葉とは反対の態度をとる牧野がおかしくて、嬉しくてとまんねぇ。

言葉では嫌いとか、馬鹿とか言いながら、その拗ねたような甘えるような仕草を見せてるもんな。

やっぱお前は俺のもんだろう。

ニンマリとなる。

「やらしい笑いしないでよね」

視線を外して背を向ける様に牧野が俺から離れた。

「べつにやらしいことなんて考えてねぇーぞ」

「顔がやらしくなってるもん」

「まあ、お前のこと考えれば自然とな」

わざとらしく言った俺に、ほらまた赤くなってんぞ。

「嫌がることはしねぇって言ったろう。心配すんな」

牧野との距離を縮めながらつぶやく。

牧野の髪に息のかかる距離。

抱きしめたら逃げるのだろうか?

「もう!あんなことするから眠れなかったらどうすんの!」

「昨日もあんまり眠れなかったのに寝不足だよッ」

背中を向けたまま顔を上にそらせるように向けられた。

キッと眼を見開いて見つめる黒い瞳

それに弱いってーの。

あんなことって・・・

キスだよな?

それで眠れなくなるって、感じてんのか?

牧野ってそんなことされりといえるやつだったか?

心臓がドキドキしてきたぞ。

「お前、なに言ってる」

俺の方が照れくさくなるだろうがぁぁぁぁぁ。

焦っちまった。

「まだ好きだと認めてわけじゃないのに・・・あんなキス・・・」

「困る・・・悩み増えそうだよ」

もしかして眠れねぇのは悩んで眠れねえってことなのか?

焦って損した。

「俺のこと好きだって認めれば楽になるんじゃねぇの?」

「それじゃヤダ」

「はぁ?」

「きっとたくさんの思い出が記憶の中にあったはずだから」

「思い出したいもん、道明寺との思い出」

火が顔から出そうなくらい赤くなってる牧野。

「キャッ」

我慢できずに背中から抱きしめる。

「何もしねえからこのままいさせろ」

耳元でつぶやいて牧野を抱く腕に力を入れる。

嫌いと言いながらどれだけお前は俺のこと好きなんだ?

「愛してる」

つぶやくように耳元でささやいてもう一度牧野の身体をギュッと抱きしめた。

続きは愛してると言わせたい21

もう記憶思い出さなくてもいいじゃん!

そんな気分に陥ってます。

勝手にやってくれ~ってね。

まだ記憶どうやって思い出させるか悩んじゃってるんですよね。(^_^;)

拍手コメント返礼

kobuta様

大丈夫ですよ。

必ず記憶はとり戻して甘アマで~