パパの憂鬱

初コラボ作品

skysky7様の作品『冬が始まるよ』のイメージが膨らみ初のコラボ作品を作成してみました。

牧野パパ目線のお話です。

 *

久しぶりにつくしが家に帰ってきた。

一人暮らしを始めるためにつくしが借りたアパート。

今は家主は留守でほとんど帰ることはない。

大学を卒業したら嫁に行くと分かっていたがその前に婚約者の屋敷に住み込みとなった。

花嫁修業だとわかっていてもパパは淋しい。

勿体ないとつくしがアパートを解約しないのはパパへの配慮と思いたい。

普通の家からとてつもないお金持ちのところへ嫁いでいくのだから、庶民にはわからない苦労もあるだろうとママと語り合ったものだ。

「もうやめーた!!!」

なんて帰ってくる経緯はさらさら見られないのが残念でならない。

虚ろな妄想。

それはやっぱり惚れた彼氏がいいのはわかるが、つくし!お前はまだパパの娘だ!

冬物を取りにアパートへ帰ってきたつくし。

それを聞きつけて駆け付けた牧野家総動員。

その荷物をアパートから出すために運んでいたがちょっとした気の緩みからか階段から転げ落ちたつくしとママ。

つくしはSPのお兄さんに助けられたがママはすとんと落ちて骨折。

邪魔にしかならなかったな。

つくしごめんなぁ。

つくしは家事を手伝うために家に残ると言ってくれた。

道明寺さんは許可をくれるのかと思いながらもつくしの心遣いは嬉しい。

優しい娘に育ってくれた。

やっぱりパパとママの子だよなぁ。

それなのにパパは情けない!

ママが怪我したのはこれ幸いと喜ぶ。

ママに知れたら何と言われるか。

つくしが怪我したと思いこんだ道明寺さんが慌ててアパートまで駆け付ける。

家に残るというつくしに手伝いなら屋敷からよこすとおっしゃるがそれは少し気が引ける。

ここで敬語が浮かぶパパはどこまでも道明寺さんには低姿勢だ。

つくしが頑として受け入れなかったから助かった。

久しぶりに4人がそろう食卓。

我が家のエンゲル系数から食事の内容は想像してほしい。

ささやかな食事も楽しいものだ。

そう感じたのは最初の1日だけだった。

翌日。

ピンポ~ン♪

我が家には珍しい夜の訪問者。

借金取りが来るはずはないから今は安心だ。

パパも学習してるんだぞ。

「どうも、お邪魔します」

頭を下げる将来の義理の息子。

威圧感、存在感は最高級だからどうも落ち着かなくなる。

これが生まれ備えた経営者の器と使用人との差なのだろう。

良くつくしは耐えられるものだ。

「ちょ、ちょっと、どうしたの?何しにきたの?」

「ん?お母さんのお見舞い…と、おまえに会いにきた。」

一瞬にしてつくしの顔から火がふいた。

「ななななに言ってるのよ!パパたちの前で!」

小声で応戦するつくしだがしっかりパパにもお前の慌てぶりはわかる。

「まぁ、せっかく来てくださったんだから、夕食くらい出して差し上げなさい。」

家族四人が見つめる前でおいしそうに未来の息子は箸を進める。

このときはまだ自分が言った言葉にどれほど後悔するか思いもよらなかったんだ。

それをつくしがうれしそうに見つめる。

お前のそんな顔、小学校の頃まではパパに見せてくれてたんだけどな。

「パパと結婚する」

言ってくれてたころが懐かしい。

泣きそうになって押さえる目頭。

娘なんか持つものじゃないと心の中でつぶやいた。

5人で囲む夕食も今日で7日目。

徐々に落ち着かなくなっているのはつくしを除く家族3人。

朝から今日も来るのだろうかとため息が出る。

別に嫌ってるわけではない。

つくしの作ったご飯を美味しそうに食べて・・・

つくしの顔ばかりみてる道明寺さん。

帰る道明寺さんを玄関で見送るつくし。

我が家は玄関での出来事も居間まで筒抜けなんだぞ。

そのままつくしを連れて行きたげな道明寺さんの雰囲気。

見てないふりで新聞を読むふりをする。

未来の息子をさんづけで呼ぶ気弱さはパパぐらいのものだ。

酔っぱらっちゃおうかな・・・。

明日に回すはずの残りのビールに手が伸びる。

我が家のビールは未だに1日1本飲めないんだ。

「お姉ちゃんたち、なぁにイチャイチャやってんのぉ~?」

「こらっ!進!生意気言ってんじゃないの!」

進はいいよなぁ・・・

言いたいことつくしに言える。

「“イチャイチャ”じゃねぇもんな。“ラブラブ”だもんな。なぁ、牧野?」

「どっちも変わんないし…それに、どっちでもない!」

全部聞こえてる。

仲がいいのはうれしいことだが、あてられる雰囲気が娘とその彼氏だと心の中に波風が立つんだよ男親には。

「娘はやらん!」

腕組みして言ってみたいものだ。

グッと手を伸ばしてつかんだビール瓶をラッパ飲みした。

本編etc.(読み物のある場所)様『冬がはじまるよ』にもぜひお立ち寄りを♪

注)この作品はetc.(読み物のある場所)様に寄稿したものを元にしてあります。

本編を読んでなくても想像できるように寄稿した作品にお話の流れを少し付け足しております。

拍手コメント返礼

b-moka

ありがとうございます。

コラボ楽しんでいただけたようでうれしいです。

第二弾書きあげましたよ♪