秘書西田の坊ちゃん観察日記 12(抱きしめ合える夜だから 番外編)
このお話は『抱きしめあえる夜だから 23 』のお話を西田さん視点で書いています。
*タン!タタターンタン!~
聞こえてくる音律はベートーベンの英雄。
けたたましく鳴る携帯音。
そう聞こえるのはその音が代表からだと告げているせいか。
「もしもし、お待たせいたしました」
日本は夜中の2時です。
心の中で非難。
「何考えてるッ」
責められる内容はわかっている。
それは誰にも知らせるなと言われていた休暇先をばらしたこと。
突然の2週間の時間の調整の命令。
理由は「新婚旅行につくしを連れて行きたい」否定は許さないという代表の態度。
はぁ~と心の奥で溜息が洩れる。
何と言うお優しさ
・・・と
私が涙を流して納得するとは思ってないでしょうね。
つくし様のいらっしゃる弁護士事務所に大学の同窓の松岡公平が修習実習で来ると言うことははつかんでいます。
その松岡公平氏がつくし様に好意を寄せてることを代表が御存じなのも。
休みを調整しろとご命令を受けたのはその日の午後。
それがまさか・・・
その期間を松岡公平とつくし様を一緒に過ごさせないための策略に新婚旅行を餌にされるとは。
さすがにそこまでは私の想像を超えました。
もっとほかのことで私を感心させてほしかった。
そこまで邪魔をされなくても問題は起きないと・・・
言えずにいるのは不機嫌になると察知している今までの経験からに他ならない。
このことを利用できるものはないかと思考が最速に活動する。
ついでの様に思い至ったのが今回のパーティー。
初めての海外での道明寺夫妻の登場。
つくし様が慣れるには手ごろいい。
軽めに噂が飛び交う方がよい。
小さいが各国の大使が少なからず集まる格式あるものだ。
これ以上の見せ場はないであろう。
坊ちゃんに言われなくてもそれほど私も野暮ではありません。
心配せずともそれ以外のことは策略してはおりません。
「これ以上邪魔したら日本に帰らねぇからな」
低い低音の声が携帯から響く。
もしもこれ意外の邪魔をしたとしても我々を見捨てて自分の立場を放棄される方とは思っていません。
それにそのようなことをつくし様が許されるはずはない。
小さな拗ねる様な色合いもただの愚痴。
しっかりと了承されてると分かっています。
「もちろんです」
「数時間の束縛は2週間の休みを調整したことの歪みと思っていただきたいのです」
携帯の向こうへ緩やかな対応。
「ったく、お前には負けるよ」
クッと笑みを含んだ返事。
最近は聞きわけがいい。
「楽しい時間をお過ごしくださいませ」
そう言って携帯を切った。
日本をお二人が離れるまでにどれだけ私の仕事が増えたことか。
フライトの手配につくし様に内緒だという司様の考えを考慮しての準備。
さすがに女性の方のお泊りの準備など私の想像範囲外なのでお屋敷の使用人頭に任せた。
パスポートにホテルの手配。
スウィートはイヤだという可能性のあるとつくし様を顧慮して一般の部屋も手配。
出国が公に漏れないように手配する。
よほど普通に道明寺の名前で旅行に行てもらった方がどれだけ私の心労は軽減されるか。
全く手のかかるお二人だ。
それを楽しんでいる自分がなぜだか楽しい。
帰ってきたらみっちりとこの苦労は2倍でお返しいたします。
久しぶりの西田さん視点です。
まだまだこの西田さん日記は広がって行きそうで♪
拍手コメント返礼
マリエ様
西田さんの白髪が増えたら司のせい?
円形脱毛とかも心配だったりして(^_^;)