第2話 抱きしめあえる夜だから 30
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「土産なんていらねぇだろう」
特に類や総二郎やあきらには。
ギュッと手を伸ばしたまま背伸びをしてソファーにもたれかかる。
「ハワイといえばやっぱりマカデミア チョコかな?」
頭の中でショッピング始めてねぇか?つくしのやつ。
さっきから俺の前を行ったり来たりとせわしく動き回る。
まるでコマネズミがくるくる輪っかの中で走り回ってる見てぇ。
眉をしかめていた顔がくるっと機嫌よく口元を緩める。
「何がいいかな?」
「だからいらねぇつーの」
そしてまた考え込む仕草。
俺の声はつくしには聞こえてないらしい。
俺に質問を投げかけて無視かよ。
それでも俺の機嫌が崩れることはない。
こいつを見てるだけで緩む心。
やっぱおもしれぇ。
土産って・・・お菓子なのか?
お菓子どころか旅行の土産はもらった記憶ない。
大体ほしいものは自分で何でも手に入る。
「旅行って言ったらやっぱり楽しみはお土産でしょう」
「いろいろ悩んで選んで買う楽しみ知らないの?」
呆れたように首をすぼめてクスッとつくしが笑う。
「土産なんて買ったことねぇよ」
バカらしいといいのける。
その必要性なんて考えて事もなかった。
「花沢類にはこれかなとか、西門さんにはこれが似合うかなとか、美作さんの好みはどれかな?なんて考えいるのが楽しいのよ」
俺たちに今まで贈ってもらって喜んだプレゼントってあったか?
結婚祝いでもらったF4ジェットは喜んだけどな。
それ以外の山ほどもらった贈り物はあるが中身はテンデ覚えてねぇよ。
だが・・・
あいつらにつくしがどんな土産を選ぶのかは多少は気になる。
きっと想像もつかねぇの選ぶんじゃねぇの?
あいつらの反応見てみてぇーーーッ。
ハワイ土産がチョコ1箱ってありえねぇーーーーーッ。
「外に出かけるの無理かも知れねぇぞね」
それが1番の問題だ。
ハワイに俺たちがいると騒がれてること忘れてねえよな?
ここまで来て知らない奴らに追いかけられるのはごめんだ。
ゆっくりとした二人の時間を邪魔されるたんじゃ意味がないって・・・
今までも邪魔が入ってる節はかなりある。
「変装すれば大丈夫じゃない?」
「ほら、この前みたいなショッピングセンターに噂の道明寺夫妻が現れるなんて誰も思わないもの」
大胆に面白がってないか?
緊張感のない屈託のない笑顔を向けられた。
「道明寺は髪型を変えるだけでばれないかもね」
髪を切ってもたいして変わらないぞおれの癖っ毛。
「つるっつるっていいんじゃない?」
横から身体を曲げてつくしが覗き込む。
悪戯っぽく変わる表情。
「お前も髪を切るなら俺もやってもいいぜ」
髪の毛をわざと引っ張る仕草でつかむ。
指に絡めとる毛先はしなやかにされリと指先をすり抜けて離れた。
「私はたいして変装いらないもん」
「目立つのは道明寺の方だよ」
自覚ねぇな相変わらず。
それなりの格好すれば結構な視線集めてると俺は思う。
こないだのパティーで証明済みなんだけど。
けして惚れてる欲目じゃねーぞ。
いつの間に持っていたのかサングラスが俺の膝の上に座り込んだつくしの手から俺の鼻先へと移動した。
「眼だけじゃ無理だね。すぐばれそう」
「どうにかしろ」
明るく声を上げるつくしの柔らかい曲線を両腕で引き寄せる。
「いるだけで目立つからな道明寺」
ゆっくり降りてきた唇が角度を変えて触れ合った。
*-From 2 -
「なに・・・これ?」
好きなものを買えって店内の椅子にふんぞり返って座ってる道明寺。
店内には必要以上に腰の低い店員が二人だけ。
貸し切りぽい雰囲気。
体格のいいお兄さん二人が入り口の前を警戒中。
誰も入ってこれないよ。
リムジンに乗せられてやってきたのはセレブ御用達のブランド店。
SPに囲まれて店内のドアをくぐる。
こんなに仰々しい・・・いや、暑苦しい買い物は初めてだ。
服にバックに時計にアクセサリー。
桁の違いは一つ二つの0の差じゃなさそう。
「私、お土産が買いたいんだけど」
「気にいらねぇの?なら別の店に行くか?」
椅子から立ち上がろうとする道明寺の両肩を慌てて押さえこむ。
「分かってる?私が買いたいのはこんなブランドじゃなくて数ドルで買えるものでいいの」
「こんなお店にはまず置いてないよ」
一気に息を吐き出し捲し立てた。
困惑でも嫌悪感でもない感じで道明寺の口元がゆっくりと開く。
「そうか」
思ったよりあっけない反応。
「海外に来たら若い女の子はブランドって教えられたぞ」
それが目的な子もいるのは確かだ。
もともとブランドを買えるような境遇じゃなかったし、大体の持ち物は実用性があれば十分と私は思っている。
人間生きるためだけならブランドなんて必要ないのだ。
それに結婚前にそろえられたバックに服にアクセサリー。
毎日使っても使いきれない数をそろえられれば買う必要性なんてどこにもない。
「お前の家族にはこれくらい買ってもいいんじゃねぇの?」
腕時計を私の目の前に道明寺がつきつける。
いち・・・じゅう・・・ひゃく・・・・・・。
値札を途中で見るのをやめた。
きっと数カ月の食費とため息つくんじゃないかうちのママ。
パパの場合は換金するかも。
進の場合は時計を使うことなくしまいこんで時々出しては布で磨いて眺めて満足してそうだ。
私の家族はhawaiiのロゴのTシャツで、きっと満足するに違いない。
「ハワイに行かなくても行った気になる」
進の素直なはしゃいだ笑顔。
3人でTシャツを身体にあて合いながら喜びあう光景が目に浮かぶ。
「普通のショッピングモールで買えるもので充分なの私の家族は」
キーフォルダーでも充分だと思う。
何気に手に取ったシルバーのキーフォルダー 45ドル
「高っ!」
慌てて元の場所に戻した。
「それじゃそこに行くか」
「行くって、SP付きで?」
「しょうがねぇだろう、今の状況じゃ。まあ、お前ひとりくらい俺一人で守ってやるけどな」
ハミングしそうな機嫌のよさの口調で返された。
「とことん付き合ってもらうからね」
「貸し切ったりしないでよ」
それじゃ面白くないんだからと愚痴をこぼして、まとわり付くように道明寺の腕にぴたりと寄り添った。
見あげた視線の先にまんざらでもないような道明寺の顔がちらりと見えた。
続きは抱きしめあえる夜だから31で
変装よりも道明寺の威圧で人を寄せ付けない。
この意見が多かったですね。
土産どうなるんだろう?
拍手コメント返礼
b-moka様
変装ばれそうなので止めました。
買い物中にあのバカカップル登場、司に秒殺されそうですよね。
いよいよ庶民のお土産買いまくり~
貸し切りじゃなくてもいいから値札を気にすることなく買い物を楽しみたいものです。
一生無理だろうなぁ。
その分いっぱいつくしちゃんにはお買いものしてもらいたいですけどね。
お金の感覚はまだまだ庶民のつくしちゃん。
司との金銭感覚のギャップがおもしろそうですが・・・。