第13話 愛してると言わせたい 22

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-From 1 -

「何見てんだよ」

「み・みてなんかない」

言って顔をそむける。

「見慣れてるだろうが?」

そんな記憶がないから目のやり場に困るのよッ。

さつきまであの中に・・・

素肌のままの胸にくっ付いていたんだよね。

顔はそむけたままに視線だけが動く。

「キャッーーー!」

それは心の中の雄叫び。

「心配すんな、下はしっかり着てるから」

そんな問題じゃないッーの!

道明寺がベットの端に座るように動いてトンと床に足を下ろした。

私との距離は一気に近づいて手を伸ばせば届く距離。

「怯えた目付きで見るな。これでも傷つくぞ俺」

道明寺の目が優しくほほ笑む。

「怯えてるつもりはないんだけど、この状況に戸惑ってはいる」

「なんだかいきなりな大人になった気分・・・みたいな?」

「知らない世界に足を踏み入れたというか・・・」

あーーーッ

自分で何言ってるか分かんないよ。

記憶もなくて感情もついてきてない。

なのに、私の身体は道明寺をすべて知っていて受け入れている。

そんな気分に戸惑っている私。

聖母マリアの受胎ってこんな気持ち?

処女で妊娠!

その衝撃が一番今の私に近くないか?

私の場合まだ妊娠までは至ってないと思うけど。

そうなる可能性はあったということだよな。

うろ覚えの妄想に陥って一人で焦りまくってしまった。

「なにを考えてる?」

「さっきから顔色変わりっぱなし、カメレオン見てぇ」

「お前は俺のことだけ考えてればいいんだよ」

道明寺のこと考えてるから焦ったりドキドキしたりしてるんじゃないかぁぁぁぁぁ。

って、言えるわけがないからまた口を閉ざす。

潤んだような熱いまなざし。

収まりかけた心音がまた飛び跳ねる。

「忙しい奴」

私の手のひらを道明寺の指先が優しく包み込む。

握られた手のひらから熱が伝わって体温を上げていく。

「俺・・・」

「えっ?」

なに?

心の中で疑問符を上げる。

何か言いたげな表情。

グッと込み上がる気持ちは何を求めてるのか・・・。

道明寺の腕がゆっくりと動くのを見つめてた。

きっと抱きしめられたらそのまま素直に身体を預ける気がする。

ポンと頭のてっぺんにおかれた手のひらに不思議そうな視線を向けていた。

「俺、今日は仕事なんだわ」

「一人で大丈夫か?」

見たことない様な優しい視線。

期待に胸を踊らせていたなんて言えるわけない。

「大丈夫だよ。道明寺がいなくてもなんの問題もないから」

「私も大学でも行ってみようかな、何か思い出すかもしれないし?」

「あれかな?大学行ったら男子学生の友達とかたくさんいるとか有るのかな」

ざらしく明るく声を上げる。

バカだな私も・・・。

てれ隠しにしても最悪だよ。

「いるわけねえだろ!」

「お前が俺の婚約者だってことを英徳のやつらで知らないわけねぇからな」

「そんな奴がいたらぶっ殺す」

完全に湯気の立ち昇った道明寺が目の前にいた。

地雷踏んだ?

 

-From 2 -

「大学まで送ってく」

怒った顔のまんまで側にあるジャケットをわしづかみにすたすたと歩き出す道明寺。

その背中を眺めて突っ立ったままの私。

一緒に摂った朝食のときからのしかめっ面。

「何してんだ!行くぞ」

振りかえった道明寺がしびれを切らしたように私の目の前に戻ってきた。

「大学に行く前に家に帰りたいんだけど」

「ほら、講義を受ける準備とか必要でしょう?」

首をかしげながら道明寺の顔色をうかがう。

目の前の顔がゆっくりと口角を上げて笑った。

「大学で必要なもんはほとんどここに置いてあるぞ」

「なんで?」

「うちから大学に通ってたようなもんだぞ」

「そっ・・・そうなんだ」

何気ない感じに道明寺は言ってるけど言葉の意味を捉えたら体中の血液が逆流してるんじゃないかと思えてくる。

私って一緒にここで道明寺と生活してたのだろうか?

いまさらそこを悩んでも仕方ないって状況かも知れないけど、高校時代の自分からは想像できないよ。

心臓がバクバクなってきた。

道明寺が部屋の奥から持ってきてくれた鞄。

筆記用具に分厚めの本にノート。

ぱらっとめくったノートの文字は見覚えのある丸っこい字。

間違いなく私の物だ。

ここでの共同生活が現実味を帯びてくる。

大学に向かって走る車。

後部座席には私と道明寺。

大人二人が座ってもまだ十分に余裕のある広さ。

それなのに二人の間は鞄一個分。

無理やり真中に鞄を押し込んだのは私だけど。

「何の障害にもなんねぇぞ」

ククと機嫌のいい笑いを唇に乗せて道明寺の右手が私の肩を抱く。

「ほらな」と満足げな道明寺の表情。

「べたべたしないでよね」

必死に眼に力を入れて睨んだ視線の先で驚くほど優しくなる眼差しとぶつかった。

キュッと上がった口元。

私のほうが照れてしまいそうな笑顔。

その笑顔にドキッとなった。

「キスしたいって顔してるぞ」

「だ、誰がっ」

心を見透かされてうまく言葉を発せられなくなっていた。

大学の校門の前に車が止まる。

車から降りてすぐに威厳のあるレンガ作りの校門が目に入る。

その前を毎日の様に通り過ぎてかよっていたのはつい数日前の記憶のはずだった。

高等部の方がしっくりくるんだけど。

ため息交じりにつぶやいた。

「何かあったらすぐ連絡しろよ」

言い残した道明寺を乗せて走りだす車を見えなくなるまで見送った。

あいつの方が不安そうな顔してなかったか?

何か思い出せるといいのだけど・・・

そんな思いで大学の門をくぐった。

続きは愛してると言わせたい23

大学で絡むのは類?

オリキャラ公平と類の絡みが見たいというリクエストもちらほら。

挿入できるとしたらここなんですよね。

どうしよう?

悩みどころだ。

そうなると終わらせるつもりのお話が長くなっちゃう。

いつものことですけどね。

拍手コメント返礼

こう様

大学で公平と遭遇?

類との対立!

ひと波乱おきそうですね♪

物語が終わらなくなっちゃいますよ(^_^;)

RICO様

大学で公平との絡みにF3とのトラブル勃発!

あ~話が別な方向に進む予感。

終わるつもりだったのに終われなくなりそうな予感どうしましょう

b-moka

ながくなってもOKのお許しありがとうございます。

さ~あガンバロ~っと。