PHANTOM 8

勘違いのままの平行線どこまで継続できるでしょうか。

疑似連3連ほどしないと大当たりは来ないのよ~~~。

スリーセブンそろえるまでファイトーーー(パチンコじゃないから)

道明寺の不機嫌な意味がわからない。

意に沿わないとすぐ怒るのには慣れてるけど・・・

今回は何よ!

執務室を訪れた私を「もう少し待ってろ」そう言ったまま顔を上げもしない道明寺

事務所に訪ねてきた道明寺の相手をしなかったから?

いやいや、その前に忙しいあいつが昼休み前に私を訪ねてくるなんて西田さんが許すわけない。

その西田さんを押しのけて私に会いに来たってことは・・・

朝、道明寺を起こさずに仕事に一人で出てきたこと?

夜も早々に寝ちゃったし・・・

だってさ、離婚を御主人から言い渡されたのに「別れたくないまだ愛してる」と依頼者の奥さん。

本当に仲が良くて年の差なんて感じないいい夫婦という周りでも評判だったのに、理由がわからないと悩む奥さんに同情しまくりの私。

そのね・・・

いつもみたいに、道明寺の腕の中で甘えて眠るなんてできそうもなくて、そそくさと寝ちゃったけど、それがだめだったかな?

何度呼んでも返事もない。

私がいること忘れてるんじゃないかと思えるような沈黙。

やっと顔を上げたと思ったら険しい表情で私をにらむ。

「どうかした?」

「どうかしたって!今お前はとんでもないこと言ったろう!」

私は名前しか呼んでないはず・・・

目の前の道明寺はいつもの道明寺じゃない。

何をそんなに焦ってるのよ。

「俺に言いたいことあるんじゃないのか?」

え・・・と・・・

道明寺が求めてるのはごめんという私の謝罪なの?

昨日の夜から今道明寺の目の前にいる私は確かに冷たかったかも・・・

でもそれは昨日だけでしょう!

必死にそう弁明したい。

「昨日は、ごめんね。先に寝っちゃって、朝も・・・その・・・一人でイッちゃって・・・」

これで機嫌なおる?

上目づかいで道明寺の表情を読み取る。

照れ臭そうに表情は和らぐ。

昨日の夜相手しなかったことへの不満・・・なの・・・。

その前が結構ハードで・・・っ

もうなに思い出してるのよッ。

やっと司法修習が終わって別居も解放されて、一緒にいられる時間が増えて私もテンション上がっちゃってた。

これから一緒に暮らせるって思ったらうれしくて・・・

これからずっと一緒だねとか・・・

いつも目覚めたら横に道明寺がいるのがうれしいとか・・・

自分で抱き付いて道明寺の頬を両手で挟んでキスしたりとか・・・

はしゃぎすたのは大目に見てほしい。

でもそのあとあんなに道明寺が喜んで何度も何度も私の中に・・・

口を開くと求められるままに司の名前を呼んでしがみついてしまってた。

これ以上思い出したら平常心じゃいられない。

まだお昼にもなってないオフィスの中。

「俺たちの間に遠慮とか嘘とかないはずだ」

急に真顔になった道明寺。

切なさがかすかに浮かぶ瞳は艶に彩られて色気が無駄に放出されてる。

遠慮とか嘘とか・・・

私が今思ってることを言えるわけないじゃない。

だからって私の考えが道明寺にわかるわけない。

わかったら困るし・・・。

嘘つくようなことって・・・

まさか?

公平と肩を並べて一緒に会社に帰ってきたことかな?

なんで最上階にいた道明寺が知ってる?

会社のエントランスを私が男性と一緒に楽しくおしゃべりしながら歩けば人目を引くのはあたりまえだった。

私と道明寺の関係を知らない社員は道明寺HDの社員じゃないもの。

道明寺は公平には敵対心むき出しだから内緒にしたいけど、黙ってたらばれた時の道明寺が怖い。

私と公平の関係に勘ぐられることはない。

「偶然だから・・・」

本当に偶然。

ビルに入る扉の前でばったり会っただけ。

それに今回は公平が用事があったのは玲子さんで私じゃない。

偶然友達に会って無視するほうがおかしいよ。

だから、道明寺もわかってくれるはず。

「俺がしっかり見てるのに偶然でごまかすつもりか」

どこで見たの!

今はそれは問題じゃない、やっぱり見られてたか。

道明寺の不機嫌が収まってないのは私と公平と一緒だったからってことなんだ。

「本当だから、会社の前で偶然ばったりとね・・・」

「公平は私に用があったわけじゃなくて玲子さんに仕事で会いに来ただけだから」

頭の中で考えた言い訳をしっかりと言葉に再生した。

「松岡と今まで一緒だったのか?」

デスクに手のひらをドンと付いた道明寺がそのまま超ドアップで私に迫る。

この時点で迫力満載。

公平のこと知らなかっ・・・たの?

私・・・早まった?

じゃあ、目の前の道明寺の不機嫌な原因は何なのよ!

一瞬のスキをついてデスクの横を通り過ぎた道明寺はもう目の前。

ガシッと両肩を掴まれて完全に道明寺の射程範囲に囚われてしまってる。

「相談する相手間違えてんじゃねぇよ。

お前が悩んでるんなら真っ先に言うべき相手は俺だ」

相談・・・

相談て・・・なんの?

公平に相談するようなことあった?

まさか・・・

昨日の私の様子で仕事で悩んでるとか道明寺が心配してくれてるとか?

それで自分に相談しないからって不機嫌なの?

「本気じゃないよな?」

本気?

え?

なに?

道明寺の言ってることは意味不明だけど本気で私を心配してるってことはわかる。

私を閉じ込めたままの道明寺の腕の中で感じるぬくもり。

キュンと体の奥から湧き上がる思い。

もう、考えすぎだよ。

今は道明寺といることがすごくうれしくて、楽しくて、毎日は幸せでしょうがないのに。

このまま時間が止まったらいいよね。

そんな甘えを必死で打ち消すように道明寺の胸元から顔を上げた。

「道明寺・・・」

本当は司って呼びたいのに照れ臭くて呼べない。

「あのね・・・」

言葉を遮るように手のひらを包み込んでた道明寺の腕がわたしをグイッと上に引きあげた。

自然と爪先立ちになる身体。

視線の先で道明寺が長いまつげを伏せるのがスローモーションのように見える。

ダメ・・・

だめだよ今は・・・

仕事を忘れて道明寺に甘えてしまいそうだから。

「ダメッ!」

思いきり道明寺の頬ひっぱたく勢いで手のひらが抑え込んで顔を背けてしまってた。