PHANTOM 11
茶封筒の中身がわかったのに、それを破いちゃった司君。
挽回なるか!
そろそろ司の勘違いを正さないと大変よ。
そんな勘違いをしてるとは全く想像してないつくしちゃんには無理か・・・(;^ω^)
真っ二つという表現を紙に使うかどうか微妙。
丸太でも切断するような勢いで道明寺が破いた茶封筒。
道明寺の左右の手に半分ずつ握られた茶封筒の残骸はそのままぐしゃっと道明寺の指先が押しつぶす。
公平が持ってきたからっていきなりのそれはやりすぎだと思う。
それに玲子さんがわざわざ私に公平に頼んで届けたってことはそれだけ至急なことがあるのだろう。
もっ!訳がわからないところで怒らないでよ。
昨日からの私の態度が気に食わなかったって言うのは分かってるけ不機嫌な態度をとるにしても限度がある。
悪いと思って謝ってるのに道明寺の不機嫌さはあんまり変わらない。
それに替えが効かない重要書類だったらどうしてくれるの。
ムカつくままの感情で茶封筒を道明寺の手の中からもぎ取った。
意外と抵抗なく茶封筒は道明寺の手の中から私の手の中へ。
ちょっぴり動揺してるのがその無抵抗感から感じられる。
「そんなもん、俺の前で見せんじゃねぇよ」
「え?道明寺、茶封筒の中身知ってるの?」
「だから、俺に絶対持ってくるな 持ってきても見ないからな」
私の仕事で道明寺に見せなきゃいけないようなものあった?
見たくないから破くってどれだけ単細胞なの。
意味不明な道明寺はほっといて茶封筒の中身を確かめた。
え?
あれ?
開いた茶封筒の中見は空。
「いつの間に抜き取ったの?」
「え?」
道明寺の意外そうな表情が横から私の手元を覗き込む。
「なんも、入ってねぇ・・・」
呆けた表情は一緒に公平に視線を注ぐ。
「どういうこと?」「どういうことだ?」
同じ意味の言葉が同時に飛び出した。
「破かれるの想定してたから」
悪びれない笑顔で答えた公平がスーツの内ポケットから長方形の白い封筒を取り出した。
「玲子さんに頼んだんだろう?無事に手に入れたから渡してってさ」
私が玲子さんに頼んだものって・・・
あっ!
数年前に道明寺と一緒に見た舞台の日本公演のチケット。
道明寺に頼めば簡単に手に入るだろうけど、それじゃ意味がないって思って必死に頑張ったのになかなかチケットが取れなくて、ネットのオークションでは数倍の値段に跳ね上がって泣きそうになった。
休み時間にネットを眺めてため息をついたところを玲子さんに見られてしまってた。
そこからの話の流れて「どうにかなるかも」と言ってくれた玲子さんは神様女神さまに見えて拝んじゃった。
公平が持ってるのってそのチケット!
確かに封筒の大きさはチケットが入ってるには手ごろな大きさ。
今度は破かせない。
公平から受け取った封筒は胸元でしっかり抑え込む。
「今度、破いたら、道明寺とは終わりだからね」
「終わりって・・・」
いつもの横柄さと傲慢さが影を潜めた道明寺の声。
そこまで落ち込んでるのは以外。
いつもなら俺様健在で見せろって言いそうなんだけど。
元気がない。
怒られて尻尾を丸めてお尻の中に隠す子犬。
終わりっていってもほら、本気じゃないし・・・
私がいじめてるような傷心な気持ちになるのはなぜ?
「用意周到だな」
私から公平に視線を移した道明寺はいつもの道明寺に復活。
「ここで破かれたら苦労が水の泡ですからね。
これ以上つくしに苦悩させたくないので」
「お前、こいつから何を聞いてる」
グイと道明寺が詰め寄った距離は完璧に公平をとらえていつでも銃弾を発射出来るように狙いを定めてる。
「道明寺!公平は関係ないから」
「こいつはそうは思ってないみたいだけどな」
感情が切り替わるの早すぎ。
さっきのいぬっころはもうどこかに行ってしまってる。
「つくしに頼まれたら俺は嫌とは言えませんけどね」
公平・・・
道明寺を煽ってる?
余裕があるのは道明寺より公平に見える。
「おい、見せろ」
「え?」
「その封筒の中身見せろ。破かないから見せろ」
「絶対ヤダ」
公演まであと2週間。
その日の道明寺のスケジュールは西田さんに頼んで押さえてる。
当日誘ってびっくりさせるんだから。
いまは絶対ヤダ。
道明寺の伸びてきた腕から逃れるように公平の横を通って執務室から飛び出した。
「見せない!」
振り返ってみた道明寺の身体は私を追いかけてくる態勢ををすでにとってる。
「逃がすか!」
やばっ。
横にいた西田さんにあとはお願いしますと早口で言って廊下に飛び出した。
どこに逃げる?
それより西田さんが道明寺を止められなかったら会社で鬼ごっこだよ。
社員に驚きの視線で見られるのは免れない。
エレベーターを素通りして階段を選択して扉を開けた。