DNAに惑わされ 41
櫻井監督の映画完成披露パーティー。
何かが起こる予感・・・
『別に平和でいいよ~』
駿君の心の声は無視です。
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「今日、大丈夫だよね?」
「鮎川との約束僕が破るって思うの?」
金曜日の昼休みの時間。
笑顔で会話する僕たち。
同じ教室でひときわ目立つ声。
わざと聞こえるように声を出してるとしか思えない奴、その名は青葉一馬。
聞く気もないのに耳に届く自慢気な声。
「まいったよな。
行きたくもないのに、親父がどうしても連れていくって言うんだよ。今日のパーティー
芸能人も多く来るらしくってさ、俺あんまりげーの人興味ないのにな。まいるざ」
「誰が来るんですか?」
青葉の口からは次々と誰でも知ってる芸能人の名前が出てくる。
興味ないって言ってるのは建前。
それだけフルネームが言えれば十分だと思う。
「いいなぁ」
取り巻きの同級生に羨望のまなざしを受けご満悦な表情がぴたりと僕を見た。
「悪いけど、君たちじゃ無理だから。
格が違うってやつかなぁ」
自慢する表情はしっかりと僕をとらえてる。
「確かにあいつとは格が違うよな」
机の横にするっとやってきた蒼は僕を見下ろしてそうつぶやく。
「悪い奴だ」
にんまりとした声は「駿と鮎川も行くんだよな」と付け加えた。
どう聞いても青葉の自慢してるパーティーは鮎川の父さんのパティー。
青葉が上げた芸能人の名前は全部僕との共演者。
あの映画で間違いない。
「行きたくなくなった・・・」
「私も・・・」
「えーいかないなんてそんな~せっかく色紙持ってきたのにさ。
俺が有希子ちゃんのファンなの知ってるだろう?」
別に知ろうとして知ったわけじゃない。
蒼の部屋の壁に貼られたポスター。
本棚に並ぶCDとDVD囲んでる大量の雑誌。
言われなきゃわからないようなちっさい写真でも載ってたら即購入。
コンビニも立ち読みに何度付き合わされたかわからない。
「色紙を預かってももっていかないからな」
「もしかして電話番号を俺のために聞いてくれるとか?
それとも、もう知ってるとか?
え?ということは、有希子ちゃん・・・駿のこと気にいちゃってるの?
鮎川、駿を野放しにしたらダメだ」
蒼・・・
一人で勝手に妄想に走るな。
共演者としての数度話した程度だから。
ちなみに電話番号なんて聞いてない。
「ねぇ。鮎川さん興味ない」
いつの間にか僕らの横にやってきた青葉。
「ない」
長いまつげを伏せて青葉を見ようともせず鮎川がつぶやく。
拒絶の低い声は冷たく響く。
普通のやつならこれで会話が途切れる完璧な遮断。
「鮎川さぁ、遠慮はいらないからさ、お金のことなら心配ないし」
「私も今日は予定あるから」
「そんなの断ればいいだろう」
雰囲気が読めないというかめげない奴。
意外と大物?
な、わけないか。
「あきらめ悪いな。
鮎川は今日は僕とデートだから」
僕の言葉に青葉のこめかみがヒクヒクと引き攣るのがわかる。
固まったままの青葉は取り巻きの連中に連れ戻されて僕たちから離れた。
あいつも来るのか・・・
やっぱ気が重い。
会場は世界有数のホテルに名を連ねるメープル。
つまりは道明寺財閥経営のホテル。
ホテルに一歩足を踏み入れた途端支配人が僕に気が付いて飛んできた。
「これはお久しぶりです」
「ねぇ、僕のこと知ってる人は支配人以外にもいるかな?」
「数名はいますが・・・」
「口止めしといて」
何事も心得てるといった表情を浮かべて支配人は頭を下げる。
案内された会場は1000人規模のホテル内でも一番広い広間。
この人数じゃ隅にいたら目立たないだろうと胸をなでおろした。
久しぶりに来たタキシードは窮屈で襟元のタイを指先が無意識に緩めてしまってる。
「来ないかと思った」
後ろから聞こえたいたずらっぽい鮎川の声。
「鮎川がいなきゃ来なかったよ」
「青葉はいた?」
僕の声に鮎川が視線で示す。
落ち着きなくきょろきょろと視線が定まらない青葉。
右手にはジュースのグラス。左手には料理をのせた皿。
「あれじゃ食べられないよな?」
ぐいぐいとジュースだけは何度も口に運んでる。
「離れよう」
鮎川の腕をとって人ごみを避けるように壁際まで移動した。
「駿」
ひときわ目立つオーラ。
一言だけの声でも周りの注目はその人に集まる。
美作あきら。
今のとこ僕の所属してる事務所の社長で父さんの親友の一人。
若いころF4と騒がれた人気は健在。
たぶんここにいる芸能人より目立つオーラを背負ってるって思う。
「目立つ登場やめてくれないかな。
それよりよく僕を見つけられたね」
「あのな、俺だけが目立ってるって思うなよな。
駿、お前も司以上に目立つオーラー発光してる」
え?
そう?
「自覚なしか」
笑いをこらえきれないように美作のおじさんは声を漏らす。
「目立たないようにするのは無理がある」
せいぜいがんばれと肩を叩いた美作のおじさんは僕らのもとから離れた。
「青葉君にばれるのも時間の問題かもね」
ばれたらばれたほうがいいかもしれない。
壇上には鮎川の父さん。櫻井翔五郎が立つ。
その横には出演の俳優たちが並ぶ。
監督となぜかその時、目があった気がした。
マイクを手で覆った監督が横にいる進行係に何か言ってる。
ちらりと視線を後ろに送って指先はその視線の先を指してる。
その線上に自分がいる気がした。
「鮎川、ちょっと場所を移動しないか?」
「え?」
「やばい気がする」
監督には何も口止めしてなかったことに今更ながらに気が付いてしまった。