PHANTOM 10
つくしちゃん本気モードで怒っちゃったら収まるものも収まらなくなりそうな予感。
それが楽しいっていえば楽しんですけどね。
今回は本編に行く前のスピンオフ的なお話し。
久々の甲斐君目線です。
甲斐君のつぶやき久々~4年ぶりくらいかな?
「いいんですか?松岡を行かせて」
「いいのよ」
玲子さんは思惑のある微笑みを俺に向けた。
いま、この人は絶対楽しんでる。
そんな気がする。
「だって、君の場合は代表の前に立ったら何も言えなくなるでしょ。直ぐに委縮しちゃうし」
当たり前ですよ。
俺は単につくしちゃんの指導係に抜擢されただけなのに、仕事を教えてるだけで噛みつかれそうな目つきで代表が見てるんだもんな。
確かにつくしちゃんに好意は持ってるがそれは妹みたいなもんで俺はつくしちゃんも玲子さんも女性として見たことはない。
これを言ったら殴られそうだから絶対言えない。
「でも、行かせる必要性あったんですか?」
「あら?だって、直ぐに代表の勘違いを修正されたらお面白くないでしょう」
「不安がって苦悩する代表ってなかなか見れないわよ」
暇があるとつくしちゃん似合いに来て嬉しそうに口元をほころばす代表もレアですけどね。
つくしちゃんに向けてる笑顔だとみんなわかってるはずなのに女性社員ほぼ全員が胸をときめかす現象。
携帯の待ち受けの中にその魅了してやまない代表がペットの犬や猫を差し置いて一位に躍り出てるとか聞いたぞ。
ちなみに俺の待ち受けはもともと携帯の中にあった背景画像。
「で、松岡に持たせた封筒の中見はなんなんですか?」
「まさか記入済みの離婚届じゃ!」
「あのね、それやっちゃったら私文書偽造でしょ」
腕組みをした玲子さんがため息交じりでつぶやいて俺をバカだと見つめてる。
でもですよ。
受理されないように遊び心満載で記入するとかやりそうですよ。
記入年月日を2100年にするとか、それとも昭和50年で書いてるとか・・・。
生まれてるのたぶん玲子さんだけです。(これも絶対玲子さんに殴られる)
「つくしちゃんに頼まれていたのよ。
代表とデートしたいから今話題のチケットがほしいけどなかなか手に入らないって」
「代表に頼めばいいんじゃないって聞いたら内緒にして驚かせたんだって、照れ臭そうに言うのよ」
そんなつくしちゃんがなんだかもう可愛くて、私に伝手があったから2枚手に入れてあげたの」
だったらなおさらつくしちゃんに直接渡したほうが無難だと考えるのは普通だと思う。
「そんなレアのチケット松岡に頼んだんですか?」
代表に破かれてなきゃいいけど・・・。
「そのチケットを代表が見つけたら代表もつくしちゃんが離婚したいって思ってるだなんて思わないでしょう。
何でも学生の頃、つくしちゃんが見たいって一言つぶやいたら本場フランスまで代表が連れていって見せてくれた舞台で二人の思い出なんだそうよ」
そうか、玲子さんこの騒ぎを引っ張りたいようなこと言いながらしっかり誤解を解く算段してたのか。
「無事につくしちゃんの手に届くかどうかが勝負なのよね」
え?
「ほら、離婚届と代表が思い込んでその茶封筒を見たら・・・代表、破いちゃう可能性あるでしょう。
そっちの可能性のほうが高いかもなぁ」
あの・・・
玲子さん・・・?
代表の誤解を解く手助けしたいって本気で思ってないんですか?
「どっちにしても最後はいちゃこらするはずだからいいんじゃない。
さぁ、仕事しよう。
つくしちゃんが帰ってくるまでどのくらいあるかしら?」
つくしちゃんが帰ってくる時間が早ければ早いほど揉めてる状況。
ちらりと時間を確かめるように壁にかけらた時計を眺める。
つくしちゃんが代表のもとに向かってから15分足らず。
つくしちゃんのあとを追いかけて代表もこの事務所に来る気がする。
そこにはもちろん代表の嫉妬の対象の松岡も・・・
代表の俺に向ける嫉妬心は緩和されてるだろうからいつもよりはまし?
でもな・・・
俺は玲子さんみたいに楽しめませんよ。
早く代表の誤解を解いてあげましょうよ!
つくしちゃん・・・
気が付いてるかな・・・。
代表の勘違い・・・。
とにもっ!
泣きそう。