ドッカン !! 44

このお話は45話で終らせたいと思っていました。

あと2話・・・

終るかなぁ?(^_^;)

もう少し・・・

こう・・・

抱きしめていたかった。

抜け落ちた胸の中の空間を抱きしめたそのままの形を腕が作ったまま。

ピッタリと重なった温もりと心音。

離れる前にだな、もっとこう甘える仕草が欲しいとか思う欲求。

バカ力ではぎ取るな。

「あのさ・・・」

「なんだよ?」

俺を押し倒して今さらごめんと謝ってもおせぇぞ。

不機嫌に見上げた俺。

「俺のここ空いてます。なんて強調する人気芸人のギャグ知ってる?」

しりもちをついたままの俺を膝を曲げて上からつくしが覗き込む。

「知るか!」

ケラケラと軽い笑みを向けて「ごめん」とつくしがつぶやく。

「一度戻るから」

はっきりと余韻も甘さもないすっきりしてる声。

謝った後に戻るってどういう了見だ!

さっきまで俺の胸の中で離れたくないとか言ってなかった?

言った形跡は、ないか・・・。

「顔が上げられない」

胸元でくすぐったく唇が振動を伝えただけで終わってんじゃねえよ。

「戻るって、本気で言ってんのか」

いまだにつくしの幻を抱いたままの俺。

立ち上がってスーツの埃を払うそぶりで体勢を整えた。

離れたつくしの身体にまだ未練がたっぷり残ってる。

このままこのマンションの中に戻って俺のとこに戻ってこないってことねぇのかよ。

「このまま、帰りますってわけにはいかないわよ。荷物も置いたままだし」

俺に少しの未練も残してない表情はそのままマンションの入り口に向いて俺にくるりと背を向ける。

「俺も行く」

進んでいきたいわけじゃないがここで引けるか。

足音がこつんと止まってつくしのピタリと動きが止まる。

つくしを集中して見てなければ俺は衝突したぞ。

「待っていた方がいいと思うけど・・・」

言葉を濁すつくしを無視してマンションの入り口を通った。

ココデ・・・オレハ・・・ナニヲシテイルノカ・・・

俺を無視してそっちのけで彼女らの会話が進む。

素直につくしを車で待っておけばよかった。

俺は透明人間か!

ソファーの前に片膝を付いたまま一人でビールの入ったグラスに口をつける。

黄色い液体を飲み込む以外は俺の口は動かせそうもない。

「もっとさ、ベタベタしてくれてもいいのにね。新婚だし」

「新婚といっても付きあい長いですからベタベタってほどでもないですよ」

付きあい始めた頃もベタベタされた記憶はねェぞ。

何時も照れて俺から逃げてたじゃねェか。

結婚してもすぐ別居だぞ!

「付きあってるの高校からだっけ?」

「そうですけど、ちゃんと付きあったのは大学に入ってからですからね」

「いろいろあったし・・・」

チラリと俺に送られる視線。

色々あったって話し出すと俺の悪口からはじまるんだよな。

こいつはいつも俺との出会いは最悪だったって言うんだから。

それでも俺に惚れたんだから最高な出会いだろ。

つくしと主に話してるのは松山。

つくしの上司でおふくろと大学の同窓の岬のおばはんはにっこりと楽しげな笑顔を俺に向ける。

俺の最低な素行を全部知っていて処理してくれたのがこの人だからなんも言えねェ。

そして空けたグラスに自分でビールをつぎ込む。

俺になにさせてんだ。

「残念だな、今日はつくしちゃんと一緒に朝まで飲み明かしたかったのにね」

「私もです」

「玲子さんにいろいろ聞いてほしかった~」って、松岡の首に腕をまわすつくし。

抱きつく相手が違うぞ。

「大体修習所にヘリで通えってなに様! ですよね」

道明寺様だろうがぁぁぁ。

終ったはずの今回のケンカの原因に戻ってるじゃねェか!

「その事は仲直りしたんじゃないの?外で抱き合ってたからてっきり・・・」

あのまま速攻お持ち帰りのはずが、いまだに俺は一人で酒を飲む。

「謝ってくれてませんから」

睨むんじゃねェよ。

睨みたいのは俺のほうだろうがぁ。

まだケンカは終わってなかったのかッ。

「謝ったろうが」

俺は おれなりに謝ったはずだ。

『司法修習の間は我慢してやるからそれ以外は俺から離れんじゃねよ』

最高に譲歩した許せの気分満載だろうがぁ。

「うやむやにしただけでしょ」

うやむやじゃねェッ!

「ここで、ケンカはじめないでよね」

俺とつくしの間にハイと松山が差し出した紙袋。

「代表、これつくしちゃんが代表のために買ったんですからね」

おれのためって、なんのプレゼントだ?

仲直りのために買っていたなんてつくしもかわいいとこあんじゃねェか。

言いあいでムカッときていた唇も単純に緩む。

「あっ、ダメ、これは無理矢理に玲子さんが押し付けたんじゃないですか」

「私が買ったんじゃないから!」

取り返えそうと紙袋に手を伸ばすつくし。

盗られない様に身体を入れてつくしとの距離を作る。

いくら伸ばしても手の長さが違う。

届くはずがない。

袋の大きさに比べて軽い重さ。

袋の口を下に向けてパラリと落ちてきた赤い生地はスケ透けで、指で持ち上げた先でピラピラのレースが見える。うっすらと下着の向こうに見えるつくしが赤い。

赤い生地が反映しただけだとは思えない。

下着・・・か?

「見るな!」

油断した隙を突かれて取り上げられた下着をつくしの這いつくばった身体の下に隠されてしまった。

それは、俺んだろ?

つーか、つくしのか。

「道明寺・・脱がして・・・」

とか、ありか?

まだ想像するな!

顔が緩む。

早く帰りてェ――――――ッ

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