木漏れ日の下で 4

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-From 1 -

折角の気分がオジャンになった。

大学の同期かなんだかは関係ねぇ。

こいつがつくしに好意を寄せてるのが気に食わないだけだ。

さっさとあきらめればいいのによッ。

いまさらつくしとどうこうなろうなんて思っちゃいないよな?

思ってたらどうなる?

2か月の同じ場所での修習。

昼間も食事も夜も・・・。

寝込み襲われたらどうすんだ!

俺みたいに警備員脅してスペアーキー取り上げて・・・。

男の力には敵わねぇぞ。

大丈夫なのか!

大丈夫なわけねえだろうーーーーーッ。

どうしようもなく湧き上がる気分の悪さ。

ほとんどは俺の妄想部分。

気にくわねぇやつを睨んでいたら、つくしの形相が変わってた。

なんで俺が睨みつけられるんだ?

「どーみょうーじっーーーーー」

久しぶりにマグマの中から飛び出す様な声。

こうなったら一歩も引かずに言い合いになるのは目に見えてる。

一気に体感温度は下がって俺の熱も放出されていく。

馬鹿げた妄想も落ち着きを取り戻す。

「何考えてるのよッ」

始まった。

これに乗ったらどうにもならなくなってケンカ別れだ。

「別に俺は気にしてないから」

「・・・もしかして、邪魔したかな?」

目の前で大人ぶる対応。

やっぱ気にくわねぇ。

『ああ邪魔だ』

口にしたら・・・

つくしからはとめどもなく出てくるよな俺の悪口。

『お前に色目を使う奴は気に食わない』

心の中で静かに叫ぶ。

横暴、傲慢、わがままは聞き飽きた。

スケベ、色魔はお前限定だけど。

珍しく冷静に分析する俺の脳。

これも結婚してる強みってやつか。

余裕が生まれてる。

「何も考えてねぇ。しいていえばさっきのこと」

閉じるもの忘れて口元が開いたまんま、つくしは次の言葉を飲み込んだ。

言えないよな。

さっきまで一緒のベットにいたなんて。

それよりもどう俺のこと誤魔化すか・・・

そのことでこいつの頭の中はいっぱいいっぱいだと思うから。

「愛想良くしてとは言わないから嵐を作らないで」

俺の袖口を引っ張って斜め下から強い視線を向けられる。

視線はすぐ前を向いて公平ってやつには笑顔を向けている。

引きつる様な愛想笑い。

思わずグフッと笑いが漏れた。

頼んだ食事が運ばれてくる。

つくしに勝手に選ばれた焼き魚定食。

「カルシウム取らないとイライラするよ」

割り箸を袋から取り出して割って俺に渡してくれた。

別にイライラしてねぇし。

思いつつ甲斐がいしく俺の世話を焼くつくしに眼を細める。

どう見たって公平!

俺たち二人の間にお前の入る隙間はねぇよ。

邪魔な奴はいるが気にならなくなった。

見せつけてやればいい。

こんな時間もまんざら悪くねぇ。

 

 

-From 2 -

「仲いいねぇ」

「そう?いつもこんなもんだよ」

公平の問いかけに何気ない感じにつくしがくびをかしげる

そんな仕草も可愛く思えてしまう俺。

たまんなく独り占めしたくなる瞬間がある。

「つくしの事務所での実務実習の時はちらっとしか二人の姿見れなかったからなぁ」

がっくりきたという様に目の前で公平の肩が落ちる。

わざとらしいことするなと鼻で笑う。

「あれから急に休んだからね」

照れくさそうに染まるつくしの頬。

「知ってる新婚旅行に行ったって」

ますます赤くなった顔が見えないくらいに俯いた。

こいつと2週間も一緒にオフィスにいさせたくなかったのがホントのところだけどな。

別につくしはこいつに言い寄られても相手にしないと信じてる。

それでも一緒に同じ場所にいさせたくないのは俺のわがまま。

たんなる嫉妬心。

つくしが鈍感な分だけやきもきする心。

そんな俺の気持ちをつくしは知らない。

「まあこれから二ヶ月は一緒だからよろしく」

これ見よがしにつくしの目の前に差し出される手の平。

つくしが握手しようと差し出した腕を通り越して俺が握り返してやった。

「よろしく頼むよ」

言いながら必要以上に力が手のひらに入る。

野郎・・・

全然顔色変えやしねぇッ。

「やっぱり弁護士になるの?」

つぶすつもりで握手した手のひらは何事もなかったように俺の手の中から離れる。

「弁護士は夢だからね。公平は検事?」

「そうするつもり、つくしも検事が合ってると思うけど」

「無理だよ、検事は」

「転勤が多いから?」

「それもあるかな・・・」

転勤なんかさせられるかッ。

検事になったら俺の力で本庁から移動できないようにするけど。

弁護士で同じビルで仕事するのが一番の理想だ。

横から変なこと吹き込むんじゃねぇ。

「つくしと対決なんてことになったらイヤかも」

「手加減しないから」

俺の目の前で俺の関係ない会話が繰り広げられる。

わざとか?

それに乗るつくしもつくしだけど、俺に対する配慮みたいな心遣いねぇのかよ。

手もちぶさたになった手のひらをギュッと握りしめる。

「後二ヵ月しかないからね」

大変だという様につくしがつぶやく。

俺に言わせればまだ『二ヵ月もある』だよ。

「あっという間に過ぎそうだよね。時間が足りないくらい」

クスッとほころぶ口元。

俺には長げーよ。

この思いの差はどこから来るのだろう。

「じゃ、俺先に帰るは、また後で」

さわやかな笑顔を俺に向けて野郎が背中を向けた。

男のさわやかな笑顔なんて俺に向けられるのは類に総二郎にあきら意外は記憶にねぇ。

大体表情を引きつらせるか視線を合わせない様にするのが一般的だ。

いらつくが信用できない人間じゃない。

「後2カ月だけだからな」

「頑張るから」

満面の笑みでほほ笑むつくし。

そうじゃねぇよ。

俺が言いたいのはお前のそばに油断のならねぇあいつがいること。

司法修習が終わったら絶対に近づけねぇ。

そう心に決めた。

続きは木漏れ日の下で5

拍手コメント返礼

b-moka

時には大人の対応でつかさちゃんの心をギュッと~

まではいってませんよね(^_^;)