HAPPY LIFE ( クリスマスの夜に)
*「じゃあ、よろしくな」
最後の言葉を西田に告げて会社を後にする。
さすがに今日はビルの中も静かなもんだ。
今頃仕事をしているのは仕事人間か、クリスマスなんて関係ないと強がってるやつくらいのもんだよな。
折角のイブの夜も仕事なんてついてねぇ。
今までそんなこと思ったこともなかった。
仕事の合間の時間をやりくりしてデートを重ねた夜。
イベントも記念日もあったもんじゃなかった。
ただ会って抱きしめることができれば満足だった日々。
独りよがりすぎたのか。
結婚前のクリスマス、都合がつかないと言った俺に不満を言うでもなく淋しそうに眼を伏せたことあったよな。
今ならその意味が分かる。
1秒、1分、1時間、1日の家族3人の時を刻んでいこう。
笑顔をたくさん見られる様に。
用意したプレゼントを持って車を急がせる。
つくしに駿へのプレゼント。
ひと月以上前から準備した。
車が止まって運転所の里井が後部先のドアを開けて深々と頭を下げる。
両足を地面につけて立ち上がった俺は里井の方を見て立ち止まった。
俺としては珍しい行動。
里井が不安そうな表情でゆるゆると頭を上げる。
今までなら怒鳴り散らしてる状況だもんなぁ。
ポケットの中から小さな箱をとり出して運転手の里井の目の前に差し出した。
「メリークリスマス」
人を珍しいものでも見る様に見つめる瞳。
そんなに驚かなくてもいいんじゃねぇか?
「ぼっちゃん~」
感無量気に流れる涙にくれる顔でプレゼントを震える手が受け取った。
そこまで感動されてる俺って・・・
照れくせえぇ~。
無言で足早に屋敷へと姿を隠した。
いつもよりにぎやかなに見えるのは部屋中を飾る色とりどりのイルミネーション。
誰でも知っているキャラクターにサンタの置物がところどころを出没して会場に案内するように光を発してる。
この屋敷で一番広い部屋が今夜のクリスマス会場。
気心知れた仲間たちが集まってるはずだ。
俺が連絡入れる前から催促されていた。
ドアを開けて足を踏み入れた瞬間に鳴り出すクラッカー。
俺の誕生日じゃねぇぞ!
もうすぐだけど。
驚いて閉じた目を見開き閉じれなくなった。
1・・・2・・・3・・・っ!?
赤い帽子に赤い服に白ひげ、ただ違ってたのはスマートな長身のサンタ達。
「何やってんだ!」
「普通サンタは父親だろう!」
俺の格好もこいつらには負けないスマートなサンタ。
「誰が本物のパパかな~」
滋に抱かれた駿が物珍しそうにじっーと見ている。
「テッ!」
つけひげを引っ張られた。
痛がる俺の表情を見て「キャッキャ」と声を上げる。
周りからこぼれる笑い声。
一番大声を上げてやけにうれしそうなつくし。
「パパがいっぱいいていいね」
・・・って。
ここはサンタがいっぱいでって言うのが本当じゃねえのか?
つくしのやつーーーーーーッ。
「そうだよな」って相槌うつな!
類に、あきらに総二郎!
ぱかっと開いたドアの向こうから、シャンシャンとベルの音。
トナカイのロボットが引っ張るソリ。
その上には5人目のサンタ。
腹ボテのサンタに白いひげが顔を隠す。
「メリークリスマス」
聞こえる声に会場がシーンとなる。
「に・・し・・だ・・・さ・・ん?」
信じられない様につぶやいたつくしが次の瞬間「プーッ」と吹き出した。
クリスマスパーティーのエピローグのお話です。
西田さんのサンタのヒントは『るるまま様』のコメントをヒントに書いてみました。
ヒントありがとうございました。
拍手コメント返礼
本当に捨て身ですよね。
サンタになったいきさつは観察日記でUPしたいと思っています。
b-moka様
パパがいっぱいって言われたらねぇ。
拗ねてるサンタが1名ってところでしょうか?
それをからかうF3のサンタ。
目の前で見てみたい♪