今夜も愛妻家

愛妻家のネタで第二弾を書けるとは思ってもいませんでした。

後部席に散らばる花束を片付けるのは運転手の里井さん?

のコメントでムフッと浮かんだお話。

後部席とキーを打ったつもりが交尾席になってました。

気が付いて良かった(^_^;)

『運転手里井さんの坊ちゃん観察日記』は別館でUP♪

*

体熱の中でむせかえるようなバラの花の香り。

邪魔だと言いたげに花束を片手で放り投げる。

助手席に散った花びら。

その一つがつくしの胸元に一つ落ちた。

「もう、折角の花束が・・・」

眉を眉間に寄せて尖る口元。

キスをせがまれてるようでその下唇を啄む。

「キスしてる場合じゃないの」

外したはずのブラウスのボタンをつくしの指先が止め直す。

折角外したのにッ。

指先を滑り込ませる前に閉店のシャッターが目の前で閉められてしまった。

「こんなに花びらを散らしちゃって」

後部席に座ったままつくしが腰を屈めて足元の赤い花びらを指先でつかむ。

バサッ

「ちゃんとかたづけてよね」

俺の胸に押し付けられた花束。

片付けろって俺がか?

開いた後部席のドアからつくしは車を降りる。

いつの間にか家についてしまっていた。

「どうかしましたか?」

不安げな表情で後部席の俺を覗き込む運転手の里井。

「やる」

不愛想に萎れたバラの花束を里井に押し付ける。

「この花束は先ほどつくし様がお持ちじゃなかったですか?」

里井の問いかけには答えずに無視して車から降りた。

「つくし様を怒らせるようなことを・・・

花束で殴られた!」

ぶつぶつと言って、ビンゴ!とでも言いたげな見開いた目ん玉を里井が俺に向ける。

じゃ、ねーよ。

ジロリと里井を睨む。

スラックスのポケットから取り出した携帯のボタンを忙しそうに里井が押す。

「レベル3です」

里井が口もとを隠す様に手で覆って小さくつぶやく。

そして、俺の視線から携帯を隠す様にポケットにしまい込んだ。

「レベルって、なんのレベルだ?」

不機嫌に里井に詰め寄る。

あと一歩不機嫌のバロメーターが上がれば俺の手は里井の首を絞め上げてる。

「聞こえました・・・?」

挙動不審な行動をしたのはお前だろうがぁぁぁ。

「すいません」

車に逃げ込みそうな里井の腕を掴む。

「謝罪はいらねェッ」

「・・・・」

ゴクリと里井の喉元が上下に動く。

「先ほどは・・・つくし様と仲が良くてレベル1で・・・険しい表情で不機嫌でもつくし様がいればレベル3でして・・・」

「なんだよそれ」

「レベル5まであります」

「レベル5?」

防空壕に避難的な最悪な状況ですが、幸いなことにつくし様と坊ちゃんがお付き合いされてから発令したことはありません」

目の前の里井は敬礼気味に姿勢を正して叫ぶ。

若い上官とくたびれた二等兵

ここで軍人ごっこをやって無駄な時間を過ごす暇はない。

「屋敷の中の奴らに俺の機嫌を伝えてたってことか?」

「司様の不機嫌を知ることは死活問題ですから・・・」

俺の視線を避けるようにガシッと目をつぶって里井が振るえる。

「今日は司様の誕生日ですし、お早いお帰りだろうから道明寺邸は平和だと皆で思ってました、ですが、司様が不機嫌だったので、焦りました」

全てを告白してホッとしたようなため息を里井が漏らす。

里井から腕を離した俺もため息を漏らす。

今の俺は、お前らをビビらすほど凶暴じゃねェぞ。

「ケンカしたわけじゃねェからな、少し優しくし過ぎてあいつが逃げただけだ」

「えっ・・・あっ・・・」

中年のおっさんが頬を赤らめる図。

それッ!

つくしに見せんなよ!!

ますますあいつが逃げる。

「今度から、レベル3の時は俺たちにかかわるな、邪魔するなのレベルにしとけ」

呆然とした里井に見送られて玄関に向って扉を勢いよく開ける。

つくしは出迎えた使用人と笑顔で談笑中。

俺を見た瞬間に使用人の目に緊張の色が走る。

余計な連絡はシッカリ速攻で使用人の間に広がってるらしかった。

つーことは・・・

いまのつくしは使用人たちの最後の砦って状況か。

つくしの機嫌を良くしてその笑顔を俺にそのまま向けさせる。

「花束は?」

振り向いたつくしがなにも持ってない俺の腕を見て顔を顰める。

「里井にやった」

「花束は私のじゃないの?」

拗ねた声で責めんじゃねぇよ。

身体の奥から静かに沸きがる熱。

呟く声ごと唇を絡めとりたくなる。

「いらないんじゃねェのか?」

生れる熱を抑え込むように冷たさを演じる声。

「私は片付けてって言っただけです」

ぷくっと膨れた頬は未だに幼さを残す。

高校時代から変わんねェかわいさ。

「俺に本気で片付けさせようって思ってねえよな?」

「グシャグシャにしたの道明寺でしょ」

俺に負けねェ気の強さが全面に出てきた。

「・・・それに今日の主役は道明寺だし、私が花束を持ってるより道明寺の方が似合いそうなんだもん」

このまま言いあったらケンカになる。

思ったところではにかんだ表情を投下された。

花束が似合うって言われてもちっとも嬉しくねェ

クシャと頬が緩みそうな感情を隠す様に心の中でつぶやく。

照れくさそうに上目使いでこいつに見つめられると自分が止められなくなる。

分ってんのか?

抱きしめようとる手を伸ばすと人目を気にして逃げるんだよな・・・。

予測できる行動も俺の胸の奥をクシャとくすぐる。

頬が緩むのを抑えるのに苦労するのはお前のことを考えてるときだけだぞ。

言いあいながら足を一歩づつ進める俺。

距離が縮まない様につくしは後ろに足を出す。

それでも歩幅の差は確実につくしに俺を近づけさせてる。

何時の間にか使用人の前は通り越して後ろから眺めてる。

後から飛び込んできた里井に追いやられるように姿が消えて俺たちだけになった。

「花束、持ってると、邪魔だろう?」

キョトンとなった顔が俺を見つめる。

「えっ?おっ!!」

つくしの身体に腕をまわして抱き上げた身体。

驚きの声をあげたまましがみつく様につくしが俺の背中に腕をまわす。

「おろして」

「ダメだ、このままベッドまで連れて行く」

「ちょっ・・・」

「今夜は俺は愛妻家だからな」

逃げられないと伝えるつもりで全身の力を入れて、もう一度強く腕に力を入れて抱き上げる。

「愛妻家の意味、取り違えてないよね?」

「どう取り違える?」

返事の代わりに表情を隠す様につくしの頬が俺の頬に触れる。

「言わない」

拗ねた響きがくすぐったい笑い声に変わって耳元で囁く様に呟いた。

「今夜は じゃなくて、今夜もでしょ?」

甘ったるい声が・・・

艶を帯びる息に変わる。

かすかに耳元をかすめて唇が肌を滑る。

つくしの唇が俺の頬に触れた。

どうせなら、唇に。

せがむように唇を尖らせた。

こちらのつくしちゃんは予想外に素直。

切ないお話の反動で書いちゃってます。(笑)

楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。

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拍手コメント返礼

おかゆ

つくしちゃんが素直なのは司君の誕生日だから♪

司と二人だと案外素直かもしれませんよ~。

たまにはねと思う優しい私の心遣いを司君わかってくれるでしょうか?

まめすけ 様

里井さんの坊ちゃん観察日記♪

西田さんとは違っておどおどして小心な坊ちゃん観察日記が出来そうで面白そう。

この二人を対比させたら面白そうですね。

ダメだ~~~~

連載がすすまなくなる~

私の頭の中で里井さん役の名わき役笹野 高史さんがハンドルを握ってる~

その後ろに潤君と真央ちゃんが~~~~。

はるちゃん 様

里井さんって西田さんの完璧さとは対照的ですが、坊ちゃんへの愛は負けてないと思って日記を書いてみました。

爆笑してもらえてうれしいなぁ。

連載化なるかしら?