サクラサク日々の中で (おまけの話)

いつものおまけだとつかつくのいちゃこらだとか、いちゃこらだとか、いちゃこらだとか・・・お☆様のパターンなんですが、今回は

コメを読んでお返事を書いてるうちに里井さんと司のその後のやり取りがおもしろそうだと思い始めておまけを書いちゃいました。

全然入学式のほのぼの感から遠ざかりますが楽しんでいただけたら嬉しいです。

名前を一人一人呼ばれて大きな返事で立ち上がる舞と翼。

校長先生の「入学を許可します」の声に「お前に許可される筋合いはない」と憮然とした表情で司がつぶやく。

いや・・・

これって・・・

どこの学校でもいわれる常套句ってやつだから聞き流してよね。

しっかり返事できた二人の成長に拍手しようよ。

翼なんてさっきまで桜の花びら追いかけて遊んでたんだよ。

じっと席に座って足をもじもじしてるのが見える。

あれはそろそろ飽きてる感じだもの。

動き回りたいのを随分と頑張っているて思う。

ほんと我慢できない性格は3人の子供のうちで一番司に近い翼。

先生を困らせなきゃいいけどと心配してる。

まぁ、司みたいに教師を教師と思わない横暴さを見せたら私が黙っちゃないけどね。

そうならないようにしつけたつもりでいる。

何かをやってもらったら必ず感謝すること。

ありがとうを忘れたらダメだとしっかり教えたつもりだ。

「里井、お前えらくなったな」

入学式が終わって家にたどり着いた私たち。

里井さんが開けてくれたドアから足を地上に一歩落とした状態で司が顔を上に向けた。

「え?」

驚いた表情で固まった里井さん。

わたしも何事って頭の中に疑問符が3つほど浮かんでしまってる。

車の向こう側には先に降りた双子が玄関目指して競争して走りだしてる姿が見える。

教科書の入ってる重さ分背負ってるランドセルが重そうに見える。

舞はしっかり紐を握ってるけど・・・

翼のランドセルはしっかりしまってなくて蓋の部分がめくれてバタバタなんだけど。

あっちも気にあるしこっちも気になる。

「お前に指図される時が来るとは思わなかった」

立ち上がった司が頭一つの上から里井さんを見下ろした。

図太いのは性格だけじゃないんだから!

その体格差で威圧されたら委縮するのが人間の本能。

防衛の気持ちが動く。

「右に寄れとか、笑えとか、よく俺に言えたよな」

それって・・・

朝の写真にの時のこと?

道明寺すごく素直そうに動いて幸せそうに笑ってなかったけ?

少しでもいい写真を撮ろうと里井さんは里井さんなりに頑張ってくれただけで、カメラマンとしては当たり前の行動だと思う。

ここはありがとうだよ!

子供たちより始末が悪い。

ドン!

司の背中を思い切り突き押した。

「なにすんだ!」

「何するじゃないわよ!」

「里井さんはいい写真を撮ろうとしてくれただけでしょう」

「あのな!里井のやつ坊ちゃんって言って指示を出したんだぞ!

この俺にいつまで坊ちゃんという気だ!

この場合どう見ても坊ちゃんは翼だろうが!」

もしかして・・・

指図されたことより坊ちゃんと呼ばれたことが司の癇にさわった?

あのねッ

いまだに時々西田さんも坊ちゃんって呼ぶことあるし、タマさんから坊ちゃん以外の呼び方を聞いたことないんですけど。

里井さんだって古株といえば古株なんだし、司の最悪の性格の時代も知ってるんだから仕方ないって思うけど。

司の怒りのレベル低くないか?

子供より低レベル。

おかしくなってくすっと唇が緩む。

私の笑みに誘われるように里井さんの口元も緩むのが見えた。

「申し訳ありません。

とても幸せそうな坊ちゃん・・・いや・・・司様を見てつい、気が緩んでしまいました」

帽子をとって頭を下げる里井さん。

里井さんに司様って呼ばれて少し照れたような気まずい表情が司から読める。

「いや~ほんと生きていてよかった」

感動に噎ぶように目を閉じる里井さんが私の手を取ってギュッと握って上下に振る。

ちらりと見上げた司は釈然としないというかこれ以上怒れないって感じで困ってる?

「俺に許可なくこいつに触るな」

里井さんから引き戻されるように司の腕が私の肩に回った抱き寄せられた。

なんとなく・・・

このパターンはよくあることで・・・

里井さんも慣れてるからシマッタって顔で私たちから離れて運転席に戻っていった。

チッ

舌打ちしたのはきっと照れ臭さを隠すため。

肩を抱かれたまま司の腰に腕を回す。

少しもたれかかるように司の肩にコツンと頭を傾けた。

気が付いたようにちらりと下に向けた司の視線と私の視線がぶつかる。

「なんだ?」

「何よ?」

「・・・いや…なんもねぇ」

舞や翼がとっくに通り抜けた玄関の扉。

その先から明るい笑い声が響いてる。

「もう、二度と写真なんて里井に撮らせねぇ・・・」

小さく聞こえた愚痴。

ダメだって、中学、高校の入学式や卒業式まだまだあるんだから。

そのたびに里井さんが嬉しそうに写真を取ってくれるのもすごく楽しいよ。

嫌だといいながら写真に収まってくれる司もすごくいい表情してるのはわかるから。

「ぜったい、また撮ろうね」

「・・・」

「・・・・?」

なんかすごくにんまりした表情で司が私を見てる。

その無言の空気が怪しいんだけど・・・

「お前、あと何人子供を作るつもりだ」

作る必要はない!

駿と会わせるとまだまだ写真は増えるはずで・・・

楽しめるのは小学校だけじゃないんだから!

このままのパターンだと・・・

ダメだから!

今日はまだ入学祝いのパーティーもあるから無理だって!

寝室に引きずりこまれるのはまずい。

「お前、なにかやらしいこと考えてるだろう」

司の顔が私の目の前に迫って停止。

そしてやさしく微笑みを見せた。

イッ・・・

目の前に見えた人差し指がピンと鼻先を弾いて離れる。

「残念ながらお前の期待には堪えられそうもねぇ。

おふくろも来るしな」

私を置き去りに玄関に一人で向かう司。

その背中はすごく機嫌がよく見える。

この切り替えの早さは何よ!

私が恥ずかしくなるのは可笑しくないか!

本当にもっ!

あきれるよ。

それでも司のことを愛してやまない自分が微笑んで直ぐ様、司のあとを追いかけた。