DNAに惑わされ 66

送るよ

言わなくても、それが当たり前みたいで・・・

自然の流れ。

部屋を出ていく君のあとに閉めたドア。

バタンと聞こえた音はなぜか寂しく聞こえた。

二人ならんで歩く。

街燈の下を避けるように歩いてる君の見えない表情が気になるのになんとなく見れない気恥ずかしさ。

コツンと触れた手の甲。

そのまま握った手のひらは少し汗で湿ってしまってた。

「いつか、私、クルクルなくせ毛の子供産むのかな?」

夜空の星の数を数えるような何気ない菜花の声。

え?

あっ・・・

ちょっ・・・

なんの準備もしてなくて、夢中で・・・

焦りと不安の浮かんだ僕の頭の中は混乱中。

ヤバイし、困るの僕より鮎川のほうだし・・・

もしもの過程で狼狽えるのは鮎川が悩むことにはさせたくないから。

重大なことさらりと言い放った鮎川にちらりと盗み見る。

「大丈夫だから、そんな時期じゃないし。

いつかの未来の話」

くすっと笑みをこぼす菜花の横顔が華やいで綺麗に見える。

ドキッとしたのは僕の不適切な準備のことじゃなくて、きっと菜花の見せた艶やかな色のせいの気がした。

「今度は気をつけてよね」

手を離して数歩先に行った菜花がスカートの裾をなびかせてくるりと僕を振りかえる。

今度って・・・

いつ?

思う僕の前でちらりと見えた下着の色はピンク。

最初から最後まで菜花には焦らされっぱなしな気がしてきた。

あれから、菜花をマンションの前まで送った僕。

ちょうどマンションの出口から出てきたのは菜花の母さん。

「あら、帰ってきたの?

泊まってくるかと思ったのに」

にっこりあっけらかんと言われるとそれはそれでどう返事をしていいのか困る。

「あの人ってバカよね。

しっかりお灸はすえといたから」

「パパいるの?」

「追いだしたから、当分は出入り禁止よ」

軽くウインクして茶目っ気たっぷりの表情を僕らに見せて手を振りながら僕らの目の前を過ぎてタクシーに乗りこんだ。

「泊まってく?」

見送りなが菜花がつぶやく。

「えっ?」

今日何度となく高まる心音。

部屋の中に入ったのはリビングまで。

菜花の部屋に興味があるのは事実。

これって送り狼ってことになるのかな?

「冗談。

何度もは・・・無理だから・・・」

えっ!

そうか・・・そうだよな。

耳まで真っ赤になって頬を染めた菜花に重なった二人の熱がよみがえる。

それがすごく恥ずかしくてしょうがないのに胸の奥に読みがえるジンとした疼き。

落ち着けなくなりそうな自分を必死で抑え込む。

「もう、部屋に行けよ」

これ以上一緒にいたら帰れなくなりそうで僕らしくない強気な声で菜花をせかせた。

帰ってからの眠れなくて・・・

何度となく僕のベッドに眠る鮎川を連想。

枕を抱いたまま眠ったことは誰にも言えない。

週明けの学校。

ぼんやりと窓際に腰を下ろして校庭を眺める。

青い空に浮かぶ雲がゆっくりと流れるのをなんとなく眺めてる。

「おい、駿」

朝からテンションの高い調子で僕の肩を組んできたのは蒼。

「今日もよろしく」

よろしくってなに?

「ノート」

僕の前に手のひらを上に見せてひらひらとさせる。

「見せろよ」

また課題やってないのかよ。

あっ!

僕も課題を思いだすどころじゃなかったんだ。

「蒼・・・僕も忘れてた」

「え?お前が?」

珍獣でも見るような表情が目の前に浮かぶ。

「何があった?」

「何んにもないよ」

「嘘つけ、お前が課題を忘れるなんて弁当を忘れるくらいの大ごとだぞ。

大雪とか雷雨になるんじゃねぇの」

課題と弁当・・・って同レベルで語れるのか?

騒ぐ僕らの声を静かにさせたのは目の前に差し出されたノート。

それはスーッと自然体で差し出された。

ツンと再度目の前にノートを押し付けてきたのは無言の菜花。

どうぞというように軽く唇が和らぐ。

「いいの?」

「駿がやってなければ蒼君困るでしょ。

駿なら見なくても直ぐ解けるだろうし・・・」

菜花からノートを受け取った蒼が崩した表情のまま僕と菜花を交互に見る。

「お前ら、なんかあったよな?」

こんなとこだけ異常に敏感。

「蒼には関係ないから」

追いやるように蒼の頭を腕で押した。

そのまま蒼の興味は僕らから課題に移って自分の机で菜花のノートを書き写す作業に没頭。

助かった・・・

放課後またねちねちと聞かれるののはごめんだ。

答えられるわけないし。

「僕も課題やらなきゃ」

「逃げるな」

僕を引き止めるように菜花の指先が制服のブレザーの裾をつかむ。

少し拗ねたような甘えるようなその顔がまた僕をどきっとさせる。

菜花の見せる仕草や表情、聞こえる声にこれからどれだけドキッとさせらるのだろう。

そのすべてが可愛くて僕を魅了する。

僕が日常を取りもどすのはもう少し時間がかかりそうな気がした。

拍手コメント返礼

スリーシスターズ 様

サクラ~のお話はやっぱり色気なしで行きたいですよね。

ほっこりと笑いのバランスは6:3の割合がいいと思ってます。

あとの1割はちょっとしたつかつくの軽いいちゃこらです。

>駿くん、ちゃんと避妊しましたよね! あ~、しっかり者の駿くんが、そんなミスするなんて考えたくない!

最初はその辺ぼかすつもりだったんですけどね。

なぜか付け足してしまいました。(笑)

まだね、駿君準備不十分だったのよ~

道明寺家御用達の超薄いフィット感は司の時は西田さんが手配してくれましたから。

ここは司が父親として持たせなきゃいけませんね。

司君自分はまだだったから駿君には早いと思ってるのかしら?

あっ・・・

この場面を小話で書いたら笑えるかも♪

突っ込むのはつくしか舞かどちらがおもしろいかな。

りり 様

まだ先は長いですよね・・・(;^ω^)

どこまで書けるかしら?

アーティーチョーク 様

ここで大事なのは蒼が二人を見て何を感じたかですよね。

この後ボーイズトークに花が咲くのかしら?

翔五郎さんしばらく菜花のマンション出入り禁止くらいにはされてるかもです。