秘書西田の坊ちゃん観察日記 14(HAPPY LIFE  side story)

この物語は『HAPPY LIFE  クリスマスの夜に』の西田さん目線のside storyです。

HAPPY LIFE  クリスマスの夜に』をお読みになったうえでお楽しみください。

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「西田、今年は駿の為にクリスマスパーティー開くから」

代表に告げられたのは11月の終わり。

代表の予定の中にお子様が加わったことで私の忙しさも2倍になった気がする今日この頃。

特に年末年始の慌ただしさ、結婚2年目のご夫婦での役割は年々重さを増している。

クリスマスにつくし様の誕生日に代表の誕生日。

仕事の調整は最重要課題だ。

駿ぼっちゃんがこの時期に生まれなかったことだけは感謝したい。

生まれたときから気を使ってもらってる様に思えてしまう。

「何が一番喜ぶと思う?」

「駿坊ちゃんですか?」

決まってるだろうと言うように睨まれた。

さすがの私も0歳児の気持ちまでは分かりません。

「調べて何かイベントを準備しましょう」

駿坊ちゃん喜ぶというよりも親の満足度をどう満たすかどうかの問題。

つまりは代表を喜ばす企画ということ。

0歳児の記憶に中には今回のクリスマスは残らないと思いますから。

「今回は屋敷でするから、西田も参加しろ」

かしこまりましたと頭を下げ早速クリスマスの準備に取り掛かる。

これでまた仕事が増えた。

『サンタからの子供への贈り物配達。

サンタが直接イブにプレゼントを届けます。』

単なる子供だまし。

本物のサンタを準備しろと無茶ぶりされそうだ。

『サンタからの手紙、スノーランドからのお届』

まだ手紙は駿坊ちゃんには早すぎる。

読む前に破いて遊びそうだ。

『雪のプレゼント。

イブの夜を純白で、降雪機でお庭を雪景色に』

つくし様なら喜んでくれそうだ。

配慮に配慮を重ねてイブの日を迎える。

当日夕方近くまで代表に仕事を入れてしまったことを除けば順調に進んでいると思っている。

「じゃあ、よろしくな」

いい残された代表を送り出して連絡を入れた。

「準備はできてますか?」

「大丈夫です」

向かった先には今日の日が一番貸し出しが多いであろう赤い服。

「すいません、手違いで外国人の男性が来れなくなりました」

恐縮そうに頭を下げる係の者。

このような失態は許されるものではないが、時間があまりにもない。

「仕方ない、私がなろう」

こんな馬鹿げた格好も私がすれば意外性は受けるかもしれない。

代表の高笑いの表情が浮かんでハーッと息が漏れた。

お腹に詰め物をして上着を着込む。

黒のブーツに黒のベルト。

緊急で手配したメークアーティストが躊躇なく作業を進める。

白い口髭に白いあごひげ。

白髪のかつらの上に赤い帽子。

背中に背負う大きな白い袋

鏡に映る全身はそのまま繁華街を歩いてもなんの違和感もないだろう。

違和感があるのは私だけだ。

道明寺家の屋敷に着くころは私の覚悟も決まった。

どうぞお楽しみください。

本日のパーティー会場。

ドアの前に手配して作らせたロボットのトナカイにソリ。

ソリの下には車輪付き。

ゆっくりと歩くトナカイの引くソリに乗り込んで左右に開いたドアの中に進む。

ソリから流れるのは鈴の音とジングルベルのBGM。

「メリークリスマス」

思い切りソリの上から叫ぶ。

やけっぱちな気持ちはぐっと押さえて冷静に声を上げる。

「に・・し・・だ・・・さ・・ん?」

信じられない様につぶやいたつくし様と視線がぶつかった。

「西田さんだぁ~」

次の瞬間「プーッ」ともれる笑い声。

それを合図にあちらこちらでも聞こえだす明るい音域の会話に混じる温かな笑顔。

「西田、最高」

満面の笑みの代表もサンタの格好。

ここにいる男性全員がサンタというのは私の考えも安易すぎたか。

ほのぼのとした笑顔は、無性に幸せな気持ちを私の心の中にもたらしている。

最高に幸せなイブだ。

それを運んできた小さな天使はつくし様の腕の中で大きく口を開けてあくびを一つ。

たわいない仕草がまたまわりの大人達を魅了した。

サンタの格好をする羽目になった西田さん!

あなたはやっぱり最高です。

拍手コメント返礼

こう様

5人のサンタに取り囲まれて本当にうらやましい。

プレゼントは確かに枕元には置けないかも♪

b-moka

大変ですよね西田さん。

毎年頭を抱える西田さんの姿も見てみたい。

でも周りは誰ひとり気がつかずに「今年も頼む!」と軽いノリの司。

やっぱり大変そうだわ~