第14話 DOUBT!!  5

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-From 1 -

「・・・これ・・・まずくない?」

上品に着飾ったドレスの裾をひらひらさせて戸惑いを顔に貼りつけた牧野に頬笑みが自然と浮かぶ。

「かわいいよ」

深みのあるブルーとパネル刺しゅうのコントラストが美しく小柄な身体を覆う。

両肩を露わに露出させてる姿を司が見たらきっと覆い隠したくなるに違いない。

「慣れてなくてスースーする」

「たまにはいいんじゃない、牧野らしくないのも」

「ホントは似合わないと思ってるんでしょう!花沢類!」

わずかに膨らんだ頬はすぐに小さく笑い声をたてる。

牧野が側にいるとどうしてこんな穏やかな空気が生まれるんだろう。

肌触りのよい温度に包まれるように身体が懐かしむ。

限られた二人の時間を惜しみ楽しみたい思いは、すぐに周りのざわめきが現実へと引き戻す。

都内の一等地に建つホテル。

財政会が集まったパーティー。

ここに爆弾を落とされたら日本はどうなるんだろうという顔ぶれ。

女性同伴を理由に今日のパーティーのパートナーを牧野に願い出た。

「花沢類が私に頼むってことなかったもんね」

すぐにOKをくれた牧野。

ごめん・・・

今、あんたを騙してる。

ここに二人で居ることは総二郎とあきらしか知らない事実。

司が知ったら逆上すること間違いなしだ。

会場の視線が俺と牧野に注がれている。

俺が女性連れで来ることが人目を引いてる事は間違いない。

第一段階は成功みたいだ。

F4の中で唯一浮いた噂がないの俺だけだもんな。

未だに俺たちに自分を売り込む女に親は後を絶たない。

婚約まじかとささやかれてる司にしてもそれは例外でない。

結婚してても構わないなんてささやかれてることを牧野が知ったらどうなるだろう。

言うつもりもないが二人の関係に1ミリ程度の傷をつける威力もないよな。

スポットライトを浴びた見たいに輝き出す会場の入り口。

周りの女性たちから感嘆の声が漏れる。

確認しなくてもわかる。

司を先頭にすぐ後ろに総二郎にあきら。

相変わらず派手だ。

周りはすぐに色とりどりのドレスに囲まれてしまってる。

それを通り越して鋭い視線が発光していた。

当たり前だよな。

俺が牧野の腰に手を添えてる格好見ればな。

「どけ、邪魔だ」

一瞬にして凍りつく空気。

お構いなしに目の前の女を片手で簡単に排除した司が俺たちを目指してる。

場をとりなしながら総二郎とあきらが司の後を追う。

俺たちにたどりつくまで1分も要しなかった。

「・・・えっ?道明寺?」

牧野が信じられないとでも言う様に小さくつぶやいた。

「あきら、どう言うことだ?」

「牧野が来てるなんて聞いてないぞ」

「何考えてる?」

瞬きもせずに強い眼光を放つ視線は牧野に注がれたままだ。

「牧野は今日は俺のパートナーだから」

牧野の腰を抱いたまま答える俺に司が必死で怒りをこらえてるように握りしめた拳が震えてる。

「今日は女性同伴じゃないの?」

男3人で現れたこいつらを見れば俺の言うことを素直に信じてる牧野には不思議な現象だ。

「心配しなくても俺ら会場で見付けるから」

軽いノリで答える総二郎。

「道明寺・・・も?」

今度は牧野の顔色が変わった。

 

-From 2 -

類から牧野を奪い去りたい衝動を必死で押さえる。

しばらく会わないと決めたのは俺。

俺に会いに来たあいつを不機嫌を装って追い返した。

その仕返しが類ってことはねぇよな。

そんな馬鹿げた妄想に占められるほど揺らぐ心。

声を聞いたらすぐにでも会いたくなりそうで携帯の着信名を見つめて握りしめた夜。

窓に映る街並みの明かりも淋しそうに見える。

お前がいなけりゃ・・・。

つまんねぇ・・・。

心の奥底でつぶやく本音。

今、正気でお前を見つめているのが不思議なくらいだ。

道明寺司と婚約すると噂を流してる本人を突き止めた。今夜対決な」

俺を迎えに来たあきらが車の中で状況を説明。

総二郎や類が来ることは知らされていたが、あいつが来るとは一言も言わなかったはずだ。

会場に踏み入れた途端目を奪われた光景。

そこだけが異様に輝いて一瞬で無音の世界に飛び込んだような錯覚に襲われた。

確かに聞こえていたはずの優雅なリズムの音楽、会話の声。

すべてが途切れる無声の世界。

牧野に神経がすべて集中するようにそれ以外は見えなくなった。

大人びたドレスの装いで類の隣に立つ牧野はしとやで色気が立ち上る様。

いきり立つような嫉妬は完全に類に向いてしまってる。

目眩すら覚えそうな感覚を怒りだけで押し込めている。

「どけ!邪魔だ」

冷酷に響く声も、もっとこれ以上出せねぇのかと思ってしまう。

荒々しく目の前の障害物を片手で振り払う。

「・・・えっ?道明寺?」

目の前にいる牧野の腰に軽く手を添える類。

二人を引き裂きたい想いを押し込めるように両手をスラックスのポケットに突っ込んだまま類を睨んだ。

「あきら、どう言うことだ?」

「牧野が来てるなんて聞いてないぞ」

「何考えてる?」

視線は類から牧野に移動して離せないまま、後ろにいるはずのあきらに問いかける。

「牧野は今日は俺のパートナーだから」

類を殴りそうになってポケットの中から取り出した拳。

押しとどまったのは「司!分かってるよな」というあきらの叫び声。

「今日は女性同伴じゃないの?」

「心配しなくても俺ら会場で見付けるから」

軽いノリで答える総二郎。

「道明寺・・・も?」

不安そうな表情に変わる牧野。

心配するのはそっちじゃねぇだろう。

俺と違う男にエスコートされて、俺意外にはさらしたくねぇ肌の露出度のドレス。

胸元まで見えている。

そこに注がれるいやらし目つきのやつらも気にいらねぇ。

お前・・・気がついてるのか?

「心配すんな、俺にはお前だけだから」

「それじゃ今日までのことはなにッ!」

強気の口調が俺を責めにかかってる。

大きく見開いた漆黒の瞳は潤みを浮かべる。

言葉とは裏腹のすがる様な瞳。

そんな目、すんじゃねぇ。

抱きしめたくなっちまう。

「牧野、今日はそのくらいにしておいて」

牧野をなだめる様な雰囲気で類が背中の中に牧野を隠す。

「司はひと仕事あるから、それまでは俺につきあって」

これ以上近づくな見たいなオーラを類が張り巡らしやがった。

目標を見失った指先をまたポケットに押し込んだ。

「牧野は司には関係ないってところ印象付ける必要あるから」

落ち着けとでも言うように総二郎が俺の方にポンと手を置いた。

そんなこと言われなくても分かってる。

今まで俺が我慢してきたのは牧野を危険にさらしたくないからに他ならない。

これも牧野の安全を確保するための一つの手段と考えれば我慢もする。

が・・・

俺に内緒で牧野をここに連れてきたのは、俺が素直に許可を出すなんて思ってないこいつらの判断。

類の彼女みたいに周りに印象付けると知ったらなおさらだ。

・・・で、なんで牧野の相手が類なんだ!?

釈然としねぇよな。

総二郎でもあきらでも胸糞悪いけどよッ。

総二郎とあきらが女性連れでもインパクトには欠けるか?

そんな判断か?

「お前ら、とことんまで俺を追い込む気だろう」

「早く解決したいだろう」

あきらが自信たっぷりに頬笑みを返した。

続きは  で

UP遅くなりました。

久々の更新です。

拍手コメント返礼

b-moka

これからどうなることやら・・・