愛してると言わせたい side story 2
『愛してると言わせたい』side storyの第2段です。
side story 1 をお読みになった後にご観覧くださいますようお願いいたします。
*本当に困る。
一瞬のすきを見付けてしゃがんで私の身体を押さえつける寸前の道明寺の右腕と右足の間の隙間から逃げだした。
「本当に大学行きたいの!」
「俺より大事なのか?」
なに子供みたいなこと言い出してるーーーーッ。
そんな問題じゃない!
「自分も仕事ほっぽり出せないくせに」
「俺が行かなきゃ億単位の損失になることもあるからな。それと比べる気か」
勝手な理屈だ。
「とにかく無理!」
道明寺の返事を聞かないままに部屋から飛び出した。
部屋が見えなくなるまで全速力で走って立ち止まる。
壁の鏡に映る私。
髪はぼさぼさで寝起きのまんま服を着てる状態。
その服も昨日と同じ。
顔も洗ってないのに艶やかな肌。
これじゃどう考えても彼氏の家から直行ですって感じが丸出しだ。
講義の準備もしてなし・・・。
結論的には大学に行ける状態じゃない。
本当ならシャワーを浴びたいところだ。
いたる所に道明寺の匂いがつけられいる様で未だに道明寺の腕の中にいるみたいな錯覚すら覚えてしまう。
せめて顔を洗て化粧くらいの身だしなみはしたい。
こっそっと足音を忍ばせて自分の部屋に戻る。
そこはさっき道明寺に押し倒されそうになった場所。
ゆっくりとドアノブをまわしてドアを数センチ開けて覗き込む。
「ギャーーーーーーー」
鼻先がひっつきそうな距離に均等のとれた滑らかな裸体の胸元。
まだいた!
ぬっと目の前に伸びてきた腕が私の腰に巻きついて部屋の中に連れ込んでパタンと締まるドアの音。
「今日もここに帰ってこいよ」
胸の中に抱きしめたまんま優しく響く甘い声。
「逃がさないからな」
強引な口調は強制力が半端じゃない威力を私に押し付ける。
「分かった」
道明寺から逃げる様に屋敷を出たのは10分後。
大事な講義には間に合いそうだ。
「おはよう」
私の前に立ち止まったのは笑顔の公平。
「おはよう」
「どうかした?」
じっと刺す様な公平の鋭い視線。
ウソを見抜かれそうな感覚にツーッと背中に汗が流れてきそうな緊張感。
「えっ?なに?」
「昨日と雰囲気が違うから」
「あっ・・・、記・・憶・・・記憶が戻ったの」
「良かった。でもどうやって?」
意外そうな表情はすぐに優しくほころぶ。
「えっ?あっ・・・はははは、突然朝ね目覚めたら戻ってた」
完全焦ってる。
道明寺と朝まで一緒にいたら戻りましたなんて言えるわけない。
それも大人の関係で思いだしたなんてなおさらだ。
泣きそうな気分に陥ってきた。
「服・・・昨日のまんまじゃねぇの?」
何かを勘ぐる様な表情。
お願いだから疑問符付けるないでくれ。
弱り目に祟り目とはこのことか。
「あんまり細かいこと気にすると女の子にもてないよ」
口調を強めて早口に声が出る。
「そうかぁ?」
公平の顔なんてまともに見られなくなっていた。
視線を外した先にはじっと立ち止まってこちらを視察する様な花沢類。
私と視線がぶつかった瞬間に距離が縮まりだす。
二人の男性が私を挟んで対峙する構図が出来上がった。
「牧野、おはよう」
「おはよう」
「よく眠れたみたいだね」
「えっ?」
「昨日より顔色よさそうだし」
唇が触れ合いそうな位置まで近づく整い過ぎた顔。
「わぁぁぁぁっ、久しぶりによく眠れたせいかな」
一歩身を引いて口から飛び出る苦し紛れの言い訳。
思わず額の汗をぬぐってた。
「記憶戻ったの?」
「なんで?」
「何となく?」
普段はのほほんとしてるくせにこんなときだけやたら感が働く花沢類は嫌いだよ。
全部見透かされてる気がして熱くなる身体。
「ウソ・・・下手だね」
「ウソつく様な事はないもん」
「牧野の思い出させたの司でしょう?」
じっと見つめる思慮深い瞳。
吸い込まれてて行きそうな感覚に素直に頷いてしまってた。
「よかったね」
にっこりとほほ笑んで次に告げた言葉に思わず凍りつく。
「・・・で、なんで昨日と同じ服なの?」
やっぱりこんな花沢類は嫌いだぁぁぁぁぁぁぁ。
「あんまり細かいこと気にすると女の子にもてないらしいぜ」
軽く流すように聞こえる公平の低い声。
私の頭の上で火花が飛び散ってないか?
「アッ!あっ!公平、講義!」
「それじゃ、またね花沢類」
昨日のことが筒抜けになりそうな花沢類より公平の方が誤魔化しやすそうだと判断して、
そそくさと逃げだすようにその場を立ち去る。
ククッと花沢類の笑い声が聞こえる気がした。