天使は聖夜の夜に舞い降りる 4

佑君大丈夫かしら?

舞ちゃんに接近しすぎると司がいくら澪ちゃんに目が行ってるとしてもねぇ~

司君の俺の娘に近づくなという保護欲で警戒体制とられちゃうぞ。

つくしもいるし、駿もいるし、F3もいるから大丈夫かな?

それに佑君応援隊の心強い読者様もいますものね(^^♪

「あいつら大丈夫か?」

総二郎がちらりと向けた視線は俺の息子の佑と司の娘の舞を見つめてる。

二人が付き合ってることはこの場の誰もが知ってる事実。

司だけはまだ認めようとしてねぇけど。

「牧野と言い合ってる時の司は牧野しか見てないから大丈夫なんじゃない」

「さすがあきらの息子だよな。

その辺を考慮して舞にそばにいるとしたら侮れないぞ」

類の言葉にうなずく総二郎が少しおどけるようにそう答える。

つなげば一本の線状に並ぶ二組のカップル。

一組は見慣れた言い合いの喧嘩中。

あいつらも昔から変わってない。

売り言葉に買い言葉。

牧野があきらめてしょうがないと折れるパターンとキレて喧嘩別れするパターンの二種類。

結局元の鞘に収まるのは司の強引な攻めに牧野が口説かれて落ちるから。

20年以上経っても変わらない二人に心を和ませる俺らも変わりなし。

もう一つの若い二人は穢れのない初々しい雰囲気でほほえましく映る。

俺と総二郎のあの頃、恋愛の駆け引きを楽しんで本気の恋なんてしてなかった。

「俺たちも少しは協力しないとね」

類はそのまま舞に近づいて道明寺の末っ子今年生まれたばかりの澪を抱いて戻ってきた。

なるほどな。

確かに強力。

澪を抱いたまま牧野に近づく類。

そんな類を黙ってみてる司じゃねぇし。

「まーきの」

類の間延びした呼び方はおっとりと空気を作り出す。

その空気を一瞬で真っ二つに引き裂く冷気な視線。

そんな殺伐とした視線には慣れてる牧野は気づいてな素振りで類の抱く澪の前においでと手を差し伸べる。

ヤダというように類の胸にしがみついて澪が類の胸元に小さな顔を押し付けた。

「澪も花沢類はおきにいりだもんね」

「おい、『も』って、なんだ!」

ぐいと牧野の肩に手を置いて乱暴に司が牧野を振り向かせる。

揺れた身体はバランスを崩して司の腕の中に落ちた。

演技っぽく司の腕の中に牧野が身体を預けたように見えたのは俺だけだろうか。

「え?澪だけじゃなく舞も、もちろん私も、花沢類は頼りになるって思ってるから」

「お前、わざとだろ?」

「なにが?」

「わざと俺を嫉妬させようと思ってんじゃねぇか?」

落ち着いてきたと思った二人の言い合いが再燃。

「嫉妬したの?」

「当たり前でろうが、俺の前で俺以外の男を褒めるんじゃねぇよ」

澪のことも論外となるのは牧野に類が絡まってきたときにおこる現象。

司を不機嫌にさせるのは牧野が一番。

今の状況じゃ牧野以外司の目に見えてない。

そしてここにいるすべての人間は牧野と司を見つめてる。

子供たちも見てるぞ!

そんな注意を促すようなやつはいないのが笑える。

駿や舞や翼もいつものが始まった的な表情でなれたものだ。

パン!パン!パン!

部屋に響くクラッカーの音。

翼の周りから匂う焦げた火薬のにおいとクラッカーの中から飛び出した紙テープが舞い落ちる。

驚いた澪がビクンと身体を震わせて泣き顔になって助けを求めるように牧野に手を伸ばす。

それを横からさらった司に澪が大声で泣き出した。

「泣くな!パパだ!」

司・・・お前じゃ泣き止まない。

「泣き止むわけないでしょう」

澪を牧野にすぐに奪われた司のどうしようもない情けない表情。

こんな司がみられるのも司達一家のもとに俺たちが集まる一つの理由。

今年のクリスマスは例年以上に楽しめる気がしてきた。