Happy Birthday( つくし)
*「絶対帰るから待ってろよ」
12月28日もあと数時間。
何でこんな時に仕事が終わらねぇンだ。
ビルの最上階の一室で携帯を握りしめて睨みつける。
「待ってるから」
力なく返事した声が耳に残る。
「来年の結婚式まで仕事に追われたくないでしょう」
涼しい顔で西田がおれの横で言い放つ。
最近はなんでも結婚式の為って条件付けてきやがる。
しょうがなく西田に言われるままに仕事をこなす俺。
来年の結婚をオープンにした途端忙しくなるってどういうことだ?
西田にとっては俺を動かすためのいい材料が見つかったとでも言うところか・・・。
来年の春が過ぎたら通じねぇからなッ。
日にちが変わるまで30分を切ってたどりついた自分ち。
俺の部屋で牧野が首を長くして待ってるはずだ。
「仕事ならしょうがないよね」って淋しさを隠したまま長い睫毛を伏せたあいつ。
今から朝まで俺の時間全部やる!
喜ぶか?
喜んでるのは俺の方かもな。
牧野を抱きしめてる自分を想像してニンマリとなった。
走りだしそうになる気持ちを押しとどめてゆっくりと足を進める。
部屋のドアの前でふと足を止めた。
数人の話声・・・。
それも聞き覚えのある。
「なんで、てめえらがいるんだ!」
ドアを蹴る様に開けて叫んだ。
「「「「お帰りっ」」」」
テンション高く音符付きで上がる声。
「折角の誕生日、牧野もほっとかれたらかわいそうじゃん」
類!別にほっといてねぇよ。
「司が帰るまで皆で祝ってやろうとの俺たちの優しい心遣い」
なら・・・
もう、帰れっ!あきら。
「来年は二人っきりで過ごさせてやるから」
総二郎!お前に言われなくてもそうするよ。
すべて心のうちで叫んで目で語る。
全部スル―してやがる幼馴染3人組。
「つくしって健気だよね~司は遊んでるわけじゃないから我慢できるんだって」
牧野をわざとらしく抱きしめて慰めてる滋。
必要ねえぞ!
「誕生日は付き合ってる時の一大イベントなんですよ」
「それもこれが独身最後でしょう。私なら許しませんよ~」
牧野の代わりという様に桜子に睨まれる俺。
「お前らもういいから帰れ」
「何言ってるのよ!皆私の為に来てくれたんだから」
今度は牧野に睨まれた。
「俺がいれば十分だろうが」
「祝ってくれる人がいっぱいって、うれしいじゃん」
二人で向き合って火花が散る。
ここで喧嘩なんてムード丸つぶれだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁ。
子供の頃はクリスマスと一緒だったし・・・
あれは絶対誕生日のケーキ浮かせるためだったんだ。
小声でぶつぶつと、いきなり家庭の事情力説する牧野。
それと今がどう結びつく?
付き合いだして4回目の誕生日。
いろいろあったよな。
二人で過ごした誕生日・・・
ねぇじゃねーかぁぁぁぁぁぁぁ。
1年目・・・
レストランで食事中の西田からの無情の電話。
2年目・・・
二人でホテルのはずが、なぜかあいつら3人ついてきた。
3年目は・・・
3人プラス3人のお邪魔ムシの合計8人の団体様だったよな。
思い出して引きつる表情。
今回はこいつらに邪魔されず二人で過ごそうと思ってたのに最後のとこで仕事?西田に邪魔された。
吉凶はすべてこいつらが起因してねぇか?
俺らを応援してるはずだよな?
過去のことより大事な今を考えろ!
ケーキだケーキ!
お前の為に作らせたケーキ。
誕生日の一大イベントばっちり決めてやると気をとりなおす。
連絡して使用人に運ばせる、3段重ねの生クリームのイチゴのケーキ。
1度でいいから一人でかぶりつきたいと食いしん坊の牧野らしい願望。
かなえてやるよ。
「わ~こんなの一人じゃ食べられないよ」
「牧野らしい反応」
周りから沸き起こる笑い声。
「見ようによっちゃウエディングケーキみたいですよね?」
「俺らの結婚式のケーキーなら天井につくぞ」
桜子の声を直行で否定。
別にいいじゃん見たいな目で牧野に見られた。
「牧野ほら、食え」
ケーキを皿にのせて牧野に渡す。
俺と肩を組む様に左右から両腕が伸びてきた。
「司クン、もしかしてケーキの中に指輪とか仕込んでねぇ?」
あきらの声にピクッと頬が動く。
「俺、指輪を気がつかなくて呑み込んだやつ知ってんだけど」
後が大変だぞ、臭い仲ってなっと総二郎に耳打ちされた。
思わずツーと顔面から血の引く音。
牧野が大口開けたパクッといったら笑える話じゃなくなるッ。
「牧野食うなッ」
慌てて皿を取り上げた。
皿の上は何も残ってなくて・・・
「何もなかったか?」
「何が?」
「その、カッチッと歯ごたえのあるものなかったか?」
「口の中見せろ!」
「何すんの!」
無理やり牧野の口に中に指を突込もうとして顔をそ向けられた。
俺達の周りからげらげらとこらえ切れない様な笑い声がおこる。
「司、心配すんな、無事だから」
「はぁ?」
「しっかり保護してるから」
小さい箱を類がおれの目の前に差し出した。
「もう一度、俺達の前でプロポーズって言うのもいいんじゃない?」
「振られるかもな~」
「るっせ!勝手に人のもん取るなッ」
奪う様に小さい箱を取り上げた。
何が何だか分かんないって、ただ一人状況が呑み込めてない鈍いのが一人。
しょうがねぇと牧野の前に片膝ついて見上げる。
俺にこんな格好させるただ一人の女。
「牧野、もう1度言うからしっかり聞いとけ」
「結婚してくれ」
そう言って差し出す小さな箱。
ゆっくりと指先が動いて受け取った。
開いた箱から現れるエンゲージリング。
「誕生日プレゼントと指輪が一緒なんて安易すぎ」
そう言って流れる一粒の涙。
まるで真珠が一粒落ちた見たいだった。
抱きしめた胸元で「うれしい」とつぶやく声。
「てめえら、もう邪魔すんなよ」
視線をちらっと邪魔ものに向けながら緩む頬。
あいつらも気になれねえくらいに思いっきり牧野を抱きしめた。
12月28日はつくしチャンの誕生日ということで♪
モカソフト様のキリ番リクエストとtsun様のコメントにお応えしてUPしてみました。
久々のつかつく24時の短編です。
この先の甘アマは時間があるときで御許しください。
拍手コメント返礼
b-moka様
大掃除お疲れ様です。
掃除もまだ終わらずUPしている私って・・・
つかつく依存症なのかも?(^_^;)
hanairo様
ご無沙汰です。
ほっこりしていただき良かったです。
次は司の誕生日で♪
ほっこりできるでしょうか?