第14話 DOUBT!!  14

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-From 1 -

薄れ行く記憶の中、数人の顔が私を覗いてた。

ぼやけて見える顔と瓶の中で籠る様な声。

「この中に入れて運べ」

それはたしかに男性の声で・・・

そこから記憶が途切れた。

ここどこだ?

ベットの上に寝かされている私は何の束縛もされてなくて自由に手足が動くことに少しほっとした。

ぼやーっと視界に映る見覚えのない部屋。

数回の瞬きでようやくはっきりと視界がとらえる。

なんの変哲もないありきたりの部屋。

机の上に几帳面に並べられてる本。

何もかもがきっちりと正確に測って平行に並べてある感覚。

ちりひとつ落ちてなさそうな部屋の中は神経質そうな生活感を匂わせる。

まるで西田さんを思い出させるよう。

西田さんの部屋ってことはないよね?

考えが楽天的過ぎだ。

ベットから身体を起こして部屋の中を眺めた。

ワンルームのマンションは一人暮らしを想像させる。

ベットと机とTVが置かれただけの必要最低限の生活品しか置いてない感じだ。

今なら逃げれる。

そう思った瞬間にガチャッとドアから響く鍵を開ける音。

ゆっくりとスローモーションのようにドアノブが回るのを見つめてた。

ドアが開いて逆光を背に立つ人影。

顔がわかんないッ。

ごくりと上下する喉。

手が震えてるのは緊張の為か怒りの為か。

グッと腹に力を入れて立ちあがった。

「気がついたみたいだね」

落ち着いた優しい声の響きをもったその主は静かにバタンとドアを閉めて振り向いた。

どっかで見たことある様な・・・ない様な顔。

「手荒なことしてごめん」

と頭を下げるのは男性。

誰だっけ?

「君を助けたくて」

「無理やり結婚迫られて拘束されてるって聞いたから、もう大丈夫だよ」

無理やり?

結婚?

拘束?

誰に?

はぁ?

道明寺しかいないんだけど?

確かにあれは拘束というより束縛だけど・・・。

嫌がっては・・・ちょっといたかも・・・。

でも・・・まあ・・・

結婚の話は来年で・・・。

嫌がってもいないんだけどな私。

って!

それよりこの人!誰よッ!

「でも意外だったな、君が僕のこと好きだなんて知らなかった」

メガネの奥がにっこりとほほ笑んで線になった。

今・・・

この人・・・好きッて言ってなかったか?

私がこの人を?

何でよーーーッ。

どこからそんなわかんない話が吹き上がる?

話が見えなくて頭の中がこんがらがってきた。

命の危機感はないんだけど別な危機感が出てきてそうだ。

「あの・・・私あなたのこと知らないんだけど・・・」

「なんで知らない人を好きになるのよ」

「僕のことは心配しなくていいんだ。道明寺に僕が危害を加えられると思ってるんだろう」

「全部松川さんから聞かされてるから」

あの女、なに言ったんだッ。

「君のことは僕が守る」

ゆっくりと歩み寄る男。

ち・ちょっ・・・近づくなッ。

ギュッと男の両手が私の握りしめてた拳を包み込む。

なんだか選挙戦の候補者に思いを込めて握り責められた様な感じ。

この人思い出した。

同じ法学部の・・・名前なんだっけ?

まったく接点がなかったんだよな。

「あの・・・名前なんでしたっけ?」

「吉井だよ。吉井守

根が真面目つーか。真面目だけが取り柄みたいなタイプ。

害がないと分かると意外に冷静に頭が働きだすものだ。

「ところで松川さんは吉井君に何て言ったの?」

にっこりと落ち着いた表情を作る。

「権力で牧野さんを自分のものにしようとしている横暴なやつ」

「本当は嫌いなのに逃げ出さないようにいろんな手を使って牧野さんを追い込んだ」

「泣きながら言いなりになることを選んだ」

なんて健気なんだろって僕は君がかわいそうでと嗚咽を洩らしながら鼻をすする吉井君。

ドラマの見過ぎなんじゃないか?

「もう、道明寺は君のこと諦めてるはずだ」

「な・なんで?」

「君はここに丸一日いた」

それで道明寺がどうして諦めるのよ。

「僕と二人っきりで・・・」

はぁ?

何もされてないと思うけど・・・

慌てる様に身体を服の上から触る。

大丈夫だよな?

大丈夫なはずだ!

「道明寺は自尊心の強い奴だから男と一緒にいた君を許すはずないって松川さんが教えてくれた」

許さないのは私じゃなくて吉井君の方だと思うけど・・・。

なんという間抜けな作戦考えてんだ?

普段の冷酷、傲慢なタイプの道明寺ならそんな考えも浮かぶのも仕方がないと思う。

道明寺のこと知らな過ぎだッ。

私に何があっても今の道明寺なら受け止めてくれるし全力で守ってくれるはずだ。

それよりも自分のせいで私が傷ついたと知ったら、道明寺は自分を責める。

そんな人だと思うから互いを信じられるし一緒にいたいと思う。

抜け穴だらけじゃないか!

最後の押しも弱い。

そのおかげで私は助かったみたいだけど。

「吉井君・・・早く逃げたほうがいいかもよ」

思わずそうつぶやいた。

DOUBTの意味は『疑い, 疑念; 懐疑; 不信』

どうなるのかなこのお話。

つくしちやんは人を疑うこと学習した方がいいかもしれませんが(^_^;)

学習しないから面白い♪

拍手コメント返礼

kobuta様

いえいえ、足跡残してもらえるだけでうれしいですよ。

松川さんは短に使われてるだけの設定です。

そうしないとお話が込み入ってしまいますので(^_^;)

猛獣の足跡はもうそこまで♪

hanairo様

吉井君もある意味被害者でしょう?

悪いのは松川?

元をただせば指輪を盗んじゃたあの女です。

続き・・・

それがなかなか難しいんです。

このお話、どうしてこんなお話書き始めたかと後悔気味でして・・・(^_^;)。

しずか様

助けた後は抱擁にチュ

司がエネルギー全開で助け出しそう(^_^;)