第14話 DOUBT!! 15
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「やだ・・・」
狂おしいぐらい甘い声。
「これ以上は無理だって・・・」
非難気味の声が小さく消える。
「いま最後まで行かないと抜けなくなる」
押し殺した様に聞こえる男の低い声。
「痛ッ」
牧野ーーーーーッ。
こらえ切れなくドアを勢いよくけ破った。
「てめぇ!牧野にしやがる」
「つーか、お前も死ぬつもりで暴れ・・・ろ」
目の前にベットでじゃなく、その下でお行儀よく正座して向かい合ってた男女が驚いた顔を俺に見せる。
男の右手は牧野の人差し指を握り、左手には細く銀色に光る針先が見えた。
気がついた様に牧野が男の右手の中から人差し指を引きぬいた。
ベットに押し倒されてる牧野を想像して放出した怒り。
「さわんじゃねー」と男に飛びかかるには、それをさえぎる牧野の背中。
お前が邪魔じゃねーか。
目の前の男に怒りをぶつけるには余りにもきょとんとした男の間抜けな顔。
どうみても襲われてたわけじゃなさそうな雰囲気。
「何してんだ!」
殴りかかろうとした拳をしょうがねえから自分の手のひらにぶつける。
「木の箱に入れられて運ばれたみたいでね。指に棘が刺さって痛くて、取ってもらってただけだから」
勘違いする様な声を出しやがって。
聞き様によってはその気になってたようなとぎれとぎれの甘ったるい声。
俺意外に聞かせんじゃねーよ、そんな声。
そう思ったら我慢できなくなった。
怒りをぶつける様に男の胸ぐらを掴んで一気に持ち上げて立たせた。
「牧野連れ去って、何のつもりだ!」
1発でベットの上に飛んで行く情けねぇ弱すぎる奴。
「ダメだからねっ」
二発目に降り上げた拳に牧野が飛び付いてきた。
「止めんな、お前、自分が誘拐されたんだろうかぁ」
「大丈夫だから、寝てただけだしね」
牧野の腕を振りほどこうとした俺に全体重をかける様に身体を胸元に押し付けてくる牧野。
「寝てたって、こいつと一緒にか」
お前の寝顔を見ただけで俺の法律じゃ死刑だぞ。
「バカッ、何にもあるわけないでしょう!」
「何かあったらこいつは今頃海の底に沈めてやるよ」
「冗談に聞こえないから」
胸元でクスと漏れる小さな笑い声。
「・・りがと」
「ん?」
「助けに来てくれて、ありがとう」
か細い腕が背中に回ってギュッと抱きついた。
これじゃ、俺もお前を抱きしめるしかねぇじゃねえか。
抱きしめながら視線を転がってる男に向ける。
1発じゃ収まらねぇけど牧野を抱きしめる心地よさを離すほど野暮じゃない。
こいつから抱きつくなんて滅多にねぇレアなんだ。
顔を待ち上げてじっと潤んだように見つめる瞳。
高まる熱い思い。
どれだけ心配したと思ってるんだ。
昨日は寝れなかったぞ。
触れ合って確かめたくなるこいつの肌のぬくもり。
感じてぇ。
唇を近づけた瞬間に手の平が俺の口を押さえこんだ。
「チョッ!タンマ」
タンマッて、普通映画じゃ助けられたヒロインがヒーローにキスのご褒美だろうか。
顔まで横に反らして拒否すんな!
上等じゃねぇか。
見物人いる前で押し倒すぞ!
「少しだけ待って」
哀願するように見つめる上目の目線。
甘える様なこれには弱いんだよな。
男に視線を向けて牧野が口を開いた。
「吉井君、私、強要されてるわけじゃないから。束縛もされてない」
「全部松川さんのでたらめだよ」
「吉井君のことも好きじゃないし、私の好きなのは道明寺だから」
思わぬ牧野の告白。
さっきまでの不機嫌さがウソみたいに完全にしぼんだ。
「道明寺」
「道明寺ッ!」
「ん!あ?」
「帰るよ」
まじまじと牧野の顔を覗き込む俺。
「な、何よ」
どぎまぎと泳ぐ牧野の視線。
「俺のことスキって、他人に宣言するの初めて聞いた」
自分に直に言われるよりうれしさが込み上げる。
「おれも誰かにお前のことスキって宣言すっかな」
「みんな知ってると思うけど・・・」
「それよりさ・・・」
俺の気持ち無視し過ぎだ。
完全にスル―してやがる。
「よくここわかったね」
牧野を抱きよせたまんま乗り込む車。
「全部かたついたからもう大丈夫だぞ」
このいきさつ聞いたら牧野はどんな表情をするのだろう。
怒る!キレる!暴れる!
泣く!これが一番らしくねーよな。
「ゆっくり話してやっから」
「道・・明寺ッ苦しい」
腕の中に思いっきり牧野を抱きしめた。
事の顛末は次回♪
そういえばこのお話の最後は花男ファイナル前夜祭の特別番組であったF4とのやりとりにつなげたいと思って書き始めたと第1話で書いたの覚えてますか?
だから最後の場面はもう出来上がってるんです。
あーーー早く終わらせたい!