St. Valentine's Day 5(司 20years)

 *

いい雰囲気!

いい流れ!

そう思ってるのは俺だけじゃねぇよな?

甘ったるく上目使いに見つめる瞳。

そっと頬を優しく指先でなぞる。

口づける位置まで顔を下ろしてその動きを止める。

いや・・・

まて!

こいつの場合思いもしない逆転ありだ。

寝る!

熱出す!

最悪逃げられる!

この3点セット今まで経験あり。

だからヤキモキしたまま進展しない仲。

付き合って1年以上キスまでって誰が信じる。

「お子様だねぇ」

あいつらのからからかい気味の声に気にしてない素振り。

いい加減あきた。

か細い肩を抱いた左腕にも力が入る。

何も考えずに押し倒すしかない。

「あっ!」

突然上がる色気のねぇ声。

俺の存在なんて気にも留めずに這ってごそごそと毛布の中を抜け出す牧野。

引きとめるすべをなくしたまんま固まる俺。

ぽっかりと俺の横がまんまるく空洞を開けた。

寒っ・・・。

すぐに戻ってきた牧野は空洞の中にすっぽりと収まった。

ホッと一つ俺の口元から安堵のため息。

触れ合う身体の温もりはほんわかと毛布の中で浸透してくる。

そっと鼻先を牧野の髪がくすぐる。

清純なシャンプーのにおいが鼻先をくすぐった。

今すぐにも抱き倒したい衝動。

押さえろ!

心の声で焦るなと自分に言い聞かせる。

そんな俺の苦悩を知るはずもなく小さな動きを俺の胸元で繰り返す牧野。

手に持った鞄の中をごそごそと音を立てて目の前に「ハイ」と出した長方形の箱。

「バレンタインなのに、忘れるとこだった」

細く目を細めて照れくさそうに頬を染める。

「おっ♪」

チョコを受け取って緩む頬。

何気に視線の先が鞄の中の小さい箱を捉えた。

「鞄の中、まだ箱入ってるぞ」

「あ~あ、これ?」

取り出したのは3個の形の違うリボンのかかった小さな箱。

どうみてもチョコレート入り。

「花沢類に西門さんに、美作さんにもチョコあげようかなって準備してたんだけど・・・

今日は無理だよね」

「あいつらにもやるつもりだったのか!」

言いながらピクッとこめかみが脈を打つ。

「いつもお世話になってるからね」

のほほんとした声でニコッとほほ笑えまれた。

その笑顔であいつらにもチョコ渡すつもりだったのかと波打つ心。

洒落にも何んねぇぞッ。

「やる必要ねえだろう」

「あいつらも食べきれねぇくらいのチョコもらってるだろうしなッ」

俺に初めてチョコを贈るバレンタインであいつらにも同じようにチョコを渡す神経が許せねぇーッンだ。

「あいつらもって・・・

道明寺ももらってるの?」

「まあなぁ」

数日前から段ボールで届くチョコの山。

毎年恒例みたいなもの。

そんなことはどうでもいい。

「俺意外に食わせる必要ねぇって言ってる・・・ッ」

言いかけた途中できつい目をした牧野に声が止まった。

そのまま無言の状態で不機嫌そうに顔をしかめる。

「チョコもらってるんだ」

もらってるといっても勝手に送りつけてくるだけでほとんどは使用人が持って帰るぞ。

「俺が受け取ったのは牧野!お前のチョコだけだ」

必死の弁解にもツンと背中を向けられた。

不機嫌の要素をかかえてるの俺じゃなかったのか?

一緒に毛布でくるまろうなんて雰囲気はブリザードの彼方に押しやられてしまってる。

寝る!熱出す!だけじゃなく拗ねるって展開予想してねぇーーーーーッ。

「帰る」

ドスっと立ちあがった牧野を引きとめる様に腕を伸ばして手首を掴んだ。

ドS倶楽部の皆様の温かい声援?に応えて生転がしの状態への流れに~

いや、まだ挽回は不可能ではないよ司クン♪