幸せの1歩手前 8

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目覚めのいい朝。

思い切り体を伸ばして開いた瞼。

薄ぼんやりと見えるのは真っ白いシーツ。

さっきまで側に寝ていたはずの住人を探す。

いない?

なんで?

別に私より起きても不思議じゃないんだけど・・・

って!

十分不思議なんだよ道明寺の場合はッ。

昨晩帰ってから寝るってふて寝気味に布団を頭からすっぽりかぶって寝たのは道明寺。

お風呂から出てきたら完全に寝息を立てて寝入ってた。

いつもなら・・・そう!

責任取れとか、隙があるとかから始まってネチネチと責める。

嫉妬丸出しから強制的に押し倒されるパターンなはずなんだけど・・・。

そう思ってもけして期待しているわけでは断じてない。

いつもと違うパターンを見せられると微妙に不安になるだけだ。

たぶん・・・。

朝も私より早く目を覚ますことはまずない。

目が覚めても寝てる私を抱き寄せたり、気を抜くと起きるまでどこ触ってくるかわかんない。

身支度を整えた私がいつまでも起きない道明寺を揺り起こすとベットの中に引っ張り込むのをひそかな楽しみにしてるんじゃないかと疑いたくなるような行動にすぐでる始末。

昨日の流れで行くと絶対今日はそのパターンなんですけど・・・。

「道明寺?」

ベットから抜け出して呼んでも返事ない。

トイレ、浴室、書斎、道明寺が用事のないはずの私の部屋まで歩きまわる。

ついでにテーブルの下まで頭を突っ込んだ。

本当にどこにもいなかった。

テーブルに付いた指先にカサッと紙質の感触。

メモだと気が付いて手に取る。

力強く書かれた見慣れた文字。

「先に行く。お前は勝手にあとから来い」

文字までふてぶてしく見えてしまう。

怒ってる?

私に会いたくない?

そこまで機嫌を損ねるようなことしたか?

私を無視する様な態度はあいつらしくない。

昨日のことを頭の中で時間を巻き戻す。

玲子さんと、甲斐さんと3人での食事。

冗談を言い合ってたいたところに道明寺が現れた。

「俺もつくしちゃん好きなんですから」

甲斐さんのこの言葉に反応して威嚇。

タイミング良すぎだ。

どうして道明寺がここに出没したのか浮かぶ疑惑。

結果はGPSで私の居場所を見つけられただけのことだった。

この時点で不愉快になるのは私の方だ。

が・・・。

「俺が迎えに来てうれしくないのか」

まずはこれが道明寺の言い分。

明日仕事に行くと宣言したら「気が抜けねぇ」って返事された。

思惑ありげな表情。

帰りの車の中でも店の中での攻防を繰り返していた。

「我慢してやるよ」

「我慢て・・・」

「しょうがねぇから我慢してやるって言ってんだ」

にやりと不敵な笑いを浮かべた表情。

あれは怒ってる顔じゃない。

何か企んでる顔だ。

なにするつもりだ?

まさか甲斐さん!?

慌てて出社の準備をして屋敷を出る。

いつもより30分は早い時間。

10階を通り越してエレベーターは最上階まで昇る。

「道明寺!」

息を切らして飛び込んだ執務室。

深々と椅子に腰かけてふんぞり返っている道明寺が不敵な笑みを浮かべてた。

道明寺が何をたくらんでいるか?

興味があるのはその1点ですよね?

残念ながらつくしの心配は皆無でしょうけど。

何企んでるのかな~