下弦の月が浮かぶ夜22

 *

「何がどうなってるの?」

納得できてない感じに牧野が首をかしげてる。

なんとなくあきらの気持ちを思ったら自分の嫉妬が子供じみたものに感じてきた。

あいつは今まで自分の気持ちを胸の奥にしまいこんでいたんだと分かってる。

俺達の中でもいちばんやさしくて・・・

穏やかで・・・

物事を冷静に判断できるやつ。

今までも、これからもあいつは俺達の前でその立場を変えることはないだろう。

こればかりは譲れない。

つくしに向けない嫉妬を、他のやつには向けてしまってる。

未だに俺は牧野にとっては特別だと思いたい。

少しでもその割合が侵されることの不安は半端じゃないみたいだ。

今さらそれを再認識させられるとは思ったなかった。

悟られない様にこぼれる吐息。

「花沢類、どうかした?」

「・・・いや、何でもないよ」

今・・・

俺は・・・

あきらと同じくらい気を落としているのかも知れない。

「あきらの今回の見合いにはあきらの祖父が乗り気みたいで、成り行きで一緒に住むことになったみたいだ」

明るい口調の総二郎もあきらの気持ちは察してるはずだ。

そのあきらの本音を牧野に知らせる必要もないことも理解してるだろう。

「成り行きで一緒に住めるの?」

総二郎と俺を交互に見つめる見開かれた瞳。

「牧野と司も成り行きで一緒に住んだことあったよね?」

「・・・まあ・・・そんなこともあったけど・・・」

牧野が顔を赤らめて勢いが止まった。

「牧野があきらの恋人の振りをする必要はなくなったんだから安心していいんじゃないか?」

清々しさを漂わせたまんまのハリのある総二郎の声。

エレベーターが開いた途端、乗り込みかけた目の前の女性が「キャー」と声を上げて動きがとまる。

目の前の女性たちにと頬笑みを向けるのを忘れない総二郎。

俺達3人は固まったままの女性達とすれ違う様にエレベーターを降りた。

「本当に安心して大丈夫なのかな?」

すれ違った女性たちを気にしながらちらりと視線を投げて牧野が総二郎に視線を移す。

「何か心配ごとあるか?」

「ほら、だって無理やり一緒に住めって言われてるわけでしょう」

「私が見た女のひと今までの美作さんの付きあっていたタイプとは違ってたし・・・」

「確かに今までのあいつのタイプとは正反対だな」

すれ違っただけの俺でもそれくらいはわかる。

牧野の頭の中は自分がどうすべきかその一点にかかってるはずだ。

このまま黙って見ているというタイプじゃない。

結末はあきら次第。

牧野が考えて行動してもどうなるものでもない。

行動を起こしたらそっちの方がややこしくなりそうだがそんな思いは毛頭ないだろう。

自分ができることを必死に頭の中で探し回ってるに違いないのだから。

お前らしい。

悩んでるのが丸わかりの表情を見つめながら笑いが口元に浮かぶ。

俺もそれにつきあう気持ちを準備してしまってる。

「どちらかというとすれてないというか純朴な分類だもんな、あきらの見合い相手」

何かを思い浮かべて総二郎が「クク」と声を漏らす。

確かに洗練された大人の女性にはほど遠い。

分類すれば牧野に近いタイプ。

俺にしてみれば牧野に代わる女はいない。

牧野の代わりにとあきらも考える奴じゃない。

「どうなるか見ものかもしれないぞ」

総二郎だけがやたら楽天的な表情を見せる。

これも総二郎らしい気の使い方だ。

「なにが見ものなの?」

きょとんと無邪気な表情を交互に向ける牧野。

「牧野はわかんなくていいよ」

呟いて総二郎と交わる視線。

今の状況を的確に分析してるのは俺達だけだ。

台風の中心の牧野だけが分かってないおかしな現状。

それを守りたいんだよな俺達。

執ように瞬きを繰り返す牧野を総二郎と二人してにっこりと見つめてた。

つづきは23で

拍手コメント返礼

hokuto☆raou様

類の心の描写は今までも書いたことありますがあきらはお初なんですよね。

原作に読み直して書いています。

読み返しありがとうございます。

私は一度書いたものをよみなおすと恥ずかしくなります。

時々書き直したり付け加えたりなんてこともやってしまってます。(^_^;)

なおピン様

ありがとうございます。

この態勢にも慣れてきました。

しずか様

今度はしっかりと保護お願いしま~す。(笑)

気にせずで何度でも聞いてくださいませ。

自分のペースでUPさせていただきます。

マリエ様

ありがとうございます。

無理せずやってます。

みーな様

トップ変えてみました。

春を通り越していきなり夏!ですけどね。(^_^;)

更新した時の喜び大きい。

うれしいですね。

それじゃしばらく休もうかな~ ← 冗談です。

b-moka

ありがとうございます。

ぼちぼちと更新させてもらいますね。

そろそろ次の展開へお話は進みます。

って・・・どうなるんだろう(^_^;)。

足のけがで同じ態勢が長時間は出来ないので更新に時間がかかってます。

しばらくはのろのろ状態となりますが、お待ちいただけたらと思います。

4月いっぱいはこの調子となります。

1日2日の遅れはご心配なく、温かく見守ってもらえたらと思っています。

誰か代わりにキーを打ってくれれば楽なんですけどね。

うちの子はまだまだ使いものにならないしな~。

それに子供前でつくし、司って・・・恥ずかしすぎる。