下弦の月が浮かぶ夜32
*「あの二人・・・気・・・合ってるよな」
二人掛けの小さなガラスのテーブル。
その上には料理を盛った皿がいくつも並ぶ。
フォーク片手に料理を口に運びながら相槌をうって時に上がる笑い声。
どうみても仲良しの二人組の出来上がり。
俺達が入り込む隙間なし。
「ここまで無視されるの初めてだよな」
不満じゃなく感心する様につぶやく総二郎。
牧野と優紀、滋に桜子。
そいつらとも違う二人の関係を作りだしている。
「初めは、まさか付きあうことになるとは思ってなかったんです」
牧野が言えば「私もまさか接点があるとは思わなかったの」
葵が答えて今でも不思議だと言いたげな表情を浮かべる。
「あの人たち注目浴びてることに対しては自覚ないから大変なんですよね」
「今さら何言ってんだ・・・」
俺の横で吐き捨てる様に司はつぶやいた。
「同類相憐れむってやつかもね」
司に睨まれても動じない類がクスッと笑みを作った。
「俺は司ほど我がままじゃないし、しっかりフォローはしてるつもりだ。一緒にするな」
女性の扱い方は司よりよっぽど心得ている。
「突然、自分たちが知らなかった違う世界へ投げいれられた感覚は一緒なんじゃないか」
「当然俺達と知りあわなかったら牧野も、彼女とも全く接点はないはずだからな」
何かを思い浮かべる仕草の総二郎に同調する類。
「俺と、牧野が接点ないわけないだろう」
いきなり怒り出す発火点は相変わらずズレを生じてる司。
ため息も出ない。
「司、上げ足とるな」
呆れながらも落ち着けとでも言う様に総二郎が顔をしかめた。
牧野と葵。
二人の会話を聞いてると噴き出しそうになる。
ほとんどが司の悪口。
「よく今まで付き合ってきたと思ってるんです」
「我がままで、自己中で、傲慢で言いたい放題。全然優しくないし・・・」
「それだけ聞いてると好きになる要素なさそうなんだけど」
理想の彼氏像には程遠い。
それのどこが良くて?と不思議そうな表情と好奇な関心が入れ混じる葵の表情。
司がそれ聞いて暴れないのが不思議なくらいだ。
普段なら牧野に詰め寄って馬鹿らしい言い合いが始まる発端になりかねない。
今まで散々見せつけられている俺達はまたかと苦笑するしかない場面。
「これでお開きになることが多いんだよな」つぶやく総二郎。
真っ先に退散するのは総二郎、いつもお前だ。
「それでも好きなんだろうがぁ」
しびれを切らした司がいい加減にしろと牧野の首筋に腕を回す。
「食べれないでしょう」
少しつり上がり気味になった瞳の中には拗ねる様な色合いをにじませる。
「牧野が言う司の性格は本音だと思うけど根っこのとこではこいつら好きって気持ちで繋がってるから、真面目に聞かないほうがいい」
葵に耳打ちしたら聞こえてると牧野に睨まれた。
「F4の中じゃ美作さんが一番優しいですよ」
「女性と一緒に住む事自体も珍しいよね」
仕返しだと言う様につぶやく牧野。
「あきらが自分のテリトリーに他人を入れる事態が珍しい」
「絶対に自分の場所には誰も入れないってところあるからな」
「俺達もあきらの部屋に通されたのって数えるほどだよな」
何やら雲行きが怪しくなってきた。
葵に貸してるのは客間だけだと言ったところで納得する雰囲気じゃないのはわかる。
「行きがかり上仕方がないってところだ」
渋った顔のままの言い訳じみた声。
「ふ~ん」
嫌味な顔が3つ並んだ。